巻機山 Mt. Makihatayama 南魚沼市
巻機山は上越国境の山々のひとつで、巻機山本峰、牛ヶ岳、前巻機(ニセ巻機)、割引 岳の四つの峰の山塊全体を総称する名前である。遠方より見る山容はどっしりとして優美。 巻機山は機織りの神として信仰され、南魚沼地方の名山として古くから知られ、日本百名山の一つに数えられている。 山名の由来は定かではないが、古文書に「山中ニ稀ニ美女ノ機ヲ織ルヲ見ル、因ニ巻機ト名ヅクト」「雲山ノ腰ヲ巻キ、マキ幡山ト申ス、但シ巻機権現ト言ウ神山トモ申伝エ・・・」などの山名の由来と思われる表記が見られる。この地方では、ハタを織ることをハタを巻くといった。伝説上でハタを巻く姫が住む山と言う意味から巻機山と名付けられたと考えられる。 巻機山は機織の神として信仰され、巻機姫にまつわる伝説が多く、藍甕の滝や吹上の滝、御機屋、機屋姫の池などはその一つである。ちなみに藍甕の滝とはそこで姫が藍をそめたところ、吹上の滝とは滝の飛沫を利用して機の糸をしなやかにしたところだと、言い伝えられている。 新潟、群馬の二県にまたがり、頂上付近には10メートルを超すと推定される積雪があり、その雪が巻機山の自然を作り上げている。豊富な高山植物と神秘的な池塘群があり、山麓は緑の原生林に覆われている。 山域の地質は花崗岩、石英閃緑岩からなり、上部は泥岩でできていることが調べられている。 登山道は、清水から井戸尾根をのぼるものや、割引岳を詰めるもの、割引沢の支流のヌクビ沢から登るもの、古峯山(720m)から尾根通しに大窪沢の頭、割引岳を経由するもの。神字入りを遡って黒岩峰の東北で尾根に取り付き、尾根どうしに割引岳を経るもの、あるいは五十沢から牛ヶ岳に登って巻機山に達するものなどいろいろある。 登山口からの標高差は1500mに及ぶため、麓の人情味あふれる清水の民宿に投宿し、早朝に出発することがお勧め。 美しい風景に恵まれている割引沢には、名のごとく空に向かって吹き上げている「吹上の滝」や、真青な水を深くたたえて流れ落ちる「藍甕の滝」など、数々の名瀑や奇 岩があり、春にはシャクナゲ・ニッコウキスゲ・ハクサンコザクラなどの珍しい花々が咲 き誇る。 複雑に入り組んだ沢筋はかなり遅い時期まで雪が残り、夏の暑さを忘れさ せる涼しい雪渓歩きが楽しめる。 ただし沢コースはルートを見失いやすいため 十分注意が必要。また、当山には特に珍しいアマツバメの営巣の洞窟があり、保護区に指定されている。 巻機山本峰の山頂はなだらかで広くあまり山頂らしくないが、谷川連峰や越後 三山などの展望がすばらしい。(案内図) 巻機山の機織姫の伝承
昔、大木六村に弥右衛門という狩りの好きな庄屋が住んでいた。ある日狩りに出て道に迷い、どんどん山奥へ入ってしまった。そのうち日が暮れ途方にくれていると、近くに人家の灯が見えた。近づいて中をのぞいて見ると、美しい女が一人で機を巻いて(織って)いた。戸を開けて一夜の宿を頼むと、女は「ここは人の来るところではない。家まで送ってあげるから背中へお乗りなさい。だが途中で絶対に目を開けてはいけません」といって、弥右衛門を背負って駆け出した。どうやら空中を飛んでいるらしいので、急に下界がみたくなり、そっと目を開けて見た。 しかし真っ暗で何も見えなかった。そのうち家の前に降ろされた。そのときはもう盲人になっていた。 女は機織りの神だといわれ、今でも大木六集落の木六神社(※地図 ※ストリートビュー)に、巻機山の天織姫命が祀られている。