高崎線内では、ときどき車両故障でもないのに電車が機関車に牽引されていく姿を見ることができます。
これらは基本的に、JR貨物が実施する「甲種鉄道車両輸送」と、JR東日本が実施する新車の所属区所への搬入や総合車両センターへの入出場のためなどの回送列車(配給列車)の2つに大きく分類されます。
![]() E231系電車のグリーン車の 甲種鉄道車両輸送 行田〜熊谷で撮影(2005. 6.) |
仮設の連結器や空気配管が取り付けられている 熊谷駅で撮影(2005. 6.) |
![]() 車内には仮設のブレーキ制御装置が鎮座 熊谷駅で撮影(2005. 6.) |
「甲種鉄道車両輸送」とは特大貨物輸送の一種で、貨物列車で貨車に積載することができない鉄道車両を輸送することを指します(ちなみに、最近はほとんど実績がありませんが、路面電車など貨車に積載可能な小型の鉄道車両を輸送する場合は「乙種鉄道車両輸送」となります)。
一般的には車両メーカーで落成した新車を使用する鉄道会社の車両基地まで搬入する際に利用されますが、大手私鉄から中小私鉄などに譲渡・売却される中古車両の輸送などでも利用されることがあります。
輸送の際には牽引に使用する機関車などを改造することなく輸送できることが条件となるため、連結器を一時的に仮設のものに交換したり、最近の電気指令式空気ブレーキを装備した車両では仮設のブレーキ制御装置や空気配管を設置したりして、運転取り扱い上は通常の貨車などと同様となる状態にして輸送されます。また、私鉄の車両などJRの在来線とは車輪の幅が異なる車両を輸送する場合は、車両メーカーが仮の台車を用意して、それを取り付けた状態で輸送されます。
高崎線内で甲種鉄道車両輸送される車両を目にする機会はそう多くはありませんが、最近ではE231系電車のグリーン車(JRの車両製作工場がある新津(新潟県)まで)・秋田新幹線「こまち」用のE3系電車(車両基地がある秋田まで)・東武鉄道の50000系電車(熊谷貨物ターミナル〜秩父鉄道経由で車両基地がある南栗橋及び森林公園まで)などが輸送されています。
![]() 高崎駅に到着した新車搬入回送列車 牽引されているのは山手線向けのE231系電車 高崎駅で撮影(2002. 6.) |
![]() 仮設の配管等は取り付けられておらず うしろから見れば通常の回送列車と変わらない 高崎駅で撮影(2002. 6.) |
| 上記2枚の写真提供:EF634さん(T3_Project) | |
JR東日本では、首都圏に投入している通勤通学輸送用電車の新車のうち年間250両程度を新潟県新潟市にあるJR東日本の自社所有の車両製作工場(新津車両製作所)で製作しており、高崎線内ではここで製作された車両を首都圏へ搬入するための回送列車を月に2〜3回程度のペースで見ることができます。
この回送列車は、名目上はJRの業務用列車である「配給列車」とされており、通常は車両製作工場がある新津から品川(東京都)まで機関車牽引で運転されます。
運転時は一見すると甲種鉄道車両輸送と同じに見えますが、実際には輸送の手順も甲種鉄道車両輸送とは異なり、輸送時の準備作業を軽減するため、連結器を電車と連結可能なものに交換した専用のEF64形電気機関車が、自車のブレーキ機器を使用するためにパンタグラフを上げたままの電車を牽引するという、他では見られない形態での運転となっています。
![]() 高崎線内を回送されるE751系電車 行田〜熊谷で撮影(2003. 5.) |
![]() 行田〜熊谷で撮影(2003. 5.) |
| 上記2枚の写真提供:sui-setzさん | |
また、2002年(平成14年)12月の東北新幹線の八戸延伸と同時に、東北線の盛岡〜八戸がJR東日本の路線ではなくなってしまったため、青森地区の車両のうち郡山総合車両センター工場(福島県)で大規模な定期検査を受けている車両の所属区所〜総合車両センター間の入出場回送列車の運転経路が羽越線〜上越線〜東北線経由での運転に変更されており、E751系電車(特急「つがる」用の車両)のように自力走行での回送ができない車両もあることなどから、機関車牽引による回送となっています。
なお、こちらも連結器を電車と連結可能なものに交換した専用のEF81形電気機関車が使用されますが、こちらの場合はブレーキ制御装置や尾灯などの電源はパンタグラフからの集電をせずに自車のバッテリーを利用しているようです。
上記以外でも、高崎線内での運転実績がないため運転できる運転士がいない車両や、車両の検査期限が切れたりして自力走行が不可能となってしまった車両(鉄道車両にも自動車の車検と同様な法定検査があります)などを回送する場合も、機関車牽引となる場合があります。