弘法清水 Kobo Shimizu 上越市
| 上越市牧区(旧牧村)は、新潟県西南部、長野県飯山市との境にある豪雪地帯である。豊かな水と粘土質の土壌が、美味しいコシヒカリを育てている。 「弘法清水」は、戸数が10戸に満たない小さな集落小平地区の中ほどに、サワグルミの大木の根元から静かに湧き出している清水である。古くから地元住民の間で語り継がれ、親しまれ、愛飲されてきた。 弘法大師が諸国行脚の際、小平のある農家に立ち寄り、「旅の者ですが、喉が渇いて困っております。水を一杯恵んでください。」と丁寧に頼んだ。この村は水が悪く、夏になると飲用水は遠い隣村から運んでいるのだった。 しかし、この家の老婆は、「しばらくお待ちください」といっていやな顔もせず、約半里もある棚平まで行き、きれいな水を汲んできて僧にすすめた。 僧は大変喜び、村に清水のないのを気の毒に思い、「お礼に清水を出して進ぜよう」といって、持っていた錫杖で畑の隅を突くと、きれいな清水がこんこんと湧き出てきた。 老婆はビックリし、思わず旅僧に向かって手を合わせた。依頼この清水は何百年も涸れることなく湧き出ており、村人たちは「弘法清水」と呼んで恩恵に浴している。 大師は、それから神谷という村へ行き、同じ様に一軒の農家に入り、一杯の水を所望した。するとこの家の主人は、面倒くさがり、「うちの井戸は濁っていて飲めないから、他の家へ行ってくれ」と、すげなく断った。大師は黙って立ち去ったが、あとで家の者が井戸の水を汲み上げて見たら、それまで澄んでいた水がどろどろに濁り、飲むことができなくなっていた。それからこの村の井戸は全部濁り、新しく掘っても出るのは泥水だけで、掘った家に何か祟りがあったという。 現在は、牧区の簡易水道第三水源になっているが、昭和60年(1985)に「新潟の名水」に指定されている。脈々とわき出でてる清水は、水量1日300㎥で、うち3割が上水道に分水されているという。清水の恵みは、今でもこの地区の人々の喉を潤している。 (言い伝え)🤩杖の一突きで湧き出した伝説平安時代、真言宗の開祖である弘法大師(空海)が、仏法を広めるため全国を行脚していた際、この棚広の地に立ち寄った。当時、この界隈は水不足に苦しんでいたといいる。それを見た弘法大師が、持っていた錫杖を地面に力強く突き立てたところ、そこから清らかな水がこんこんと湧き出したと伝えられている。 🤩「夏は冷たく、冬は暖かい」不思議 この清水には、古くから次のような不思議な特徴があると言い伝えられている。夏は氷のように冷たく、喉を潤す旅人の疲れを癒やす。冬は湯気が出るほど暖かく、厳しい雪国の中でも凍ることがない。この性質から、地域の人々には「生きた水」として、また「大師の慈悲」として、1,000年以上の長きにわたり大切に守られてきた。 🤩枯れることのない守護 どんなに激しい日照りが続いても、この清水だけは一度も枯れたことがないという伝説がある。そのため、周辺の集落では農業用水や生活用水の「守り神」のような存在として崇められてきた。 (見どころ)🌌サワグルミの大木:清水の湧き出し口には、歴史を感じさせるサワグルミの巨木がそびえ立っている。その根元から絶え間なく水が湧き出る様子は、神秘的な雰囲気を漂わせている。弘法清水の言い伝えが1,000年以上前からある一方で、単一のサワグルミの幹としての寿命は一般的に120年〜150年程度とされている。ただし、サワグルミは古い幹が枯れても根元から新しい芽(萌芽)を出して更新する性質があるため、木としての「個体」は、伝説の時代から数百年以上にわたってその場所に居続けている可能性があるという。湧き出し口を覆うような現在の巨木は、その安定した水環境によって、サワグルミとしては最大級の大きさに成長した老木であると言える。 サワグルミは、日本の山地、特に名前の通り「沢沿い」などの湿り気がある場所を好む落葉高木で、最も美しく見えるのは新緑や紅葉の時期という。 🌌棚広集落の風景:弘法清水がある牧区棚広地区は、豊かな水と土壌に恵まれた棚田が広がる美しい中山間地域。日本の原風景のような、のどかな景色も大きな魅力の一つとなっている。 弘法清水自然公園
≪現地案内看板≫
脈々と流れ出す伝説の泉 牧区の中央を流れる飯田川は、長野県境の山々からわきだした水を源流に保倉川・関川と合流して日本海に注いでいる。 この飯田川流域に、戸数わずか十戸に満たない小平集落があり、集落の中ほどに語り伝えられている名水「弘法清水」がわきだしている。 昔、弘法大師が諸国行脚の折、当地で足を止めて一杯の水を所望された。しかしこの村では、夏になると飲料水がことごとく枯れるため、老婆は旅僧のためにわざわざ離れた棚広集落まで下り、清水をくんで進ぜた。大師はことのほか感激され、村に清水がないことを気の毒に思われ、庭先にあった大木の根を杖で一突きされた。すると不思議にもそこから清水がこんこんとわき出し、老婆の家はもとより村人すべてが、その不便を救われたという。 一日、約300立方メートルの清水が、弘法大師のたつ石の下から春夏秋冬かれることなく脈々とわき出ている。
空海(くうかい、宝亀5年6月15日(774年7月27日) - 承和2年3月21日(835年4月22日))は、「弘法大師(こうぼうだいし)」の諡号(醍醐天皇、921)でも知られる日本真言宗の開祖。俗名は佐伯真魚(さえき・の・まお、佐伯眞魚)。最澄(伝教大師)とともに、旧来のいわゆる奈良仏教から新しい平安仏教へと日本仏教が転換していく流れの劈頭に位置し、中国から真言密教をもたらした。また、書道家としても能筆で知られ、嵯峨天皇・橘逸勢と共に三筆のひとりに数えられる。
弘法清水自然公園 地図
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