ATS関連設備

信号機と同時に列車の運転の安全を守るのが、ATS(自動列車停止装置)です。
国鉄〜JRで使用しているATSにはATS-S型・B型(現在廃止)・P型・Ps型などがあり、高崎線内ではながらく国鉄時代の1963年(昭和38年)に整備されたATS-S型を使用していましたが、1989年(平成元年)の上野〜尾久を皮切りに安全性が高いATS-P型用の地上設備の整備が進められ(2001年(平成13年)に上野〜高崎の整備が完了)、車両側の整備もほぼ完了した2008年(平成20年)4月以降は高崎線内を走る列車は原則としてATS-P型を使用するようになっています。

高崎線で使用されているATSは、いずれのタイプも線路内に設置してある「地上子」と車両床下に設置してある「車上子」のあいだで情報のやり取りをして、前方に停止信号(赤信号)がある場合はブレーキを掛けるという仕組みとなっています。

※JR線のATSは、JR化後の改良や会社間の仕様の差などから、ATS-S型にはSN型・SF型などの、ATS-P型にもPF型などのバリエーションがありますが、ここでは便宜的にひとくくりに「ATS-S型」「ATS-P型」として扱う場合があります。


ATS-S型関連の設備

国鉄時代から使用されているATS-S型は、停止信号の約600〜300m手前に設置されている地上子を列車が通過すると運転台で警告ベルが鳴り、運転士が確認操作を行わないと5秒後に非常ブレーキがかかって列車を停車させるというものです。運転士が確認操作をおこなった場合は、警告音が「キンコンキンコン・・・」というチャイムに変わり、その状態では列車を所定の停車位置まで進めることができます。
ただし、運転士の確認操作後の運転にはバックアップがなく運転士の注意力だけに頼ることになるため、運転を誤ってオーバーランや列車衝突事故になったケースもあり、JR化後に停止信号の直下に設置した地上子を通過すると強制的にブレーキがかかる機能を追加したATS-SN型などに改良されています。
しかしそれでも、何らかの理由で停止信号に高速で進入してしまうと停止信号を大幅にオーバーランしてしまう恐れが残されており、高崎線をはじめ列車本数が多い路線では安全性が高いATS-P型などへの変更が進められています。

ATS-S地上子(1)
ATS-S型地上子
尾久駅で撮影(2007.12.)★

ATS-S型の地上子です。
線路のレールとレールの間の列車の進行方向に向かって左側に設置されます。
前方の信号機が停止信号の場合、この地上子の上を列車が通過すると運転台で警報ベルが鳴動します。

ATS-S地上子(2)
ATS-SN型地上子
尾久駅で撮影(2008. 4.)★

緑色の地上子はATS-S型のATS-SN型への改良に伴って場内・出発の各信号機のすぐ手前に増設された地上子で、「直下地上子」と呼ばれます。
対応する信号機が停止信号を現示している時にこの地上子の上を通過した列車は即座に非常ブレーキがかかります。

速照15標識
大宮駅で撮影(2004. 1.)★
速照15標識と速度照査用ATS地上子
大宮駅で撮影(2004. 1.)★

JR東海・西日本・四国・九州およびJR貨物では、ATS-S型の改良に際して急曲線や停止信号などに高速で進入するのを防ぐために速度照査(速度チェック)機能を付加しており、高崎線内でもJR貨物の機関車用の速度照査用地上子が設置されている箇所があります。
写真の標識は15km/hでの速度照査をおこなう地点であることを示しているもので、標識の横に設置されている2つの地上子の間を通過する所要時間を車両側で測定し、一定時間(0.5秒間)よりも通過時間が短い場合は速度超過と判定されて非常ブレーキがかかるようになっています。

