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9月の西荻の花

ねむの木

名前の由来は夜間は葉を閉じて「ねむる」からです。ごく近縁に「おじぎそう(ねむりぐさ)」というのがあり、これは触るだけで葉を閉じてしまい、小さい頃は、よくさわっていたずら?をして一人で遊んだものです。豆科の植物ですから街路樹の「アカシア」にそっくりです。
花糸は紅色で美しく、英名「silk tree」そのものです。

季語は「ねむの花」で夏。芭蕉の奥の細道で「象潟(きさがた)や雨に西施(せいし)がねぶの花」という名句があります。
象潟は秋田の南で日本海に面した象の鼻のような水路が海につながっている名勝。芭蕉は「松島は笑うが如く、象潟はうらむがごとし」といっているのは、太平洋に面した表日本の松島と裏日本の象潟との比較でしょう。
この句は解釈が難しく「雨中の象潟では、あたかも西施が悩ましげに眼を細めて眠っているように、ねむの花が雨に濡れて咲いている」という、芭蕉には珍しく、新古今的な技巧の句です。また故事来歴を知らないと発想が湧いて来ません。昔の人はこのような中国の古典が常識であったようで・・・・スゴイデスね。

「西施」とは越国第一の美女で、中国の春秋時代(BC770ーBC403)呉王夫差(ごおうふさ)に負けた越王句践(えつおうこうせん)が西施を献上し、呉王は彼女の虜となって越王に滅ばされてしまうのです。
「顰(ひそ)みに倣(なら)う」という有名な諺があって、これは西施が心臓病のために苦しげに眉をひそめたのを、醜女が見て美しいと思い、自分もそのまねをしたのですが、それを見た人が気味悪がって門を閉ざしたと言う事で・・・いたずらに人のまねをして世の物笑いになる事を言うようです。芭蕉の句もこの故事を下敷きにしています。
「呉越同舟(ごえつどうしゅう)」と言うのも呉国と越国の者が同じ船に乗り合わせてしまった、すなはち仲の悪い者が同じ場所に居合わせる事です。
「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」は、呉王は越王を討って父の仇を報じようと志し、常に薪の中に臥して身を苦しめていました。ところが越王は反対に呉王を討って「会稽の恥」をすすごうと期し、苦い肝を時々嘗(なめ)て報復を忘れまいとしていました。この故事から、仇をはらそうと、あるいは将来の成功を期して、長い間苦心・苦労を重ねる事を言います。
「会稽の恥」(B.C.473年)というのは、今は使われませんが、平家物語などでは「仇討ち」「復讐」などの意味に使われます。これらの故事は「左伝」「史記」「十八史略」等に記載されていますが、原典は「春秋」という中国の孔子が書いたと見られる、魯の国の歴史書がおおもとになっていると思われます。蛇足ながら「春秋の筆法」「文藝春秋」などはここから来ています。13.9.17 宮前5-26

彼岸花

この世のものとは思えないほど、あでやか過ぎて彼岸(あの世)の花と呼ばれるのでしょう。シビトバナ(死人花=京都)、地獄花(備前)、幽霊花(上総)、疫病花(越後)とはかわいそうです。

少々ややこしいのですが植物学上の解説を・・・・
・・・・植物の種子は雌しべ(子房)が雄しべ(花粉)を受粉して出来る訳です。
すなわち種子(体細胞)は子房1個と花粉1個が受精して出来ると言う事なのです。
この子房や花粉の染色体はそれぞれ減数分裂しています。
この減数分裂した染色体(ゲノム、配偶子という)が2個合わさって1個の種子(体細胞)になるわけです。
これが普通の当たり前の植物の受精の仕方で、これを「2倍体」といいます。

ところが「3倍体」という、体細胞が3つのゲノムで構成されている不思議な植物がありますが、この植物は受粉・受精が出来ず、結実しないので種子が出来ません
バナナ、種なしスイカ、そしてこの彼岸花が代表選手です(三倍体とは
http://www1.plala.or.jp/maui/b-terms/b-terms01.htm)
3倍体は種が出来ない代わりに生育力が旺盛であり、彼岸花の地下の鱗茎は、くわなどで寸断されても再生能力が高いので、耕作地の近くに群生するのはこの性質があるからでしょう。

今年みたいな猛暑でも、秋の彼岸の頃に確実に咲くのは、気温に左右されず、地下の球根が地中の温度を感知して、花芽を伸ばしてくるものと思われています。切り花のように土中から出て咲くのですから奇妙です。葉は花が枯れた後に出てきて冬季は葉が茂ります。
曼珠沙華(まんじゅしゃげ)とも呼びますが、これは、めでたい花・天上の花として蓮華(LOTUS=ハスの花)や曼陀羅華(まんだらけ=朝鮮朝顔)等とともに仏典に出てくるそうです。
西荻の家々では必ず白花と一緒に植えていました。紅白にすれば縁起がいいのでしょう。13.9.15西荻北1−19

可哀想な名前の雑草(藪枯らし+屁糞かずら+掃き溜め菊)

9月は花の端境期。花がありませんので今月は雑草特集。それにしても、どれも可哀想な名前が付いています。
藪枯らしはぶどう科の植物だそうですが、もんでみるとあまりいい香りがしません。珊瑚色の花をつけた後、ちゃんと、ぶどうみたいな黒い小さな実を付けます。やぶからしは別名「貧乏カズラ」といいます。
屁糞かずらは揉んでみるとイヤな臭いがします。もともと、あかね科の植物で、花芯が臙脂で、外形はチャーミングです。香りさえよければ人気のでそうな花です。
掃き溜め菊は菊科のひまわりに近い植物ですがよく見ると、なかなか可憐な花です。明治の頃の外来植物だそうですが、どういう訳か、芥溜めの近くのような栄養分のある場所で繁茂するそうです。
藪枯らし13.9.5善福寺4−5
屁糞かずら13.9.5吉祥寺東町4−24     掃き溜め菊13.7.17西荻南4−12
月見草13.9.5善福寺4-5

西荻の9月の花(夜顔)

上は夜顔(よるがお)ですが、夕顔とも呼ばれています。ヒルガオ科の植物ですから、朝顔や昼顔と同じ科です。
明治初年に渡来した、もので、ほのかな良い香りです。花期は9月です。

下は夕顔(ゆうがお)です。瓜科の植物です。こちらもなかなか良い香りです。古来、中央アジア経由で来たようですが、ご存じのように、源氏物語にも出てくる、花です。実も「夕顔」と称して、冬瓜(とうがん)のように、吸い物、漬け物にするそうです。また果肉を、薄くそいで、ひも状にし、、乾燥して干瓢(かんぴょう)のするそうです。両方とも夕方に花開いて、明け方に閉じるので、このように呼ばれるようです。花期は7月から8月です。2005.9.26西荻南4−16







西荻の9月の花

善福寺池の
アオイです
2005.9.2

























上井草4−5
野田邸裏の
竹藪の
オシロイバナです
未だ夕方の4時位
だったので
花は開いて
いません
2005.9.2

















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