MAC-OS8導入でさらに遅さをしみじみ実感するようになった愛機PowrMac8500/120ですが、最新のPowerPC750を搭載したプロセッサカードに交換すると最新のPowerMac9600/350に肉薄する性能を得られる(という宣伝文句ですね)ということなので、早速購入してテストしてみました。
私の購入したのは233MHz版(キャッシュ512kb)で、日本橋で\127,000でした('97/10/30購入)、他に266MHz版(キャッシュ1MB)もあります(ただし266MHz版は11月末発売)。この手のカードはやはりコストパフォーマンスだと思うので、もうすぐ米国で発表されるアップルの新製品のPPC750/233,750/266マシンが2000ドル〜3000ドルであると言われていることを考えると、20万円前後と思われる266MHz版は私の場合、購入検討の対象外でした。
プロセッサーカードを取り付けるにあたって、まず純正で装着されている2次キャッシュメモリを取り外す必要があります。2次キャッシュメモリはマザーボード上に装着されているため8500シリーズの機種の人はメモリ増設時同様に、マザーボードを取り外す必要があります。自分でこういった作業を行うと、メーカーの保証外となるので自信のない人は購入店に依頼するのがいいでしょう。
さて、2次キャッシュの取り外しですが、これが冷や汗ものです。堅くて抜けないのです。指を引っかけられるところが片方しかなく、無理に片一方だけ力を入れるとコネクタ部を破壊してしまいそうで恐いのです。最終的には指が引っかけられる側の出っ張りとマザーボード側のコネクタのすき間にマイナスドライバーを入れて軽くひねってじわじわと片側を浮かせて、ある程度抜けたらあとはメモリの両端をつかんで「えいやっ!」っと水平に引っこ抜きました。この作業はみなさん苦労しているみたいで、布等を介してペンチではさんで一気に抜いたという方もおられます。2次キャッシュの取り外しに関しては、取扱説明書でも販売店等への依頼を推奨してあり、作業手順は記載してありません。
反対に、Booster750自体の取り付けは何も難しくありません。外した604カードの代わりに差し込むだけです。取扱説明書にも作業手順が記載してあります。しっかり奥まで差し込むことさえ注意すれば問題ないでしょう。
無事取り付けが完了したら、バックサイドキャッシュを有効にするための機能拡張を付属のフロッピーからインストールして作業完了です。この機能拡張は無くても動作はしますが、入れておかないと本来の高速性が発揮されません。
装着後、付属のプロセッサの情報表示ユーティリティーを実行させると。
と、表示されました。ちなみに、604/120の時はBus Clockは40MHzでした。
なお、Mac-OS8付属の'Appleシステム・プロフィール'では
と表示されます(740っていったい何???195MHzっていったい???)
まず、お約束のNortonUtilities3.5のSystemInfoの結果です。
宣伝の通り、3倍近いスピードアップです。ただし、実際の使用環境においてこれだけのスピードアップが体感できるかというと、必しもそうでもないのが現実です。
MacPower誌では、CPUが速くなってもバスクロックが遅いのでシステム全体のパワーアップにつながらないため、ファインダ操作等では体感上ほとんど速くならないと書かれていました。また、PowerMac8500/180にNewerTechnology製のPPC750/250カードを搭載した人が体感上スピード向上が感じられないと、ネット上で報告されていました。しかし、私の場合はファインダ操作にしても、その他日常的な作業においてもすぐに速度アップを体感できました。そこで、ファインダ操作やアプリケーションの実効速度を測定してみました。棒グラフは長いほうが高速となるよう変換してあります。
あまり、CPUの速度向上に影響されないだろうと思っていましたが、20秒弱も起動時間が短縮されました。
100個近いファイルの格納されている、7個のフォルダを順番にリスト表示形式で開いて、閉じるという動作をAppleScriptで記述して、実行させました。こういった日常的なファインダ操作でも2倍の速度向上が得られました。
プラグインがごっそり入った状態でのテストです。ディスクアクセス主体になりますが、ここでも1.5倍程度は速くなりました。
よく使うフィルタ2種類(アンシャープマスク,ぼかし)と重そうなフィルタ(放射状)を選んでみました。Photoshopにサンプルとして付属している画像(モロッコ)に連続して20回フィルタをかけるように(放射状は5回)アクションを設定して、実行時間を測定しました。フィルタのパラメータは初期値のままです。参考のためPentiumII+Windows95マシンでの測定結果も載せておきます。
Strata StudioPro Blitz 1.75のチュートリアルファイルのappleをレイトレーシングモードでレンダリングする時間を測定しました。
Booster750導入後も特にシステムやアプリケーションが不安定になったり、動作しないアプリケーションがあるといったことはありませんでした。
また、CPU冷却が純正のヒートシンクから冷却ファンに変わりましたが、騒音等は聞こえません。
