<京都郊外山中>

 

 

 

「はんっ! ネルフに喧嘩を売ったらどうなるか教えてやるわ!」

マガジンの弾丸を確認しながらミサトが言った。

「そうだな。とりあえず当分馬鹿なことをしないようにしつけてやらないとな」

ライフルを背負う加持。シンジは拳銃の弾を交換している。全員、防弾ジャケットをつけ臨戦態勢である。

京都郊外山中の谷間。川岸に偽装して待機させたヘリにアスカを乗せ換えるつもりらしい。周囲にも小部隊がいくつか確認されているが

(しかし妙だな
加持はどうにも引っ掛かっていた。

何はともあれ市街地を離れてやっと本領発揮を許された戦自特殊部隊が強襲する予定だ。シンジ達はそれにあわせて本隊を襲撃しアスカを取り返す。後は行き当たりばったり、もとい臨機応変に対応する。シンジと加持にとってはさほど難しい仕事ではない。

「低空飛行でレーダーをかわして海まで直行。日本海か太平洋で潜水艦にでも乗り換えって所かしら」

ミサトがざっと敵の計画を推察する。

「それはそれはご苦労なことだな。ところでシンジくん、その弾丸は?」

「あ、これですか?」

弾丸を一個手渡すシンジ。

「おっと」

見かけによらず重い。薬夾には赤い木がペイントされている。

「ひょひょっとして赤い木で赤木って意味?」

らしいな」

 
 
 

<ネルフ本部 発令所>



「くしゅん!」

「風邪ですか?」

日向がキーを叩く手はそのままに聞いた。

「誰か噂でもしてるのかしら? まあいいわ。次、ヨーロッパ方面の回線いくわよ!」

いくつものサブモニター上で次々と敵コンピューターが制圧されていく様子が表示されている。
 
 
 
 
 

 

「リツコさん特製の対装甲目標弾だそうです。軽装甲車までなら一発だって言ってました。ヘリを撃とうかと思って」

「拳銃弾で装甲車? 調子に乗ってほらふいてんじゃない?」

「いや、赤木ならやりかねん。しかし反動もかなりあるんじゃないか?」

「ええ、常人が撃ったら肩が砕けるからやめておけって言ってました」

「相変わらず何考えてんのかわかんないわね

「まぁいい、分かれるぞ。正面は俺が行く。シンジくんはヘリのある右側から、葛城は反対の左側面から援護を頼む。シンジくんがヘリを吹っ飛ばしたら突入だ」

「OK」

「わかりました」

ミサトは騒々しくシンジは無音で茂みの中に消えていく。

対照的な二人に思わず笑みをこぼす加持。

まったく変わった姉弟だな」

呟くと加持は歩き出した。行く手には何も存在しないかのように飄々と。
 
 
 
 
 

 

go to dream