(…やはりプロスさんに話を付けるのが一番早いんだろうな)

未来、あるいは別の世界から来た話はおいておいても自分が行けば興味を持ってくれるはずだ。
その点においてあの人は抜かりがない。
さすがにこの格好ではコックと言ってもなかなか信じてもらえないだろうが…アキトは苦笑した。

空はすでに暗くなっている。道は頭に入っているがさすがに徒歩で行くのはやめた方がよかったかもしれない。

(それにしても坂の多い街だな)

ナデシコは地下のドックにあるというのに入るためには、坂の上の建物に行かなければならないとは妙な話だ。

そんなことを考えていたアキトの隣を車が猛スピードで走り抜けていった。

「!!」

額の奥で何かがひらめいた瞬間、アキトは両腕を上下に広げて構えた。

刹那、胸を衝撃が襲う。

「ぐっ!」

半歩後ずさって衝撃を殺す。

「…ふぅ」

両手と胸で受け止めたトランクを見る。

かわすことはもちろん叩き落とすこともできたのだが、後が面倒なのであえて受け止めたのだ。

(…しかし、死ぬぞ。マジで)

前回はよく命があったものだと思う。

「すいませーん!!大丈夫ですか!?」

懐かしい、そして例えようもなく愛おしい声が聞こえた。

彼女の名はミスマル・ユリカ。彼を愛し、また彼が愛した人。

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

機動戦艦ナデシコ 五つの花びらと共に

 

 

第1話 『俺達らしく行こうっ!』

 

 
 
 
 
 
 

 
 

「ごめんなさい!本当にすいません!あの…」

ぺこぺこと何度も頭を下げながら謝るユリカ。およそ権威とか貫禄とかいったものとは無縁の存在である。

「………あ、ああ、すまない。大丈夫だ」

その姿にしばし魅入っていたアキトは我に返ると返事を返した。バイザーで視線を隠しているからユリカにはどうしたのかわからなかったはずだ。

「こいつは後部座席にでも積んだ方がいいな」

そう言ってトランクを差し出す。

「…………」

だが、ユリカは受け取らずにアキトを見ている。

「ど、どうかしたのか?」

じぃーっとユリカに見つめられややたじろぐアキト。

(…まさか気付いたのか?いや、前回だってなにか引っかかる程度だったし今回はバイザーもつけてる。気付くはずはない!…たぶん…)

ちょっと弱気になったのはユリカの勘が異常に鋭い事を知っているためだ。ふだんは天然バカといっても過言ではないユリカなのだが…

「すごぉい!!」

「え?」

「飛んでくるトランクを受け止めたんですか!?」

「あ、ああ」

「なにか格闘技とかやってます!?」

「まぁ少し…」

「すごいすごい!」

「………」

(…おかしい、なにかずれてる)

なんとなく頭痛もしてきたアキト。

「ユリカー!」

ジュンの声がする。

「連れが呼んでいるぞ」

これ幸いと話題を変えるアキト。

「あ、でもお詫びを…」

「別に怪我もしていないし、謝罪も聞いた。問題は無い」

「でも、それじゃ…あ、そうだ!」

「?」

「どこかへ行く途中だったんですよね!?」

「ん?ああ」

「それでしたらお時間を取らせちゃいましたし私たちの車でお送りします!」

「へ?」

「さぁ行きましょう!」

ぐいっとアキトの手をつかむと引っ張っていくユリカ。

「ちょ、ちょっと!!」

 

 
 

「…世話になる」

シートベルトをするとアキトは言った。結局、断りきれずに助手席に座っている。

「…いえ」

あからさまに疑っている目つきのジュン。

(…気持ちはわかるが、俺のせいじゃないぞジュン!)

