<SX−100のリペア>2004年

米国のオークション「eBay」で、SX−100を入手したのでご紹介します


リペア後です


<SX−100の概要>
SX−100は1957年に発売された、本格的な通信形受信機です
1955年にS−85、SX−96、SX−99が発売されましたが、SX−96は1956年に製造中止となりSX−100が後継機になったと考えられます
デザインが良く似た機種ですが、製造時期や大まかな特徴を整理しました

機 種 製造期間 大まかな特徴
S−85 1955〜1959年  高1中2シングルスーパー、SP内臓
SX−99 1955〜1959年  S−85にクリスタルFIL、Sメータ、ANTトリマが追加されている 
SX−96 1955〜1956年  高1中2ダブルスーパー(1stIF:1650Kc、2ndIF:50.5Kc)
 SX−100  1957〜1961年  SX−96にTノッチ、100Kcマーカ、ANTトリマが追加されている

SX−99等と違って、SX−96やSX−100のダイアルメカはギヤダイアルの本格的なものになっています
2ndIFに「50.5Kc」を採用したのは選択度向上のためですが、調整完了後の選択度は素晴らしいものです
又、真空管はメタル管、GT管、mT管が混在しておりバラエティに富んでいます

  

  


<動作チェック>
船便で送ってもらいましたが、厳重な2重梱包で無事到着しました
外観は割とキレイで欠品はありません(但し、100Kcマーカ・ユニットはありません)
オークションには「Works Great」との書込みがありましたが、果たしてどんなものでしょうか?
一通り簡単なチェクをしてから、ANTを繋ぎ電源を入れてみました
中波放送を聞いてみると、とりあえず受信はできますがSメータが振れません
7Mのアマチュアバンドを聞くと、受信はできますがSSBの復調ができません
BFOは発振しているのになぜでしょう?
トラッキングは大幅なズレがありますし、これは気合を入れてリペアしなければとワクワクしてきました?


<気合を入れたリペア?>
1) 真空管のチェック
バラエティに富んだ真空管ですが、IFTに挟まれた狭い場所からの抜去は一苦労です
昔持っていた「真空管引抜工具」を処分してしまったのが悔やまれます!
全部抜いてチェックしましたが、1stIFAMPと2ndMIXの6BA6はハリクラブランドで40数年前のものと思われます
真空管試験機でのエミッション・チェックは、ほとんどがリプレースに近い値でした(電圧増幅管のエミッション・チェックは気休めみたいなものですが?)
一般にmT管の寿命はGT管ほど長くはありませんので全部交換することとし、先ず1stIFAMPの6BA6を交換するとSメータが振れ出しました(本機のSメータは6BA6のプレート電流で振らしています)
RFの6CB6やDETの6BJ7は古いテレビ球で手持がありませんが、ANDIX(秋葉原)に在庫があったので注文しました

2) 分解清掃
徹底的にキレイにしないと次の作業に進めないのが癖になっていますので、恒例の分解清掃です
本機のネジは皆非常に固くしめ付けられており分解に苦労しましたが、CRCを吹き付けて一晩放置すると何とか緩みました

  

3) キャパシターの状態
キャパシターは「TINY CHIEF」のモールド型とセラミックが混在しており良い状態で、とりあえずリキャップの必要はなさそうです
キャパシターの構成から、本機は1958年頃の製造と推定されます

  

4)調整
@ 2ndIF(50.5Kc)調整
まずは2ndIFの調整から始めます
2ndMIXの6BA6のグリッドに50.5Kcを入れて調整しますが、OSCはオーディオ用の「AG−203D」を使いました
初期状態では大分下にピークがあり、4個の同調回路の周波数がバラバラでした
キチンと50.5Kcに合わせ、次はBFOを50.0Kcに調整します
BFOは上の方にずれていましたので、これではSSBの復調ができないはずです

A 1stIF(1650Kc)調整
1stIFはいつもの様に「DMC−230S」で調整しますが、余り狂っていません
ここでANTを繋いで7Mのアマチュアバンドを聞いてみましたが、SSBのQSOがキレイに聞こえてきました(とりあえず一安心です!)

B トラッキング調整
トラッキングは全バンドで狂っていますが、殆どのダストコアはパラフィンロックされたままでいじった形跡はありません
RF回路のトリマはセラミック型が多用されており、高級感のあるものです
上のバンドから調整していきますが、4バンドともピッタリに収まりました
バンドスプレッドの周波数表示は非常に正確で、快適に受信できます

C ノッチ回路の調整
ノッチ回路は2ndIFの50.0Kcから54.0Kcの範囲で可変できるようになっています
IF周波数はキチンと調整されていますので、52.0Kcのところで校正しました
余り使う機会はありませんが、不要波の除去能力は優れたものです

  


<本機の使用感>
本機の外観はSX−99等と良く似ていますが、中身は段違いな本格的通信形受信機です
フライホイールを備えたギヤダイアルの操作感はすばらしく、SSBの受信もスムーズにできます
0.5Kc〜5Kcまで5段階の選択度を選べますが、シャープな切れで現在の7Mのアマチュアバンドを聞いていても快適です
QSOに使うわけではありませんが、7Mのスケールで短波放送を聞いている時間が多くなりました


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