<碇家食卓>

 

 

月に最低一度とシンジが自分で決めている碇家での夕食及び宿泊。

リツコが肉じゃがの入った小鉢を置きながら聞いた。

「それで結局どっちが会長でどっちが副会長になったの?」

「………」

アスカはどうやら耳に入っていないらしい。

今日はミサトがネルフに泊まり込みなので、だったらとシンジがアスカを連れてきたのだ。最初は渋っていたアスカだったのだが、シンジに家に誘われた(このあたり意味深)と悟り喜んでついてきた。しかし、

「………」

上座で居住まいを正しているゲンドウがたとえようもない重圧感を生み出しアスカは緊張のあまり何も出来ずにいた。

余談だがシンジが碇家に泊まるときには必ず家にいる。

「アスカが会長で僕が副会長です」

アスカの代わりにシンジが答えた。

「……何?」

ゲンドウが重々しい声で言った。

思わずびくっとするアスカ。

アスカの膝の上のレイが何事かとアスカの顔を見る。

ちなみにレイはこの前ミサトの家で世話になってからアスカに懐いている。

「……どういうことだシンジ?」

アスカは自分が会長になるということを糾弾されているように感じて気が気でない。

「質問の意味が良く分からないけど。

 会長はみんなを引っ張っていく元気な人じゃないといけないだろう?みんなに活を入れたり、いろんな人と活発に議論したり、時には喧嘩したりね。元気なアスカにぴったりだろ?

 逆に副会長は会長とみんなの間を取り持ったり、苦情を聞いてあげたり会長を補佐してうまくみんなをまとめていく役割だから、穏和な性格の僕の方がいいって」

「言う通りね。誰が言ったの?」

席に着くリツコ。

「委員長、じゃなかった洞木さん。後はカヲル君も」

「人を見る目は確かな様ね」

「ほんとだね。そういうことなんだけどなにか問題ある父さん?」

「……問題ない。好きにしろ」

「うん」

うなずきあう父と子。

「じゃ、食べましょう」

リツコの合図で一同手を合わせる。

「アスカ?」

「え、ああ。ごめん」

アスカも慌てて手を合わせる。

「ゲンドウさん?」

「ああ、わかっている」

ゲンドウも手を合わせる。

『いただきます』

 

 

「レイと一緒に入って大変じゃなかった?」

「ああ、お風呂ならもう慣れてるから大丈夫よ」

髪を整えながらアスカが答えた。

リツコはレイの髪を乾かしている。

結局今日は泊まっていくことになった。

アスカも食事が終わる頃には自分を取り戻していた。

もっともゲンドウがときたま見せるシンジやリツコとの会話には驚く他無かったが…

(…ま、ネルフの総司令って言ってもシンジの父親には違いないもんね)

さすがに自分の義理の父になるとまではまだ考えつかない。

「…………」

意中のゲンドウが居間に入ってきた。

「……シンジは?」

「今、お風呂に入ったところですよ」

「……そうか」

少し考え込むゲンドウ。

何事かと見るリツコとアスカ。

不意にゲンドウが顔をあげる。

「……惣流君。少し話があるのだが書斎まで来てくれないかね」

アスカは耳を疑った。

碇司令が自分に話がある? しかも命令じゃなく頼んでいる?

助けを求めるようにリツコを見る。

「大丈夫よアスカ。何も取って食いやしないから」

こともなげに笑われる。ゲンドウは無言だ。

(…わざわざシンジのいないときに書斎って事はシンジに関係する内密の話って事ね。)

「わかりました」

アスカが承諾するとゲンドウはうなずき居間を出た。

 

 

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