「しゅっぱーつ進行!」

相変わらずユリカは一人元気だった。

 

 
 
 

「ところで行き先は私達と一緒でよろしいんですか?」

「へ?」

いきなり後ろから声がして驚くアキト。

「あ、ああ。この先に軍の施設…まぁネルガル重工の施設かな?…それがあるんだがそこまで頼めるか?」

「ああそれなら私たちと一緒ですね!」

「…奇遇だな」

「奇遇ですね!」

「ユリカ、とばすからちゃんと座ってて!」

なにやら息の合った二人がおもしろくないジュンが割り込んだ。

とはいえ最初から勝負になっていない様だが。

「…ネルガルの施設に行くってことはネルガルの社員なんですか?」

それでも、気になったのかジュンが聞いてくる。

「いや、知り合いに会いに行くだけだ。その知り合いはネルガルの社員だがな」

「そうですか」

(…警戒することもないか)

ジュンはそう考えて警戒を緩めた。

 

 
 
 

<ゲート脇> 




「それじゃ俺はここで知り合いを呼び出すから」

「それでは」

「それじゃまたーっ」

二人を乗せた車がゲートをくぐっていく。

「…ん?」

ユリカの言葉のなにかがひっかかった。

(…なんだ?)

「ま、いいか。どうもユリカにペースを崩されたな…」

アキトは気を取り直すと自分を胡散臭そうに見ている警備員にプロスペクターを呼んで貰うべく交渉に入った。
 

 

 
 
 


<ナデシコ ブリッジ>




「ちょっとぉ!本当にこんな連中に戦艦一隻任せる気!?」

「彼らはそれぞれ専門分野で一流の人材でして、はい」

「よさんかムネタケ」

ブリッジの上部デッキは騒がしい。

「あの人達でしょ?火星にチューリップ落としたのって」

「なんかやな感じ〜」

「………」

その下は…強いて言うなら姦しい。

「特に艦長は士官候補生時代、戦術シミュレーションにおいて不敗の実力を誇る逸材で…」

クルーを選んだ張本人である所の眼鏡の人物は表情一つ変えない。

「その艦長はどこよ!?」

「それが到着が遅れてまして…」

そのとき圧搾空気の抜ける音と共にブリッジのドアが開いた。

「あ、ここだここだ!みなさーん!私が艦長のミスマルユリカでぇーす!ぶいっ!!」

『ぶいー?』

呆気にとられる一同をよそに少女は呟く。

「またバカ?」

 

 
 
 
 
 

 

<応接ロビー>





「はて?失礼ですがあなたとお会いした記憶はありませんが…?」

開口一番プロスペクターはそう言った。

「だろうな。悪いがあんたに会うために少々嘘をつかさせてもらった」

「おやおやそれはそれは」

そう言うプロスペクターだが一向に動じた気配はない。

「…警備員を呼ばないのか?」

「…呼んでも無駄ではないですか?」

そう言って笑みを浮かべるプロスペクターにアキトも口の端をゆがめる。確かにプロスペクターが本気になれば一般の警備員など足手まといでしかないだろう。

「…あんたは俺に会ったことはないだろうが、俺はあんたに会ったことがある」

「はて?おかしな話ですな」

「まあ雑談程度に覚えておいてくれ。それより用件に入ろう、あんたも忙しいだろうしな」

「おうかがいしましょう」

「単刀直入に言う。俺を雇ってくれ、ナデシコのクルーとして」

「…」

それでもプロスペクターの顔には一瞬緊張が走っただけだった。

ここまでポーカーフェースを保てるのはさすがだと思う。

「ほぅ…ナデシコをご存じとはあなたただ者ではありませんね」

「そうでもない。…ああ、言っておくが軍の回し者でもないし、他の企業の手の者ではない。ついでに言うなら木星蜥蜴でもないぞ」

「?」

「…最後のは聞かなかったことにしてくれ。俺も当分は忘れることにする」

「いや、あなたに興味がわいてきましたよ」

プロスペクターの口元に笑みが浮かぶ。

(まったくもって敵には回したくない人だ)