上記のテスト結果から、日常的な使用においても全体的に2倍強程度の速度向上効果が認められました。体感上も速くなったと実感できます(そのうち慣れてしまうのでしょうけど)PPC604/120やそれより下位のプロセッサの人は導入効果が大いにあり、それなりの感動を味わえると思います。一方、604/200クラスを使用している人は既に604/120の2倍近い速さを手に入れている訳ですから、これほどの体感スピードアップは期待できないと思います。
ニフティーサーブのFMACUS MES8 #21248番以降のコメントツリーでBooster750シリーズのクロックアップに関する情報や実施例が報告されており非常に参考になります。リスクは伴いますが、タダで高速化できるという魅力に負けてやってみることにしました。
さて、単にクロックアップといっても、3通りのアプローチがあります。
先ほども言いましたが、改造は大変なリスクを伴います。下手をすると12万円がパーになる可能性もあります。うまくいってもメーカー保証が受けられなくなることを覚悟せねばなりません。
それでも行うという人にアドバイスを少し(といっても私も素人です)、まずチップ抵抗の取り外しに際しては半田ごてで両端を交互に暖めながら少しずつ横から押してずらすように取りましたが、とれないからといって決して力を入れすぎてはいけません。基板上の配線パターンまで一緒にはがれてどうしようもなくなる可能性があります(経験済み(T_T))。またチップ抵抗は非常に小さいので取り付けの際はピンセットがないと非常に位置決めが難しいです。無い人は割り箸の先端を細く削って簡易ピンセットを作りましょう。
以下の表は実際に私が改造して試した設定とベンチマーク結果です。恐いので少しずつクロックを上げていきました。なお、CPU倍率を5.5倍に変更すると純正のBooster750機能拡張は動作しなくなりました。(たぶんBooster750/266 と誤認識してしまい、搭載キャッシュ容量が1MBあるものとして動作しようとするためではないでしょうか)
|
CPUクロック |
BUSクロック |
CPU倍率 |
キャッシュクロック | キャッシュ/CPU Ratio | キャッシュコントローラ | Norton System Info (CPU) | コメント |
1 |
235MHz |
47MHz |
5倍 |
117MHz |
1:2 |
Booster純正機能拡張 |
636 |
完全ノーマル状態 |
2 |
245MHz |
49MHz |
5倍 |
122MHz |
1:2 |
Booster純正機能拡張 |
654 |
BUSクロックをアップ |
3 |
245MHz |
49MHz |
5倍 |
163MHz |
1:1.5 |
G3 Cache Utlitiy V1.0 |
663 |
G3 Cache UtilityのRatioを変更 |
4 |
269MHz |
49MHz |
5.5倍 |
134MHz |
1:2 |
G3 Cache Utlitiy V1.0 |
684 |
CPU倍率をアップ |
5 |
269MHz |
49MHz |
5.5倍 |
179MHz |
1:1.5 |
G3 Cache Utlitiy V1.0 |
---- |
途中でハングアップ、常用不可 |
6 |
280MHz |
51MHz |
5.5倍 |
140MHz |
1:2 |
G3 Cache Utlitiy V1.0 |
705 |
BUSクロックをさらにアップ |
275.60MHz |
50.10MHz |
137.80MHz |
クロックをNewerTechのClockometer v2.0.1 で再測定 |
クロック測定は全て付属のBOOSTERInfoで行っていたのですが、Newer Technologyの配布しているClockmeter v2.0.1で測定してみると微妙に差があります。Clockmeterのほうが正確な値を出しているように思います。キャッシュクロックは163MHzでは問題なく、179MHzでは暴走していることから170MHz程度が限界点のようです。
現在275MHz設定で使用していますが、CPUのヒートシンクを触っても過熱している様子はありません。2日ほど使用した限りでは、暴走することもなく全く問題ないようなので当分275MHzで使用するつもりです。まだ余裕がありそうなので、そのうち調子にのって6倍速設定の300MHzにも挑戦するかもしれませんのでお楽しみに(そのうち痛い目に会うような気もするけど...)。
'98.1.25追加 275MHzで順調に動作して気を良くしていたのですが、サブで使用している内蔵HDDが起動時にマウントしていないことがある(頻度は起動3〜4回に1回程度)ことに気がつきました。後からSCSI Probeで手動でマウントすることは可能で、マウント後はちゃんと動作しているのですが、SCSI Bus廻りに不安定要素があるのはやはり心配です。CPUクロックを上げたことよりも、BUSクロックを上げたことによる弊害だと考え、BUSクロックをとりあえず1段階落として48.45MHzにしましたが効果はありません。結局初期状態の46.54MHzに戻したらピタリと症状は収まりました。BUSクロックを戻したのでCPUクロックも比例してダウンして、結局現在は以下の状態で使用しています。(Clockmeter v2.0.1で測定)
1週間ほどこの設定で使用して問題がなければ、BUSクロックは変更せず、倍率のみ6倍速に変更した279MHZに挑戦してみるつもりです(懲りずにまだやるか?)