速度照査用ループコイル
速度照査用ループコイル
北鴻巣〜鴻巣で撮影(2007.11.)★

分岐器(ポイント)の速度制限に対する速度照査用地上子及びループコイルです。
地上子の手前にループコイルを敷設し、このループコイルが列車の存在を検知すると一定時間(0.5秒間)だけ地上子が警報を発する状態となる仕組みになっていて、そのままの速度で進行すると速度超過する恐れがある列車に対して警報を出せるようになっています。
なお、この速度照査地上子とループコイルはATS-S型からATS-SN型への改良が実施される以前から設置されているものです。


ATS-P型関連の設備

ATS-P型は国鉄末期の1980年代から開発が進められたもので、地上子を通過するごとに地上子から車上のATS装置に対して次の停止信号までの距離情報がデジタル電文化されて送信され、それを元にあらかじめ設定されている列車が安全に停車できる距離・速度のパターン情報と地上子及び車輪の回転数から得た現在の距離・速度の情報を車上装置でリアルタイムに比較して、列車の速度が設定されているパターンを上回った場合には即座に非常ブレーキ(電車列車及び一部の気動車列車では常用最大ブレーキ)を動作させることで列車を停止信号の手前で確実に停車させるというものです。
また、ATS-P型では車両側から地上側への情報送信も可能となっており、車両側から地上側へ車種の情報を送信することで、ブレーキ性能に優れた電車列車の場合は前方の信号機の現示を上位のものへ変更させてラッシュ時の列車の運転速度を向上させるといったことも可能となっていることから、設計上は停止信号をオーバーランする可能性がほぼ皆無であることと併せて、従来よりも列車の前後の間隔を短縮することが可能(=列車の本数を増やすことが可能)となっています。

ATS-P地上子(1)
ATS-P型地上子
導入初期に設置されたものはこのタイプらしい
尾久駅で撮影(2007.12.)★
ATS-P地上子(2)
ATS-P型地上子
最近設置されているのはこのタイプが主流
上野駅で撮影(2007.12.)★

一般的なATS-P型の地上子です。
線路のレールとレールの間の中央部に設置されます。
形状にはいくつかのバリエーションがありますが、上の写真のものはいずれも地上側→車上側・車上側→地上側の双方向での情報送受信が可能となっています。

なお、信号機用の地上子は、信号の現示が停止(赤信号)から注意(黄信号)や進行(緑信号)などに変化した際の車上装置が保持している距離情報のクリア、車上装置が保持している距離情報の誤差の補正、地上子故障時のバックアップなどの目的から、信号機1基に対して3〜5個程度設置されるのが普通となっています。

ATS-P地上子(3)
ATS-P型地上子
(単方向通信型)
尾久駅で撮影(2007.12.)★
ATS-P地上子(4)
速度制限箇所の情報送信用の地上子は
2個1組で設置される
尾久駅で撮影(2008. 4.)★

これもATS-P型の地上子ですが、このタイプの地上子は地上側→車両側の片方向の情報送信のみが可能なタイプです。
通常は急曲線・下り勾配・分岐器(ポイント)などに対する速度制限箇所の情報の送信に使用されますが(原則として速度制限箇所の約600m手前に設置されます)、前方の信号機の現示を上位のものに変更するなどの機能を使用していない区間では信号機用の地上子としても使用される場合があり、高崎線でも籠原以北では信号機用の地上子が原則としてこのタイプとなっています。

なお、速度制限箇所の情報送信用の地上子は信号機用の地上子とは連動せず単体での設置・動作となっており、1個だけの設置では故障時にバックアップがなくなることから、必ず2個1組で設置されています。

ATS-P確認標識
籠原駅で撮影(1999. 6.)★

JR東日本の車両の場合、ATS-P型を使用している区間に入ると自動的にATS-P型に切り替わりますが、他社の車両(例えば「能登」で乗り入れてくるJR西日本の489系電車など)では手動で切り替えなければならない場合もあるため、折り返し運転の可能性があり、かつそのまま進むと本線を走る列車に接触してしまう恐れがある場所には、全て「ATS P 確認」と書かれた標識が立てられています。