「一応、ネルガルには借りがあるから手を貸すのにやぶさかではない、とだけ覚えておいてくれればいい」

「そうですか。では、一つお聞きしてもいいですかな?」

アキトはうなずく。

「…何のためにナデシコに?」

若干の間が空いてアキトが口を開いた。

「………守りたい人達が乗っている………いや、忘れてくれ」

一瞬だけ目の前の人物が身につけた鎧が消えたのをプロスペクターは見逃さなかった。

「わかりました、あなたを雇いましょう」

「恩に着る」

「いえいえ…時に専門は?陸戦部隊か諜報関係の経験でも?ちょうど警備兵が…」

「…コックだ」

小声で呟くアキト。

「…はい?」

聞き返すプロスペクター。

「…コックだ」

「はいーっ!?」

先程までまったく動じなかったプロスペクターが驚きの声を上げた。ポーカーフェイスが崩れている所からしても本当に驚いているらしい。

人差し指で頬をかきながら答えるアキト。

「いや、本当にコックなんすよ。こんななりしてますけど…」

「は、はぁ。まぁコックも人手が足りませんし、雇うと言った以上は雇わせて頂きますが、コック…」

惚けた振りをしながらもプロスペクターは急に親しみやすくなった黒衣の男を注意深く観察していた。

(…見たところこちらが本来の気質のようですねぇ)

「ちゃんと制服に着替えますよ」

「そりゃそうです。…あぁそうそう大事なことを忘れていました。お名前は?」

そう問いかけた途端にアキトの雰囲気が元に戻る。

アキトは静かに言った。

「…テンカワ・アキトだ」

「…ほう」

プロスペクターはわずかに眉を寄せた。

 

 

 
 
 



<ナデシコ 格納デッキ>

 
 
 
 

艦内を見学中のアキト。

無論、見学など必要ないのだが、飛び入りのアキトの処遇を正式なものにして部屋を用意するまでは行くところがないというのが実状だ。アキトとしてもそれは望むところだ。かくしてアキトは黒づくめのまま格納庫に来ていた。

「こらー!誰だ勝手にエステ動かしてんのは!?」

聞き慣れた怒鳴り声が聞こえた。

アキトのもう一人の相棒と言ってもいい人物だ。

しばし物思いに耽るアキトの耳に盛大な衝撃音が聞こえた。

(…おいおい、俺のエステなんだから大事にしてくれ…ってこの時点じゃ俺のじゃないか。それにしても今まで考えたこともなかったけどピンク色の機体なんかによく乗ってたよな…あれ、違ったっけ?なんとかレッドだったかな?)

思策にふけるアキト。

「ヤマダ・ジロウ?」

「違ぁう!そりゃ間違いだ!ヤマダジロウは世を忍ぶ仮の名前。本当の名前、魂の名前はダイゴウジ・ガイだ!」

(…どうでもいいけどガイ、痛くないのか?)

言ってる側からガイの顔色が見事なくらい青くなって行く。

(そうだろう、そうだろう。俺でもさすがに痛いぞ、それは)

やれやれ、と見守るアキトの目の前を担架で運ばれていくガイ。

「おおーい!そこのあんた!」

ガイに声を掛けられ、左右を見回すアキト。どうやら誰もいない。

「…俺のことか?」

「そうだ!悪いがあのコックピットに俺の宝物を置いてきちまったんだ!取ってきてくれ!すまーん!!」

両手を合わせながらガイは運び出されていった。

「やれやれ仕方ない」

ふっと口の端をゆがめるアキト。

そのまま無造作に柵を乗り越えると下のデッキに飛び降りる。

『おぉーっ』

着地すると何事も無かったかのように歩き出すアキトに驚く整備員達。

「なんだあの黒づくめは?」

驚いたというより仕事場に侵入者が現れたことの方を気にするウリバタケ。

「さぁ、でも部外者ならこんなとこまで入ってこれないんじゃないすか?」

「そりゃそうだな…ま、いいか。次!空戦フレームあけるぞ!」

「「「「おーっす!!」」」」

 

 
シートからゲキガンガーを取り眺めるアキト。

「ゲキガンガーか…俺はどちらかというと悪役かな」

とりあえず壊すと後が面倒なのでゲキガンガーを懐に仕舞い込む。

アキトはシートにもたれると時を待った。そんなに時間はかからないはずだ。

 

 

 
 
 


<ナデシコ ブリッジ>





床が、壁が、ということは当然天井も揺れた。

正確にはナデシコがいるドックが大きく振動した様だ。

「ルリちゃん何がおきたの!?」

間髪おかずルリに尋ねるユリカ。

(まだ自己紹介してませんね?ということは資料に目を通してくれてるようです。どうやらちゃんとした艦長さんの様ですね)

