Seagate ST-34555N


更新情報


始めに

ハードディスクの容量不足が深刻になってきたため、4GBクラスのハードディスクの増設を行いました。ドライブには7200r.p.mという高速ドライブにもかかわらず、5400r.p.m.クラスと同等の低価格で販売されているSeagate ST-34555Nを選択しました。7200r.p.m.以上の高速ドライブの場合、PowerMac本体への内蔵は発熱や電源容量等の様々なリスクが伴うというのが通説ですが、あえて挑戦してみました。結果は大成功です(^_^)


4Gクラスの主要HDDスペック一覧

購入前に調べた、主に市場に出回っているハードディスクの回転数別スペック一覧です。

回転数(r.p.m)

メーカー

型番(機種名)

内部転送レート(Mbits/s)

シークR/W(ms)

バッファ(kb) 市場価格(最低-最高)

10033

Seagate ST-34501N(Cheetah) 122-177 7.7/8.7 512 75,800-83,800

7200

Seagate ST-34572N(Barracuda) 92-144 8.8/9.8 512 64,800-70,700
ST-34371N(Barracuda) 80-122 9.4/10.4 512 55,800-65,600
ST-34555N(Hawk 4XL) 72-115 9.1/10.1 512 38,800-45,800
Quantum XP4550S (Atlas II) 121? 8.0 512 59,800-64,800
VK4550S (Viking) 83-139 8.0 512 46,800-49,800
WD WDE4360U (Enterprise) 8.0 512 46,800-51,000

5400

IBM DCAS-34330(Ultrastar2ES) 63-103 8.5 512 36,800-39,000
Quantum FBSE4.3S (Fireball SE) 9.5 128 37,800-39,800

 CheetahやBarracudaといった超ハイスペックのドライブは、やはりUltraSCSI-WIDEモデルを選択して、UltraSCSI-WIDEのSCSIアダプタカード(Adaptec PowerDomain2940UW等)と併用しないと真価を発揮できないと思います。両者を一度に揃えると10万円を越える出費となるため今回は予算オーバーです。しかも私の使用している、PPC750カード(Booster750/233)と2940UWは相性が悪いらしく、起動ディスクとして使えなかったり、手動でマウントしないといけなかったりするそうなのでどちらにしても使えませんね。(「いつかはCheetah」の夢が崩れていく〜)

 ST-34555Nは7200r.p.m.クラスでは最もスペックが劣りますが、それでも5400r.p.m.モデルよりは優位を保っています。価格は7200r.p.mクラスでは\38,800円とダントツに安いです。4GBのハードディスクがこの値段で買えるのですから、一昔前のことを考えると夢のようです。

 IBM DCAS-34330はアップル純正としても採用され、安価で、静かで、発熱も少ない割に性能が良いと雑誌でも取り上げられています。ライバルのQuantum Fireballは新型のSEになってもバッファサイズが小さいままなのが気になります。熟考の末IBM DCAS-34330にしようと思いお店に行ったのですが、7200r.p.m.のST-34555Nがほぼ同等の価格であることに気が付き、あっさり7200r.p.m.の誘惑に負けてしまいました。日本橋の市場価格では、DCAS-34330の\37,500に対し、ST-34555Nは\38,800とその差はたったの\1,300円でした(いずれもTWO-TOP日本橋店で12月末の店頭価格です)。


取り越し苦労の発熱と騒音

とかく高速回転ドライブは「発熱が凄いのでMAC本体への内蔵は無理」「うるさくて、机が震えるほど振動が激しい」などと昔からよく言われます。騒音は我慢するにしても、発熱はちゃんと対策しておかないと寿命が心配なので、DOS/Vマシン用に売られているハードディスク空冷ファンを同時に購入しました。

私のPowerMac8500/120には純正2GBのハードディスクの他に、Quadra840AV時代に使用していた1GBのハードディスクが既に内蔵済みです。詰め込めばもう一台入りますが、冷却用の空間を確保するため1GBのハードディスクを取り外してST-34555Nの場合を替わりに設置してみました。

