<2台目S−38Cのリペア>2004年

Yahooオクで2台目のS−38Cを入手しました
オークションの紹介でも程度が良さそうでしたが、送られてきた現品は想像以上に良い状態です
今回のS−38Cは、憧れだったデリカCS−7のコピー(LIKE CS−7)を作ろうと考えて落札しました

  
リペア/改造の終わったS−38Cです   CS−6とCS−7の広告です
                     (CS−7は1956年発売)


<初期状態>
1)動作チェック
電源回路を簡単にチェックしてから、電源を投入してみました
とりあえず4バンド共動作しており、ハム音もなく各ツマミの動作も良好です
2)外部チェック
ケースには大きなキズもなく非常に良い状態です
ダイアルのプラスチック板はキレイで傷もなく、ツマミも艶があります

  
開梱した状態です


3)内部チェック
シャーシは錆もなく、バリコン周りの状態も良好です
キャパシターは主にオイルコンで構成されていますが、ブツブツではなく良い状態です
整流回路のブロック電解コンは交換したらしく、比較的新しいものが付いています

  


4)真空管チェック
MIX:12AS7、IF:12SG7、DET/AUD:12SQ7の3本はRCA、PA:50L6GTはハリクラブランド、REC:35Z5GTはGEの真空管が挿してありました
エミッションチェックの結果OKなので、そのまま使用します

5)分解清掃
コピー作業の前に恒例の分解清掃を一通り実施しましたが、ピカピカになりました


<CS−7コピーの構想>
私がCS−7の本物を見たのは、近年「仙台坂の三田無線(デリカ)」を訪れたときの一度だけです
当時のCS−7は高嶺の花で、中古も滅多に出回りませんでした
基本回路は5球スーパーなのに高性能を誇り、前面左に付いている「丸型Sメータ」が大きな特徴です
今回は塗装も含めてやり直そうとか、ハリクラブランドも残したいとか大いに悩みましたが(楽しい悩みです!)
1)「丸型Sメータ」を左中央メインダイアルツマミの位置に取付ける
2)右中央、スプレッドダイアルツマミの位置に「メインダイアルツマミ」を移す
3)右下、VRツマミの位置に「スプレッドダイアルツマミ」を移す
4)バンドSWツマミの左側に穴を開け「VRツマミ」を移す
5)前面パネルの表示変更は最小限にとどめる
6)基本回路の変更はしない
上記の構想で、自分なりのCS−7コピーに改造することにしました



<部品調達>
1)丸型Sメータ
今回の重要なポイントは丸型Sメータです
CS−7に使われているような丸型メータを見かけることは少なくなりましたが、秋葉原を徘徊中に東映無線(デパート)のショーケースで丸型メータを見つけました
話を聞くと、特注により各種オーダーOKでSメータスケールもあるとのことです
早速、52Φ100μAの仕様で注文しました(感度が高い分にはシャント抵抗で調整できます)

  
クリーム色のスケール板です


2)スプレッド駆動軸
当初はコ字型金物で組もうと考えていましたが、取付けスペースが狭いので6Φの軸受を加工して作りました
軸受やカップリング等の金物は山王電子(デパート)に揃っています

ツマミは、部品取り用SX−99から金属飾りを外して使います(基本的に同じものです)




<改造作業>
1)VRの移動
バンドSWの左側に移動させますが、右のVRと同じ間隔で左にも穴が開いています
S−38に付いていたBFOピッチの名残と思われますが、ANTコイル(L2)に近すぎるので更に20mm左に穴を開けて取付けます
2MΩS付
ロングシャフトVRは、手持ちがあるので新品に交換します

  
S−38の名残の穴が開いています


2)メイン駆動軸の撤去
メイン駆動軸のコ字型金物は、Sメータ取付けの邪魔になるのでリベットを削って取り外します





3)スプレッド駆動軸の取付け

スプレッドバリコンのプーリとの間に穴を開け、スプレッド駆動軸を旧VRの穴に取付けます

  


4)ダイアルコード張替
メインバリコンのプーリと旧スプレッド駆動軸との間にダイアルコード張りますが、これが新しいメインチューニングの系統です
続いて、スプレッドバリコンのプーリと新規に取付けたスプレッド駆動軸との間にダイアルコードを張りますが、これが新しいバンドスプレッドの系統です





5)ケースの加工
52Φ丸型Sメータの穴とVRツマミの穴を慎重に開けます
旧バンドスプレッドと旧VRツマミの表示を丁寧に剥します
メインチューニング、バンドスプレッド、VRツマミの表示はテプラで張付けます





6)キャパシターのリキャップ
現在のところ特に問題ありませんが、いずれ必要になるのでマイカコンを除いて今回行います


リキャップ後です


7)Sメータ回路の追加
Sメータの駆動回路は手持ちS−38Cに付けている「Sメータユニット」と同じ回路です
今回は100μAのメータですが、定数は同じでOKです


ラグ板に組みました


8)SPの交換
SPは経年劣化で音質が悪くなりますので、手持ちの新品と交換しました
凛々と良い音で鳴ってくれます


<再調整>
1)IFの調整
455KcのIF調整から始めますが、僅かにずれているだけです
2)トラッキング調整
いつものことですが、何度か繰返すと全バンドピッタリに収まります
3)波形観測
今回は、各部の波形観測をのんびりやりました
学生時代の電子実習を思い出します!


