諸般の事情で思うように捗らない仕事の合間に。
「昨日、K's電気に行ってみたんですけど、80GBで2万5千円ぐらいでした」
「やたら高いな」
「そうなんですよ。
しかも1種類しかなくて。
やっぱり土曜にでも秋葉原まで行ってみます」
「じゃあ、ついでに俺のも買っといて」
「はい、いいですよ。
どうします? 一気に100GBとか?」
「んー、80GBで2万円未満で」
「じゃあその辺で」
「そうそう、K's電気のKって、創業者が川口さんだからなんだよね」
「あ、そうなんですか?」
「ううん、嘘」
「は?」
「だから嘘だって。
いや、たぶん嘘ってのが正確か」
「……」
「俺も知らないもん、Kの由来なんて」
「またそんな。
いい加減にしないと、そのうち渡邊さんの言うこと全部流しますよ?」
「そんなことして困るのは自分だよ?」
「うわ、嫌な感じですね」
「でもKはきっと創業者のイニシャルだよ。
木村とか加藤とか」
「そんな安易な訳ないでしょう」
「そんなもんだって。
自分だって一瞬信じたくせに」
「ちょっと待ってください。
調べますから」
「うん」
「あ、あった。
ありました。
ケーズデンキ」
「どう?」
「えーと…企業情報ですよね。
で…」
「沿革かな」
「そうですね。
現名誉会長加藤馨が、茨城県水戸市元台町に加藤電気商会を…あっ!」
「ほらほら、どうよ?」
「……」
「創業が昭和22年か。
けっこう古いんだね。
その頃、俺はまだ精子にもなってないな」
「いきなり精子ですか」
「うん。
あ、いや、卵子なのか?」
「はあ…」
Kが加藤でちょっと勝った気分の後に突然湧いた疑問なのだが、仮に輪廻転生するとして、魂は精子と卵子のどっちに宿るものなんだろうか。 精子に宿って激烈に競争しているのか、卵子に宿って排卵されて精子を待っているのか。 いずれにしても生まれなかった場合は、あまりにも短い転生、物凄い勢いの輪廻だよな。 あ、受精や着床のタイミングで宿るとも考えられるか。 着工と同時に入居を募集するマンションみたいな。