そんな感想を抱きつつ情報収集を終えたルリは報告する。

「本艦直上の連合軍基地が木星蜥蜴の攻撃を受けている模様です」

報告の間もドックが何度も揺れた。

「ここに勘付いたか?」

そう呟きつつゴートが艦内に警報を発令する。途端に艦内が騒然となる。

「戦況は?」

年の功か慣れか落ち着いているフクベが尋ねる。

ルリは地上の戦況を大型のウィンドウに展開する。

「連合軍が迎撃中ですが劣勢ですね。他の基地からの増援は間に合いそうにありませんし、全滅するのも時間の問題と思われます」

「この艦で反撃よ!」

ルリの報告に叫ぶムネタケ。

「どうやってぇ?」

のんびりとした口調でつっこむミナト。

「砲塔を上に向けて一斉射撃よ!」

「それって上で戦っている軍人さんを巻き込みません?」

顔をしかめるメグミ。

「どうせもう死んでるわよ!」

「「非人道的ぃ」」

「うっ」

ミナトとメグミの冷たい視線に後ずさるムネタケをよそにフクベが言った。

「艦長の意見は?」

すっと顔を上げるユリカ。

「本艦はこのまま海中ゲートを通って出撃。敵の背後から海上に浮上、一斉射にて敵を殲滅します!」

きっぱりと言い切る。

「そこで俺の出番さ!ロボットで出撃して敵を引きつける!」

ギブスと松葉杖のガイが叫ぶがすかさずセイヤが突っ込む。

「あんた足折ってんだろ」

「がーん」

「エステバリス、出撃中です」

『え?』

ルリの報告を聞き返す一同。

「現在ドックのリフトを利用して地上に向かっています」

「メグちゃん!」

「え、あ、はいっ通信回線開きます!」

(…メグちゃん…まぁいいか、女の人だし…)

戸惑いながらも手早く仕事を行うメグミ。すぐにブリッジの正面ウィンドウに黒づくめでバイザーをつけた男性が映し出された。

さすがに一瞬戸惑う一同。

「あ、さっきの…」

「君は誰だ!?氏名と所属を言いたまえ!」

ジュンが口を開いた途端、フクベが厳しい口調で詰問する。

ウィンドウの人物は一瞬考えた後口を開いた。

「…テンカワ・アキト。コックだ」

アキトはかすかに笑みを浮かべた。

 

 
 
 
 
 
 

「コック!?コックがなんでロボットに乗ってんのよ!?」

「いや、彼は私が先ほどコックとして採用いたしました」

「だからコックがなんで俺のエステを動かしてんだよ!?」

「いえいえ彼は火星出身ということで…」

「だからなんでコック!?」

アキトはその騒動をのんびり眺めていた。

(…やっぱりナデシコだよなぁ)

しみじみと思うアキト。

「アキト!!」

(…来たか)

ユリカがアキトの名前を連呼している。

(…どこで息継ぎしてるんだろう?)

「アキトだぁ!!」

(…よくよく考えたらこいつが人間離れしてるのって、指揮能力や戦術戦略のセンスだけじゃないよな)

喜びの表現を全身で行っているユリカはとりあえず放っておく。

「…見た所パイロットはいないようだ。幸か不幸かIFSをつけているし、戦闘経験も少しならある。囮ぐらいならつとまるだろう。指示を頼む」

落ち着いた口調にゴートも指示を出す。

「わかった。簡潔に言う、時間は約10分。敵の注意を引きながらとにかく逃げ回れ」

「りょうか…」

「アキト!!」

「うわっ!」

突如、エステ内にユリカのドアップウィンドウが開いた。

「おどかすなユリカ!」

思わずそう叫ぶアキト。

「アキトなんでしょ!?どうして私のこと無視するの!? …私のこと…嫌いになったの?」

ユリカは目元に涙を浮かべている。それを見たアキトの胸が締め付けられるように痛む。

(…馬鹿)

アキトはバイザーを外すと優しい笑みを浮かべた。

「泣くなユリカ」

「…アキト?」

「俺がユリカを嫌いになったりするわけないだろ?でも今は再会を喜んでいる場合じゃない。俺もお前もやるべきことをするときなんだ、みんなで生き残るためにな」

「………うん。わかったアキト」

ユリカは目をごしごしとこすると笑顔を見せた。

「気をつけてねアキト!」

「ああ」

アキトは再びバイザーをつけると、一人冷静なルリに視線を向ける。

「…すまない。状況を教えてくれ」

「はい。あと5秒で地上です。既に地上には敵が集結しています」

「了解」

答えるアキトをよそに、ユリカの指示が飛び、各員がそれぞれの仕事に追われていた。

 

