<S−40BのAC120V動作実験>2002年

HCIでSX−99のレストア記を拝見したとき、「日本のAC100Vでは満足に動作しないので昇圧トランスで120Vにしています」とのことでした
S−40BもSX−99と同じ定格電圧の105〜125Vですし、回路も類似していますので試してみることにしました


<実験環境>
スライダックから120Vを印加するようにセットアップしました




<実験開始>
いきなり120Vでは不安ですので、5Vづつ段階的に上げていきます
1) 105V印加
ほとんど変化は見られません
2) 110V印加
スケール照明がわずかに明るくなったような感じです
3) 115V印加
スケール照明が明るくなり、音声出力があきらかに大きくなってきました
AF部のパワーが上がるとともに、各部のゲインも上がっているのでしょう
4) 120V印加
更に良い状態になってきましたので気分よく海外放送を聞いていたら、30分が経過したころ突然バリバリとノイズが出始めました
慌てて電源を切りましたが、再投入するとバリバリの連続です
どこかやられたようです?


<切り分け開始>
電圧上昇でやられるのはコンデンサーと推測して始めましたが?
1) AF部のチェック
PAが一番高電圧ですが、VRを絞るとノイズも消えますのでAF部ではないでしょう
念のためVRのカップリングコンを切り離して、正弦波を入れてみましたが異常なしです
2) RF増幅から順番にチェック
RF増幅から2ndIFAMP部まで順番に真空管を抜いてきましたがそれでも消えません
どこかのパスコンがリークしていると考えていたのですが外れです
検波管の6H6を抜くとバリバリのレベルが変わりますので、どうやら検波回路近くのようです
とりあえず真空管を元に戻してチェック再開です
3) 波形観測
久しぶりにオシロを持ち出してチェックを始めました
検波出力に盛大にパルス波がでており、憎らしいことにノイズ音とぴったり同期しています
いったいどこからくるの?と追い詰めていくと、3番IFT2次側でピークが100V近くあります
IFTの端子を見つめていると、透明なプラスチックの奥のほうが時々僅かに光って見えるような気がします
なんとIFTの内部で放電しているのでしょうか?
2ndIFAMPの6SK7を抜いても状態が変わりませんので間違いないでしょう



4)IFTの分解
リペアの段階で2番IFTを分解したのですが、今回も同様に分解するとともに念入りに清掃しました
(巻線が断線しないよう注意が必要です)
再び組み直して電源を投入すると、すっきり直っています
本来なら再度120Vを印加して検証すべきですが怖くてやめています!
念のため、1番IFTも分解清掃してしまいました

  


<ノイズ発生の考察>
2番IFTを分解したときも気になっていたのですが、IFTケース内部から細かい綿埃が出てきました
AC100Vを120Vに上げた場合B電圧は50V位UPしますので、これを引き金に放電がおきると埃が炭化して絶縁抵抗が下がり、1次側のプレート電圧が2次側にリークします(湿度も関係するでしょうが?)
このリークがうまい具合に持続して、ノイズの原因になっていたと考えられます
放電の具合によっては、巻線が断線する原因にもなりますので注意が必要ですね
(50年の歴史のある埃ですが迷惑です?)


T3でリークしていたようです


<予備IFTの必要性>
古い真空管ラジオのIFTが断線しているケースを多々見受けますが、IFTも劣化対象と考えたほうが良いのでしょう
いざというときのため予備IFTをストックしておりますが、今回は使用せずにすみました
古い部品は大事ですね!

  
1960年代の製品です                 DMC−230Sで同調確認ができます


<AC120V常時使用に変更>2003年
ハリクラ受信機が増えてきたので、AC120V常時使用に変更しましたが、特に問題は発生していません
やはり120V仕様の装置は本来の電圧で使うべきですね!


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