設置後、ベンチマークやファイルコピーなどで2時間近く連続運転させましたが、本体カバーを外して恐る恐る触ってみると人肌程度で全然熱くないじゃないですか!純正の2GBよりも確実に冷たいのです。ハードディスクの仕様は50度以下で使用せよとのことなのでこれなら空冷ファンを取り付ける必要もないでしょう。回転音や振動も純正2GB並で気になりません。シーク音だけは純正2GのST-32430Nが無音に近かったのに比べると、ごく一般的なレベルのシーク音を発しています。いままで無音に近い環境に慣れていたので、ちょっと気になりますがこれは仕方ありませんね。

7200r.p.m.ドライブということで、相当覚悟して臨んだのですが、嬉しい誤算でした。


アップル純正フォーマッタで初期化ok

Mac-OS8のドライブ設定1.3.1はST-34555Nを認識してくれたので、同ソフトを用いてフォーマットを行いました。Hard Disk ToolKit2.0.6で初期化した場合とドライバの速度の比較も行いましたが、誤差程度の差しかなかったので、アップル純正ドライバで統一しておきました。


本体電源容量も大丈夫(みたい)

もう一つの懸念事項が、PowerMac8500/120本体電源の容量です。高回転ハードディスクは消費電力が大きくて、起動時の瞬発的な大電流が流れる時などに電源容量が不足するのではという心配です。

これも杞憂に終わりました。現在ではハードディスク3台内蔵、PCIスロットにDeskstudio-DRを装着、メモリ118MB、24倍速CD-ROMに換装、CPUをPowerPC750/233に変更という環境ですが何事もなく稼働しています。

電源容量不足の典型的な症状は起動時に画面真っ暗のままフリーズというパターンらしいので、ちゃんと起動するのなら、きっと大丈夫なのでしょう(おいおい)。


調子に乗ってハードディスク3台内蔵に挑戦

発熱が大したことないので、一旦取り外した1GBのハードディスク(Quantum Empire1080s)を元に戻すことにしました。

PowerMac8500/120の場合普通に内蔵できるのは2台までですが、SCSIのコネクタや電源ケーブルは3台分用意されています。3台目のハードディスクは下段のドライブベイに設置したハードディスクの上に設置することになります。設置方法は「そのまま上に重ねて置いて特に固定せずに乗せているだけ」という猛者も存在しますが、いくら発熱が少ないと言ってもそれでは放熱に不安が残ります。

下段ドライブベイにハードディスクを2台内蔵するために、内蔵RAIDキットとして2台のハードディスクの連結金具と空冷ファンのセットが市販されています。これは板金の取り付け金具と2台の小径ファンのセットだけでなんと1万円弱もします。こんな物に1万円も出す気は無いので自作することにしました。

用意する物
  • アルミのアングル材(15mm幅、2mm厚の物1本)

ホームセンターでアングル材の売場に行くと、L型やコの字型のアングル材に混ざって、平板のアングル材も売られています。私の購入した物は2mm厚×15mm幅で長さが1m弱の物ですが、たったの270円でした。これを切断して使用します。

  • 空冷ファン(2ケ)

小径の空冷ファンはDOS/Vパーツショップで売られています(1ケ500円程度)私は配線が面倒だったので、DOS/Vマシンのハードディスク空冷用としてよく売られている5インチベイに埋め込むタイプの製品をそのまま流用することにしました。空冷ファンが2台取り付け済みでHDDの電源コネクタからファン駆動用の電源を分配するコネクタがついており、配線の手間が全くありません。\2,980円でした。

  • インチネジ(8ケ)

ハードディスクの固定穴は普通のミリネジでは無く、インチサイズのネジが必要です。DOS/Vパーツショップで袋詰めセットが280円でした。

加工

アルミのアングル材を右図面のように加工します。この程度のアルミ板なら、金属用の糸ノコで簡単に切断できます。穴開けはドリルで行いますが、切断前に穴を開けて置いた方が手で保持する場合は楽です。工具が無い人も、ホームセンターの加工サービスを利用すれば加工可能でしょう。

連結!