 
 

「ノーマルエステの陸戦フレームか…」

アキトが扱うには少々、というか、かなり物足りない機体だ。もっともジョロやバッタ程度には十分だとは思うのだが。

(なんといっても五感が戻って最初の実戦だしな…)

「ま、今回はユリカに花を持たせよう」

(必要以上に力を出すのはよくない。ナデシコの戦術の基本方針が変わってしまいかねないからな。それにしても…)

「…泣くなよな」

呟いて笑みを浮かべるアキト。

周囲をぐるりとジョロやバッタに取り囲まれているのに余裕綽々である。
 

バッタの目が光る。

砲撃が始まった瞬間、エステバリスが宙を舞った。足もとで生じた大爆発の爆風を受けて宙返りすると、包囲の外に着地する。

「…遅いな」

敵もそうだが、エステバリスも遅く感じる。

一斉に追撃に移るジョロ、バッタ。

レーザーやミサイルが飛び交う中を軽やかに舞うエステバリス。

「…反応が遅すぎる」

そう言いながらもアキト操るエステは、陸戦フレームでありながら、わずかな姿勢制御スラスターのみで空戦フレーム並の機動を行う。

 

 

「ちょっとやられるわよ!」

ムネタケにはわかっていない。

「いや、敵の攻撃はすべて紙一重でかわしている。見事な機動だ、本職でもなかなかこうはいかない」

ゴートにはわかっている。

「思いっきり追いつめられてるじゃない!」

やはりムネタケにはわかっていない。

「ええ、見事な囮ぶりです。離れすぎず、近づきすぎず」

プロスペクターは当然わかっている。

「ドック注水完了しました」

ルリの報告にうなずくユリカ。

「では発進して下さい」

「りょーかい」

何の気負いもなくナデシコを発進させるミナト。

大きな気泡を吐き出しつつ機動戦艦ナデシコは出航した。

 

 
 
 
 

残り時間の表示は01:05。

「そろそろか…」

敵を引き連れて道路を爆走していたアキト操るエステバリスが急停止する。右足を軸に180度ターンするとそのまま敵のまっただ中に突っ込んだ。

直後、盛大に爆発が巻き起こる。

 

「ほう、ディストーションフィールドによる高速度攻撃ですね」

呟くプロスペクター。

アキトのエステバリスは、爆煙の中から飛び出すとそのまま綺麗な弧を描き海中に没し…ないで着地した。

足元の海が割れていく。

ゆっくりと海水を押しのけてナデシコが浮上する。

「…早かったなユリカ」

「あなたのために急いできたの!」

視界一杯に広がったユリカのウィンドウを見てアキトは唇に笑みを浮かべた。

まっすぐ突っ込んでくるジョロやバッタは既に思考の外だ。

「敵、ほぼ射界内に入っています」

「グラビティブラスト、いつでもいいわよ」

「目標、敵まとめてぜーんぶ、てぇーっ!!」

 

 

宙を切り裂く重力波が一気にジョロ、バッタを飲み込み、盛大な花火が空を染め上げた。

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 

「状況報告!」

「ジョロ、バッタとも残存ゼロ。地上軍の被害は甚大なれど戦死者はいません」

「こんな、こんなの偶然よ!」

「認めざるを得まい!よくやった艦長!!」

「まさに逸材!」

ユリカは艦長帽を取ると穏やかな口調で言った。

「艦内警報解除。通常シフトに移行してください」

「了解」
 
 

ゴートが指示を出している横でユリカはふっと息をつくと顔を上げた。

「アキト…ありがとう」

正面ウィンドウに再びアキトの顔が映る。

「………ユリカ?」

前回と違う反応にとまどうアキト。

「お疲れさま」

そう言ってユリカが微笑む。アキトは同じく微笑むことが出来た。

「ああ、お前もな」

 

 

つづく


 
 
 
 

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