<S−38Bのリペア>2001年

Yahooオークションで受信機を眺めていたとき、分度器ダイヤルが付いた懐かしい形のものを見つけました
憧れていたデリカCS−7や1968年頃に使っていたトリオ9R−42Jの兄貴分「ハリクラフターズS−38B」5球スーパーです
運良く手に入れることができました




<初期状態>
S−38Bが我が家に届いたとき50年程前のものにしては驚くほどキレイな状態で、前オーナーが何点かの部品交換と調整後発送してくれたので全バンド受信できました
しかしバンドスプレッドの下のほうで突然受信できなくなります
さっそくキャビネットから引っ張り出して点検をはじめましたが、注意深く見るとバンドスプレッドバリコンの羽が最大容量になる少し手前で接触しています
プラ定規をあてながら少しずつ修正して復旧です
実装してあるツマミはハリクラの純正品ですが、アルミリングの無いものが付いていました 古くなるとリングが腐食で汚くなるのがキライでしたのでGOODでした
文献から察するところ、本機は1952年頃の製造と考えられます 自分の生まれた頃の受信機を維持できるとは幸せなことです


<いくつかの問題点>
いくら程度が良いとはいっても50年前のものですのでいくつかの問題点があります
1)バンドスプレッドの修正中にダイヤル糸がきれてしまい縫い糸で仮復旧しておきましたが、メインも含めてカチカチになっていますので交換が必要です
2)オリジナルのワックスペーパーコンがほとんどですが、みな表面が溶けてブツブツになっていますので相当絶縁が落ちているようです
3)ハム音のレベルが高いので平滑回路の電解コンが容量抜けしているようです
4)完全なガリオームです
5)この時点では真空管試験機を持っていませんでしたが、真空管は相当古そうです?
6)全バンド受信できますが感度が良いとはいえません


<リペア開始>
1)部品調達
現在の職場は秋葉原に近いので部品調達には天国の場所です
ダイヤルコードを探してラジオデパートあたりを回ってみましたがありませんでした トランスレス用の真空管も同様でしたが、在庫を確認してから注文に行ったANDIX・AUDIO(秋葉原)で偶然ダイヤルコードも見つけました
コンデンサー類は海神無線(デパート)で揃え、ガリのVR・S付ロングシャフト2MΩは山王電子(デパート)のオヤジが倉庫から捜してくれました


真空管用のパーツも捜せばまだまだあるので一安心です


2)パーツ交換・再調整
コンデンサ類はマイカコンを除いて全て一斉交換しました
ダイヤルコードも張替てスムーズに動きます(縫い糸ではつらいですね!)
ガリオームや真空管も新品にして再調整の開始です
AF部のハム音もスッキリ消えています
IF周波数は455K付近になっており問題ありませんでしたが一応再調整しました
全バンドのトラッキングをとり直しましたがさほどずれていません、ダイヤルスケールもほぼぴったりです さすがハリクラと感心しました
ANT(10mロングワイヤー)を繋いでの受信も、感度については手持ちのIC−R75ゼネカバ受信機に比べても遜色ありません
短波放送の受信には十分実用になるレベルです
選択度や周波数安定度は比べてもしかたありませんが当時の受信機はこんなものでしょう
真空管受信機の音を楽しみながら満足して使っています

  
                               リキャップ後です



<スライドSWの交換>
スライドSWが経年劣化のせいか、動作が硬くなっています
ANDIXに色もサイズも丁度良いものがあったので、3個とも交換しました
まるで純正パーツのようです


ANDIXのオーナーがアメリカで見つけてきたそうです




<S−40Bのリペア>2002年

本機もYahooオークションで手に入れました
戦前から製造されてきたハリクラフターズのスタイルを受け継いでいる受信機で、回路構成は高1中2です
本機も1952年頃の製造と推定され、S−38Bと同じリング無しのツマミが付いています
国産受信機ですとスター(富士製作所)S−51Aの兄貴分になります




<初期状態>
本機も50年程前のものにしては非常にキレイな状態でした
感度は悪いですが一応全バンド受信でき、ダイヤル糸はしっかりしていますしAF及びRF・VRのガリもありません
真空管も比較的キレイなものが付いています(長年お倉に入っていたのでしょうか?)


<問題点のチェック>
1)電源投入してから落ち着くまでバりバリとノイズが出ます ワックスペーパーコンの表面は溶けてブツブツですし、モールドペーパーコンもクラックがありますので相当絶縁が落ちているようです
2)全般に感度が悪く、トラッキング不良です、


リキャップ前です


<リペア開始>
1)仮調整
まずIF周波数のチェックをしましたが、520K付近にピークがあります
455Kにするため調整を始めましたが、2番IFTの1次側ダストコアが回りません 分解して調べたところ、ネジ溝から外れて引っかかっていましたので元に戻して調整可能になりました
次にトラッキング調整です
コイルのダストコアはワックスで固められたままで、調整した形跡もありません
どうやら前オーナーはトリマの調整で最大感度にしていただけのようです(50年もの間?)
調整の結果4バンドのうち最高周波数バンドで誤差がでますが、他バンドはほぼピッタリになりました



2)分解清掃
キャビネット、フロントパネルを分解して清掃しましたが、マイペットの希釈液で結構キレイになります
シャーシもキレイにして、各部の注油を行い再組み立てです



3)パーツ交換・再調整
ブロック電解コンは容量チェックをしたところ問題無いのでそのままにして、他はマイカコンをのぞいて一斉交換です
この時点では真空管試験器を持っていたのですが、レス管に比べ手に入りやすいので全球一斉交換しました(外した球のエミッションチェク結果は殆どGOODでした)
電源投入時のバリバリもなくなり再調整もスムーズに完了しました
ANTを繋いでの感度はさすが高1中2のものです S−38Bに比べ高い周波数の感度が良いのと、選択度は格段に良いので、短波放送の受信が更に楽しくなりました
余談ですが、私はフェージングを伴って入ってくる海外放送が実に心地よく聞こえるのですが、家族にはこんなフニャフニャ音のどこが良いんだとけなされています!

  

リキャップ後です                     味わいのあるスケール照明です




<デリカ デジタル・ディップメーターDMC−230S>

受信機の調整に使用している測定器は、基本的にデジタル・ディップメーターDMC−230Sとテスターだけです(真空管試験機は気休めです?)
オーディオ用にオシロ、OSC、LM等もありますが、あまり出番はありません
DMC−230Sは400K〜200MHzの共振周波数測定の他
1) テストオシレータ
2)周波数カウンタ
として十分実用になります
感度測定をするならSSGが必要になりますが、大袈裟ですね
本機はお買い得な測定器としてお奨めです






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