ところで、CPUのオーバークロックでの使用に関して興味深い記事がMacWeek Online Japanに掲載されています。http://www.zdnet.co.jp/macweek/9801/19/n_g3.htmlをご覧下さい。
'98.3.17追加 256MHzで約3ヶ月使用しましたが、全くトラブル無く順調に動作していたことを先に報告しておきます。さて、275MHz時にHDDがマウントしないことがあった件に関して、メールにて「単純にブートが速くなりすぎて、SCSI−HDDの認識タイミングとHDD自体のブートアップタイミングが合わなくなっているだけではないのでしょうか?」との情報を頂きました(ありがとうございます)。他メーカーの750カードを無改造で使用している方で同様の症状を訴えている方もおられますし、おそらく原因はそれだと思います。というわけで、一旦下げたBUSクロックを50MHzに戻しました。現在の設定は以下の通りです。(Clockmeter v2.0.1で測定)
'98.3.19追加 「BOOSTER750機能拡張」最新版(v1.1.0b3)が公開されました。主な改善点は、ビデオカード「Millennium」「Millennium II」に対応,SCSIでのデータ転送を最適化などです。なお、以前のバージョンではクロックアップしたカードで動作せず、G3 Cache Utilitiy V1.0を使用していたのですが、今回のバージョンでは問題なく動作するようになりました。機能拡張を入れ替えただけにもかかわらず、Norton System InfoのCPU値は705から765に跳ね上がりました。やはり純正はキャッシュコントローラーがBOOSTER750に最適化されているのでしょうか。あとインタウェアのBOOSTER750の製品情報のホームページを見ると、以前掲載されていたBOOSTER750とSCSIカードやビデオカードとの相性や制限事項の項目がごっそり消えて無くなりました。最新の機能拡張によりこれらの制限が解除されたのだとすれば、嬉しい話です。('98.3.20訂正)制限事項のページはちゃんとありました。訂正します。あいかわらず、お目当てのAdaptec2940UWとの相性はそのままみたいで、ちょっとがっかり。
'98.4.6追加 275MHz設定も順調に動作しているのに気をよくして、300MHzに挑戦しました。改造内容は275MHzの状態から、CPUのクロック倍率のみ6倍へ変更です。改造後、起動すると起動音も鳴り、「Welcome to Mac OS」も表示され思わずガッツポーズしようとした直後、機能拡張のアイコンパレードが始まる手前ぐらいで爆弾に見舞われフリーズしました。振り上げた腕まで凍り付きました(ウソ)。爆弾のエラーメッセージ自体は文字化けして読みとれません。悪あがきをして、機能拡張をoffしたり、PRAMをクリアしたりしましたが、すべて無駄でした。問題は、CPUとバックサイドキャッシュのどちらが根性無しだったのか(笑)ということです。この設定ではキャッシュクロックは150MHzのはずですが、以前163MHzまで安定動作を確認しており、さらにキャッシュを有効にする機能拡張を読み込む前にフリーズしていることから、やはりCPUが耐えられなかったのでしょうか。CPUの冷却を見直せばなんとかなるかもしれませんが、相当スペースが小さいのでDOS/Vショップで売られている、いかにも冷えそうな冷却ユニットはつきそうにありません。とりあえず元の275MHzに戻しましたが、まだまだあきらめたわけではありませんよ(笑)。BOOSTERを取り付ける際に外した純正PPC604カードに付いていた大きなアルミ製ヒートシンクとペルチェ素子を組み合わせて...などと考えてます。
'98.5.16追加「BOOSTER750機能拡張アップデータ」最新版(v1.2.0)が公開されました。念願のAdaptec 社製 SCSI カード「Powerdomain」に対応した他、SCSI 動作を安定化したそうです。今回のバージョンも275MHzにクロックアップしたBOOSTER750で動作しています。今回のバージョンアップによりNorton Sysutem InfoのCPU値はなぜか765から758にダウンしてしまいました。まぁ測定誤差の範囲ですかね。
懲りずにやってる300MHz化への挑戦ですが、とりあえず冷却でクロックの上限があがるのかどうか確認ということで、ヘヤードライヤーの冷風を純正ヒートシンクに横から当ててみました(笑)。ドライヤーにTURBOボタンがあったのでそれもONです(爆笑)。風向きを何回か試すと300MHzでついに起動に成功しました。ただし非常に不安定でベンチマークをとるがやっとという状態です。おまけにドライヤーを持つ手は疲れるし、非常にうるさくてたまりません。でも冷却もちょっとは効果があったということで、CPUクーラーを交換してみることにしました。PC-AT互換機の世界で安定した冷却性能に定評のある三洋電気のSAN ACE MCをボディーと干渉しないように全高を低く改造して装着してみました。(右写真参照。左に置いてあるのが純正クーラー)。しかし残念ながら300MHzでは数回に1回しか起動に成功しません。安定動作にはほど遠い状態です。ドライヤー攻撃も効果なしでした。どうやら発熱以外にボトルネックが存在するようですね。無念〜。