できあがったブラケットで2台のHDDを連結した状態です。上段と下段のHDD間の隙間は6mmです。上段のHDDとドライブベイ天井との隙間は2mm程度で空冷ファンの風も入らないので上段のドライブは発熱の少ないドライブにしましょう。写真では上がQuantum Empire1080sで下がST-34555Nです。

手前のファンはDOS/V用HDD空冷キットのカバーやフィルタを外し、干渉部分を切断してあります。プラスチックなので加工は簡単です。

組み込み

PowerMac8500/120に組み込んだ状態です。純正の2GBが一番発熱量が多いので上段のドライブベイに単独で設置しています。

空冷ファンは側面のスペースに差し込んであるだけで、特に固定していません。

SCSIフラットケーブルを差し込む際に手のはいるスペースが小さいので苦労しますが、ドライバーの先端等でグイグイと押し込むようにすると比較的簡単に入ります。


ベンチマークテスト

以下の3つのベンチマークソフトを用いて速度を計測しました。

比較に用いたハードディスクはPowerMac8500/120純正の2GBのSeagate ST-32430N(5400r.p.m,seek10.4/11.4ms,Buffer512kb,内部転送レート35.8-62.2Mbits/s)です。

さすがに1世代前の5400r.p.m.ドライブには圧勝です。ただ、最新の5400r.p.m.ドライブはディスクの記録密度が向上しシーク速度も向上しているためこれだけの差がでるかどうかは不明です。IBM DCAS-34330やQuantum FireBall SE等のベンチデータをお持ちの方がおられましたら、結果を教えていただけると嬉しいです。

Hard Disk ToolKit 2.0.6

このベンチマークが最も純粋なHDDの基本性能を測定してくれるように思います。ディスクキャッシュは1024kbの設定でベンチマークを行いました。グラフは、

です。全ての項目でST-32430Nを上回る性能が確認できます。特に連続読み込み/書き込みのSustained Read/WriteではReadが7MB/s,Writeにいたっては9MB/sと内部FAST-SCSIの理論限界値である10MB/sに迫る性能を発揮しています。Motion-JPEGカードを用いたビデオキャプチャなどの際に、5〜6MB/sの転送レート設定でのコマ落ちのない安定したキャプチャが期待できます。

ZIFF-DAVIS' MacBench4.0

このベンチマークプログラムはZIFF-DAVIS社のホームページから自由にダウンロードできます。ハードディスクに関する各種のテストを総合したScoreで性能を表します。テストはディスクキャシュサイズを1024kbに設定して行いました。ある程度CPUの性能に結果が左右されるようですね。

Norton Utilities 3.5.1 System Info

このベンチマークでは、比較条件を合わせるためにディスクキャッシュの設定を128kbにすることが要求されます。その条件で再起動後の測定結果です。

'98.4.12追記 私が最後まで購入を迷ったIBM DCAS-34330をお持ちの方から、ベンチデータを頂きました。(T.Mさんありがとうございます!)私と同じ内部FAST-SCSI Busに繋いだ条件の他に、SCSIカードに繋いだ場合や、複数台でRAIDを組んだ場合のベンチデータも頂きました。ST34555Nと比較をするために表にまとめてみました。

Sustained Read(kb/s)

Sustained Write(kb/s)

使用ドライブ

SCSI接続

RAID

Low

High

Ave.

Low

High

Ave.

ST-34555N

内部FAST SCSI

5825

7858

7192

7515

9504

9115

DCAS34330

内部FAST SCSI

4511

5358

4956

5176

6663

6257

DCAS34330

3940UWD

?

?

7455

?

?

