8時ぐらいに寝て、深夜に起き出して、サッカーを見た。 わざわざ見ただけのことはあった。 中田2得点。 試合は結局 4 - 3 で負けちゃったけど、中田にはこの調子でがんばって欲しいものだ。 しかし、パス回しの速さとか、個々のポジション取りとか、ユベントスの連覇というのは伊達じゃないのだな。
もう顔は忘れてしまったが、名前は確かレイナちゃん。 俺が塾の講師を始めた年に受け持った、中3の可愛い女の子だった。 その日、理科の授業は 「食物連鎖」 だったと思う。 水中の微生物の話をしていたときだった。
「先生、ミジンコってどんなの? 絵で描いて」
と、いつものように突然に、状況を無視して話しかけてきた。
「ミジンコ? テキストに載ってないか?」
「載ってないよ。
描いてっ!」
「しょーがねぇなぁ。
だいたいこんな感じだよ」
大雑把な絵をに黒板に描いた。
「ふーん…。
先生、ミジンコって堅いの?」
「まぁ一応外骨格だから、水たまりの中じゃ堅い方だろうね」
「どのくらい堅い?」
「いや、堅いって言っても所詮微生物だから、俺たちにかかったら『プチッ』で終わりだよ」
「ふーん、そうなんだぁ」
何か考えてる風だったが、とりあえず大人しくなったので、授業を進めた。 2分後ぐらいだったか、
「先生っ!」
「ん?」
「
こっぱみじんこっ!
」
「はぁ?」
教室中が大笑いしてる中、 「今考えたの」 と得意そうな顔のレイナちゃんだった。 コッパミジンのミジンコなんだろうが、意味なんかどうでもいい。 このいかにも弱そうな響きに、俺の魂は揺さぶられたのだよ。 「こっぱみじんこ」 の 「じ」 を 「ち」 に点々にすると、もっと弱そうということで意見は一致し、それ以来 「こっぱみぢんこ」 は、俺の好きな言葉なのだ。
レイナちゃんは、今どこで何をしているのだろうか? 笑顔だといいな。