がらがらの電車のシルバーシートに座っていた。 俺の前には、そろそろギャル風が苦しいお年頃のお姉さん。 メールを打ったり、留守電( ?)を聞いたり、携帯で暇潰し中。
彼女が何度目かに携帯を耳に当てたときのこと。 すぐ傍の手すりにもたれていた浮浪者風の男が、彼女の手をはたいた。 驚いて見上げる彼女に、浮浪者風は 「これ!」 と、おもいやりぞーんの文字を指さすと、さっきまでとは反対の手すりにもたれて、窓の外に顔を向けた。
注意されたお姉さんは携帯をバッグにしまったのだが、バッグにしまいながら物凄い目で浮浪者風を睨んでいた。 視線で人が殺せるなら、あの浮浪者風はきっと死んでいる。 そんな目。
あの目を見ると、浮浪者風の注意の仕方が実は正解だったんじゃないかと思えてくる。
普通なら、 「ここでは携帯は使わない方がいいですよ」 と言えば十分だと思うだろう。 しかし、なぜ注意されたかは棚に上げて、注意されたこと自体に腹を立てる人に対しては、そうした紳士的な態度は反って良くないのではないか。 「電車の中で携帯を注意したら、逆に痴漢で訴えられた」 なんてのは、紳士的な態度を与し易いと取られるからではないか。 いきなり手をはたくのはやり過ぎのようだが、やり過ぎの行動をいきなり取ってくる相手だからこそ、さらなる行動を恐れて反撃されないのではないか。
まあ、はたくのはやっぱり拙いのだが。 それでふと思ったのが、こんな状況。
おもいやりぞーんに、心臓が悪くてペースメーカーをつけている婆さんが座っている。 その隣に、携帯を弄っている女がいる。 婆さんは隣の女の携帯を気にしているが、自分では注意できない。 その場にいた浮浪者風の男が、その状況に気付いて、携帯を弄っている女に注意をする。 最初は手をはたこうかと思ったのだが、直接的な暴力は拙いと思い直して、怒鳴ることにする。 で、怒鳴ったら、その怒鳴り声に驚いた婆さんがショックで死んでしまった。
この場合、浮浪者風の男は善意の殺人犯?
ところで、 「強気で注意できる相手にしか注意しない」 と言うとあんまり良いようには聞こえないんだけど、やってることは、 「できることからコツコツと」 なんだよな。 だからどうってことも無いんだけど。