7761

DCAS34330*2台

3940UWD

REMUS1.4J

11339

13634

12150

11201

16809

14870

DCAS34330*3台

3940UWD

REMUS1.4J

11436

17146

14769

13410

23110

21325

とりあえず、内部FAST-SCSIに接続した場合の速度はST-34555Nの方が勝っているようで、ほっとしました。しかし驚いたのは、SCSIカードに接続した場合の速度です。Adaptec PowerDomain3940UWDを介すると、一台のみの接続でも、内部FAST SCSI BUS接続よりかなり速度アップしているのがうかがえます。これがUltraSCSIの威力でしょうか?('98.4.13追記 ドライブ単体接続時のSCSIカードと内蔵バスとの違いに関して、さらにメールにて但し書きを頂きました。"ベンチではSCSIボードの方が内蔵バスよりもHDTでの結果が良い場合がありますが実際の所ベンチ以外では体感できません。あくまで最大転送レートの上限が高いバスとだけ認識しておいた方が良いかも知れません。"とのことです。)

また、複数台でRAIDを組んだ場合は、高価なCheetahもビックリ(笑)のすさまじい威力を発揮してます(*_*)。

雑誌等のRAID記事はハイエンドドライブを組み合わせた例ばかりで、私は「RAIDを組むなら高速(高価)なドライブで」という固定観念がありましたが、安くて静かなドライブの組み合わせで結構なパフォーマンスが得られるというのは、まさに目からウロコもんです。RAIDというと、大容量ファイルの一括転送には強いが、小さいファイルの転送には弱いというイメージを持っていましたが、一概にそうともいえないようです。小さいファイルの読み書きの発生するアプリケーションの使用感を伺った際に頂いたメールを引用させていただきます。

フォトショッププラグインの読み込み(ここは本当にあっと言うまに終わる)こんだあと普通のマシンだと環境を初期化中とでて数秒まってたのがチャンネルを分けた後はなくなりました(一瞬で終わってる)
STRATA Studio Pro での起動でかなりたくさんのプラグイン等があるのですがこれもプログレスバーが一瞬ちらっと出るだけで立ち上がります。
 ネットスケープのバック、フォワードの際のキャッシュ読み込みも確かにシングルの時より速いです、印象としては、SCSIは十分速いのでCPUさえもっと速ければもっと効率が上がる気がします。
ただ、速いと言っても小さいファイルがたくさんあるため2台でも3台でもある程度限界があると思います。各種オーバーヘッドのため?
上記の状況で3台の方が確かに速くSTRATA Studio Pro での起動ではプログレスバーさえ何かが画面中央で一瞬光っただけといった感じですから。マック自体の起動、デスクトップ再構築も圧倒的に速いですね。
(引用終わり)

うちの場合、STRATA Studio Proの起動プログレスバーの伸びるのがしっかり目で追えます。いやぁ、欲しくなりました、SCSIカード(笑)。 


結論

高回転ドライブの中でCheetahなどの超ハイスペックモデルはUltra-WIDE接続でないと性能を発揮できないかもしれませんが、ST-34555Nのような廉価版モデルならMac標準の内部Fast-SCSI接続でも十分性能を出し切れているように思われます。5400r.p.m.モデルと同じ費用で内部Fast-SCSI Busの限界近い転送レートをはじき出してくれるのですからコストパフォーマンスは良いと思います。ただし、シーク速度はあまり速くないのでランダムアクセスの性能はごく一般的なレベルです。そのせいか体感速度はベンチマークほど劇的に変わったようには思えません。計ってみると実際にはアプリケーションの起動速度は10〜20%は向上し、Macの起動速度も10秒は短縮されているのですがこの程度の差ではなかなか体感できないようです。一方、連続読み込み/書き込みには高回転ドライブの本領を発揮して非常に強力なのでDTVユーザーにはお勧めだと思います。

とにかくハイエンドを目指す人は、Ultra2 SCSIの一般化までもう少し待ちましょう。SCSIの新しい規格であるUltra2 SCSIの登場により、98年上期には各社からUltra2 SCSIのLVD伝送対応のハードディスクが出そろいます。Ultra2 SCSIでは40MB/s、Wide Ultra2 SCSIでは80MB/sとそれぞれ従来の2倍の転送速度となり、機器間の総ケーブル長の制限も12mと長くなります。Ultra2 SCSI対応のPCIアダプタカードはAdaptecからAHA2940U2WとしてDOS/Vマシン用が米国ではすでに発売されているので、Mac用もそのうち発売されるでしょう。そのSCSIカードでBooster750/233との相性問題が解消されていれば、対応HDDとセットで導入するつもりですので、またインプレッションを報告したいと思います。


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