「……で、このざまか?」

嵐が通り抜けた後の司令室を見てヴィレッタが言った。

「いつもよりは少し過激でしたが」

「許容範囲だ」

我関せずといった様子で言う咲世子とジェレミア。

「はぁ……」

視線を司令室の奥に転じる。

救急箱を抱えたロロに応急処置をされながら傷だらけのルルーシュが背中を向けて拗ねているシャーリーに必死で言い訳をしているというなんとも情けない構図だ。言い訳もそもそもの論点がずれているのでうまくいっていない様子である。

「……何もかも終わったらあれが日常の風景になるのだろうな」

これが世界を震撼させているゼロの実態と知れたら世界はどうなることやら。

 

 

 

「コホン。ではそろそろ出発する」

片づけが済んだ司令室でルルーシュが言った。

「咲世子、ロロ、後を頼む」

「お任せ下さい」

「任せて兄さん。シャ……義姉さんに近づく虫は全部処分するから」

「……やめろ」

 

「ルル、危ないことしないで、とは言えないけど、気をつけて」

「ああ」

「カレンやそのC.C.さんとかにも危ないことさせないで。女の子なんだから。ルルってそういうこと全く気にしてないでしょ?」

「……努力するよ」

「じゃあ、はい」

「?」

小指を差し出すシャーリー。

しばらく考え込んでいたルルーシュの顔にやがて笑みが浮かぶ。

「えへへ、前にナナちゃんに教えてもらったの」

「そうか」

懐かしい光景を思い出しながら小指を差し出すルルーシュ。

「怪我なんかしないで無事に帰ってくるって約束して」

「ああ」

小指を絡めあう二人。

「ゆびきりげーんまん、嘘ついたら針千本のーます、指切った!」

「……」

離れた指を名残惜しそうに見る二人。

「……行ってらっしゃいルル」

「……行ってきます」

 

 

 

 

 

そんな夢を見た。

 

 

え、でも、こんなの私知らない。知らない事を夢で見れるの?

それともまたルルが忘れさせて……ううん、きっとルルはもうそんなことしない。

じゃあ、夢見てる私の方が夢で、え、え?

 

結局よくわかんないけど……

でも、もし夢なんだったら……うん、こんな感じがいいな。

 

 

 

 

 

『シャーリー! シャーリー!!』

『君! 離れて! すぐに搬送を!』

『シャーリーに触るな!!』

『……Yes, my load

『シャーリー! シャーリー!!』

 

『……は、ナイトオブ……枢木……』

『……』

『……シュ! そんなシャーリー!?』

『シャーリー! シャーリー!!』

『ルルーシュ! 動かしちゃ駄目だ! すぐに搬送……』

『シャーリー! シャーリー!!』

『ルルーシュ! !? ……その目!?』

『シャーリー! シャーリー!!』

『……制御……いない……して……まさか!?』

『シャーリー! 死ぬな、死なないでくれシャーリー!!』

『ルルーシュ!!!!』

『!? ……スザク?』

『もう誰も死なせない! だから、お願いだ! 今だけでいい、僕を信じてくれ!』

『……スザク』

 

 

……もう、しょうがないなぁルルもスザク君も。

 

 

 

 

 

「……だってしょうがないじゃないルルの事が好きなんだから」

「え?」

うなだれていたロロが顔を上げた。

「私なんかルルに向けて銃を撃っちゃったことあるよ?」

「!?」

「でもルルは許してくれた。それどころか私がそれ以上苦しまないようにしてくれた。……経緯はどうあれ私ってそれに甘えちゃってて、だからバチがあたったの。あ、バチっていうのはね」

「……知ってます」

「だからロロの事も許してあげる。だって、ロロがどれくらいルルの事が好きかっていう証拠なのこの傷は。……あ、だったら一生消えない方がいいのかな?」

「だ、だめだよそんなの!」

「うーん。じゃ、こうしよ?」

「?」

「今から私のするお願いをロロが一生守ってくれるなら許してあげる。どうする?」

「……守ります。兄さんの大事な人を傷つけた罪をそれで償えるなら」

「うん。じゃあね……」

 

 

 

 

 

「スザクさん、何かいいことありました?」

「え?」

車椅子を押していた手を止めるスザク。

「なんだか今日はスザクさんの空気がいつもより柔らかな感じがして」

「……まぁ、あったようななかったような……」

「あったんですね?」

「いいことかどうかはわかりませんが……いや、やっぱりいいことなのかな?」

「お聞きしてもいいですか?」

「……実は、シャーリーに説教されました」

「まぁ」

「でもおかげで……一生、許せないと思っていた人を許せそうです」

「その人はスザクさんの大事な人ですか?」

「大事な人……でした」

「……じゃあやっぱりいいことでした」

「え?」

「だって、その人は……スザクさんの大事な人に戻れたんですもの」

「……あぁ、そうか。……そうなんだ。……戻って、戻しても……いいんだよね、ユフィ」

「スザクさん?」

「……う、うぅ」

「……泣いてらっしゃるんですか?」

「……い、いいえ、自分は泣いてなど……」

「スザクさんとお兄様は本当にそっくりですね」

「……そ、そうかな?」

「はい。意地っ張りなところが」

 

 

 

 

 

『……―リー』

……が呼ぶ声が聞こえた。

うーん、私的には居眠りしている所を私が起こすっていう状況の方がしっくりくるんだけど。

『……ひどいな。居眠りなんかしないよ』

嘘ばっかり。もう、本当私がついていないと駄目なんだから。

『そうだね。今度ばかりは思い知ったよ。だから……』

しょうがないなぁ、そこまで言うんなら一生そばにいてあげる。

『……本当に?』

あれ? 私、今、何かとんでもない事を口に……。

『そんなことない。あぁ、でも、それなら、俺が……』

そ、そうそう! いくらなんでもこういう時ぐらいしっかりしてよね!

『あぁわかった』

ぱちくり。

そこで突然目が醒めたのは神様の悪戯だったのかはたまた……。

とにかく私が目を開くと目の前にはルルの顔があって、

なんだか泣きそうな顔をしていたので思わず手を伸ばした瞬間、

 

「シャーリー、君を二度と離さない」

 

 

夢の時間はもうとっくに終わっていた。

 

 

 

 

 

 


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