  
振幅変調の実習です


<CS−7への思い>
「デリカCS−7」は中学の頃ひたすら憧れた受信機ですが、とても手の届く存在ではありませんでした
その後も、入手の機会がないまま現在に至っています
今回CS−7の原型であるハリクラを改造という暴挙?を行いましたが、かろうじて手が届いたという満足感を得ることができました

スターSR−100の原型であるハリクラS−119と重ねて置いて、これらの受信機を眺めているとラジオ作りに没頭していた少年時代の光景が浮かんできます
振り返ればこの体験が進学・就職等、人生の道筋を選ぶ決め手になったのです




<YahooオクのCS−7>2005年
Yahooオクに程度の良いCS−7が出てきました
過去にも見かけたことはありますが、パネルに改造があったり欠品があったりの問題品でした
興味津々でウオッチしていましたが、なんと200K円超の高値で落札したのはオークションでお付合いのある某OMでした
せめて写真だけでもとダウンロードしました

  
オークションのCS−7です                特徴のある丸型IFTです


CS−7の基本回路は、BFO付き5球スーパーです


<デリカの設計思想>2005年
「CS−7は5球スーパーなのになぜ高性能なの?」といったご質問がありました
良い機会なので簡単に纏めてみました
まず5球スーパーですが、「中間周波増幅1段」のスーパーヘテロダイン受信機の多くが真空管を5本使っていたのでそう呼ばれていました
受信機の性能を示す指標に「3S」というのがありますが、1、Sensitivity(感度) 2、Selectivity(選択度) 3、Stability(安定度)の頭文字をとったもので、これらが良ければ高性能ということになります
シングルスーパーの場合、感度や選択度を上げるため高周波増幅や中間周波増幅の段数を増やしますが、いたずらに増やしても雑音が増える等で性能が低下する場合があります
又、発熱も増え安定度に影響します(昔の真空管受信機のお話です)
通信型受信機に「高1中2」が多いのは、この辺のバランスからと思います
私の理解しているデリカの設計思想は、感度を上げるため球数(増幅段数)を増やすことをせず、ANTコイルやIFTのQをできるだけ大きくし、「損失の少ない回路構成」を用いることです
CS−7のANTコイルやIFTが大きいのはそのためで、球数が少ないので雑音が少なく安定度も良くなります


<DX−CS−7のご紹介>2007年
DX−CS−7はCS−7に改良を加えた、更なる高性能受信機です
IF増幅に高gm管の6BZ6を使用し、正帰還をかける等の工夫がされています
又、ANTトリマが追加されました
オークションでお付き合いのある某OMのDX−CS−7です




<本格BFOの製作>2011年
S−38CのBFOは、IF増幅管「12SG7」のプレートとグリッドをキャパシティで結合させて自己発信させる簡易なものです
かろうじてCW受信はできますが、使い勝手が悪いので本格BFOを製作することにしました
1)回路の検討
BFOコイルを使った自励発信回路が一般的ですが、BFOコイルの入手は現在では困難です
又、IFTを改造してBFOコイルにすることも可能ですがIFTも貴重品ですので、手持ちの455Kc X’talを活用することにしました
回路はシンプルな無調整回路です




2)真空管の選定
3極管の手持ちに、グリッド接地増幅用3極管「6MH1」が多数あります
6MH1は真空管式多重無線設備のIF増幅に多用され1970年代に現役を終えましたが、予備品を譲り受け長年保管してきました
今回はこれを使用します

  
NEC製です                         電電マークがあります


3)S−38Cへの実装
小さなサブシャーシに組込み、上面の空スペースに実装します
又、ヒータ用の6.3Vトランスは、内部の空きスペースに実装します
S−38CのDCアースはシャーシと分離しているので、サブシャーシ内の配線も同様にします

  




4)動作試験
S−38Cの+Bで問題なく発信しました
12SQ7の検波回路への注入レベルは、3回程巻きつけると丁度良いようです
以前に比べ格段に使い勝手が向上しましたが、特に弱い信号の受信には効果があります


<スケール照明の改良>
現在のダイアル・スケール照明は、仄かに灯るオマケみたいなものです
ヒータ用のトランスを追加したので、6.3Vを活用することにしました
ついでにダイアル・スケール板をS−38Bのクリーム色に交換したので、更にCS−7に近づいたと思います
又、Sメータにもスケール照明を組み込んだので、夜間の視認が容易になりました

  


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