そして美人の女が機を巻いた(織った)山だというので、この山を巻機山と呼ぶようになったという。 巻機山登山の安全を祈願するため、訪れて見るのも良い。 🔶井戸尾根コースこのコースは空観路とも呼ばれ、田村空観師により昭和14年(1939)から開削が行われた道である。登山口の桜坂駐車場(一合目)から歩き始めてすぐに沢コースとの分岐に出る。道標に従い右へ進む。林の中へ登山道が続いている。緩やかに登ると尾根への取り付き地点、三合目に到着する。雑木林の緩登が終わる頃四合目となる。ここからは通称「井戸ノ壁」といわれる急坂で、道はツヅラ折れに高度を上げ、登山口から1時間30分ほどで五合目の『焼松』(1128m)に到着する。 焼松までの尾根道は、ブナ、ミズナラなどの二次林でウグイス、ヒガラ、コルリ、キビタキ、カケス、シジュウカラ、クロジ、ホトトギス、ウソ、ミソサザイなど野鳥の歌声が良く聞こえる。 小広場になっていて絶好の休憩ポイントである。米子沢の上で、正面にその源流から前巻機を仰ぎ、背後に大源太山や七ツ小屋山が一望できる。 ブナ林の緩やかな尾根筋をグングン上がっていく。緩傾斜の茂みの中は根曲竹で覆われている。六合目の展望台に出る。視界の先は天狗岩とヌクビ沢、天狗岩からから続く尾根の高みには三角錐の山頂を持つ割引岳が望まれる。ここから檜穴ノ段と呼ばれる急な尾根道を登り、ブナ林に変わって灌木が現れると傾斜も緩み、急にのんびりした草地の七合目『物見平』(1554m)に到着する。目の前に大きな前巻機(ニセ巻機)が立ちはだかる。 ここから八合目までは傾斜も急になりチシマザサの中の足元を見ながらの登りとなる。つらい登りで頑張りどころである。 八合目からは表土が流出したガレ地になっていて、前巻機(ニセ巻機)に登る斜面は階段状に登山道が整備されている。道を外れないように歩きたい。 道を登り切れば九合目の『前巻機(ニセ巻機)』(1861m)である。ニセ巻機というのは、積雪期にここを巻機山の頂上と間違える人が多いことから名前がついたという。 目の前の景色は今までとは一変し、開放的な景色とようやく見えた巻機山山頂部の山容に息をのむ。 前巻機(ニセ巻機)から山頂にかけては草原と風衝低木となり見晴らしが良くなる。ウグイス、ヒンズイ、メボソムシクイの声が聞こえてくる。またここから木道を鞍部へ下ると大きな池の『機姫の池』と『巻機山避難小屋』がある。小屋は平成16年(2004)に改築されたもので、小屋前の広場はテント場で、その先を下ると米子沢源頭の水場がある。 山頂へは小屋の前から機姫の池を通って稜線に出て、階段状の道を一登りで巻機山頂標のある『御機屋』に着く。 最高点はダケシバとコザサの稜線を牛ヶ岳方面へ10分ほど東進したところにある。割引岳へは最高点と反対、西へ進む。雪解け時にはハクサンコザクラをはじめとする雪田植物が咲き競う。 ☆ 裏巻機山の紅葉 ☆五十沢キャンプ場(⇒)の奥に進むと、巻機山に登る裏巻機コースに続く。五十沢川上流の6キロは、深くと切れ込んだV字型の裏巻機渓谷で、モミジ、ナナカマド、カエデ、ブナの木々が色付き紅葉が特にすばらしい。途中には迫力満点の魚止めの滝や不動の滝などがあり、巨岩と滝周辺の紅葉のコントラストが楽しめる。《紅葉の見ごろ》 10月中旬から11月上旬
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巻機山 清水登山口 巻機山避難小屋