「碇君!?」

少女は目を見開く

 

 

 

 

「エヴァシリーズ、S2機関を開放!」

「次元測定値が反転! マイナスを示しています!

 観測不能! 数値化できません!」

「アンチATフィールドか……」

それでも彼らは事態を見続ける

「全ての現象が15年前と酷似している……

 じゃあこれってやっぱり、サードインパクトの前兆なの?」

他に為す術を持たぬが故に

 

 

 

「作戦は……失敗だったな」

それは彼らが軍人であるがゆえの最後の言葉

 

 

 

「直撃です! 地表堆積層融解!」

「第二波が本部周縁を掘削中! 外殻部が露呈していきます!」

報告を続ける男達

「まだ物理的な衝撃波だ! アブソーバを最大にすれば耐えられる!!」

たとえ無意味であっても彼らは最後まで目を見開き続ける

 

 

 

 

「人類の生命の源たるリリスの卵……黒き月

 今更その殻の中へと還ることは望まぬ。

 だが、それも、リリス次第か……」

男は呟く、深き思いを込めて

 

 

 

 

「なぜだ!?」

『私はあなたじゃ、ないもの』

最後の最後に少女は男を拒絶する

 

 

 

『駄目、碇君が呼んでる』

少女はそう答える

 

 

「ただいま……」

「おかえりなさい。」

“それ”は少女に答えた

 

 

 

 

「ターミナルドグマより正体不明の高エネルギー体が急速接近中!」

「ATフィールドを確認! 分析パターン……青!」

「まさか! 使徒!?」

「いや、違う! ヒト……人間です!」

そして彼らはそれを見る

 

 

 

「綾波?」

白い両手が彼に差し伸べられる

「レイ?」

赤い瞳が彼を見つめる

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

『るぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!』

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

『るぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!』

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

『るぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!!』

少年が、初号機が絶叫する

「心理グラフ、シグナルダウン!」

「デストルドーが原子化されていきます!」

「……これ以上は、パイロットの自我が持たんか……」

 

 

 

「もうイヤだ、もうイヤだ、もうイヤだ、もうイヤだ、もうイヤだ、もうイヤだ、もうイヤだ、もうイヤだ、イヤだ、イヤだ、イヤだ、イヤだ、イヤだ」

「もういいのかい?」

「!?」

白い少年が微笑む

「そこにいたの? カヲル君」

 

 

 

「ソレノイドグラフ反転! 自我境界が、弱体化していきます!」

「ATフィールドもパターンレッドへ!」

「……使徒の持つ生命の実と、ヒトの持つ知恵の実。その両方を手に入れたエヴァ初号機は神に等しき存在となった。そして今や、命の大河たる生命の樹へと還元している。

 この先にサードインパクトの、ヒトを無から救う箱船となるか、ヒトを滅ぼす悪魔となるのか、未来は、碇の息子に委ねられられたな……」

「ねぇ、私たち正しいわよね!?」

「わかるもんか!」

 

 

 

 

 

「今のレイは、あなた自身の心。あなたの願いそのものよ」

少年に語りかけたのは果たして誰だったのか

 

 

 

 

 

 

 

「パイロットの反応が限りなくゼロに近づいていきます」

「エヴァシリーズ及びジオフロント、E層を通過。尚も上昇中」

『現在高度22万q、F層に突入』

「エヴァ全機健在」

「リリスよりのアンチATフィールド、更に拡大。物質化されます」

宇宙を眺めながらただ報告を聞く男

「アンチATフィールド、臨界点を突破!」

「駄目です! このままでは、個体生命の形が維持できません!」

「…………」

 

 

 

大きく翼を広げるリリス

「ガフの部屋が開く……世界の、始まりと終局の扉が、遂に開いてしまうか」

 

 

 

 

 

『世界が哀しみに満ち満ちていく』

『虚しさが人々が包み込んでいく』

『孤独はヒトの心を埋めていくの?』

 

 

 

 

 

 

 

そして、人類の補完が始まる。