「……なんつーかさー」
「何だ?」
「……いや、ホンットに勘がいーよなーと思って」
「任せとけ」
 頼むから威張るなよ、頼むから。
 ため息を吐きつつ、無意味に自信ありげなケインを見やる。ただそれは、どう見ても自暴自棄以外の何者にも見えない態度ではあったが。
「なんて言ってる場合じゃないぞ!」
「ンなこた分かってるって!」
 結構余裕だな、と思える会話を交えながら、ティルとケインはそれぞれ左右に飛び退った。瞬間、今の今まで二人がいた場所を、大きな鎌の一撃が薙いで行く。ほんの少しでもタイミングがズレていたならば、確実に彼らどちらかの首が飛んでいただろう。
 鎌を振るっているのは、黒髪ショートが印象的な、キツイ感じのする美女である。すらりと背が高い。大鎌、という死神を連想させるような武器を振るいながらもずっと冷ややかな無表情を崩さないのも、キツく見える要因の一つだろう。
 彼女は左右に分かれた二人をチラリと見ると、徐にティルの方へと向き直りゆっくりと鎌を振り被った。どっから見ても、彼の方が女に近い。
 無慈悲に振り下ろされる大鎌。
「……ちょっ、何で俺なんだよー!」
 悲痛な叫びを上げつつも、鎌の攻撃を紙一重でかわしているのは流石、と言ったところか、と考えながら、ケインは魔法を使う為の精神集中に入った。ティルには悪いが、呪文が発動するまで時間稼ぎをしていてもらおう。
「ケインのおっちゃんはともかく、俺は何も悪い事してないっちゅうねん!」
 その言葉に思わず集中が乱れそうになったが、何とか理性で抑え付け、右手の人差し指と中指を立てて空中に何か文字を書くような仕草をすると、口早にぽつりと呪文を唱える。彼が最も得意とする呪文、誘眠スリープだ。
 ふわり、と対象の周りの空気が歪む。それは、魔法の発動を意味していた。
「もー! 早く何とかしろよ! 見てるだけじゃなくてさ、う、わ、死ぬっちゅうねん!」
 案外余裕あるよな、等と思いながらもケインは次の策を練る。
 はっきり言って、この相手と正面からやりあって勝てる見込みはほとんど無い。人数ではこちらが上だが、火力は圧倒的にあちらが上だ。そう判断したからこその、無力化を狙った誘眠スリープだったのだから。
 見た限り、誘眠スリープは失敗しなかったはずだ。
 だとしたら、相手に抵抗されたのかとも思えるが、それも違う。
 抵抗されたなら、見てとれるからだ。対象に大量の眠気を一気に送り込むのだから、対象は例え抵抗出来たとしても、頭を振るとかふらつく等の、なにがしかのリアクションがあるはずなのである。それで当たり前のはずなのだ。――生物相手には。
「……!」
 そこまで考え、ケインは一つの仮説に行き当たった。
 ――生物?
 もし、生物じゃないとするなら、どうなる?
「うわっ、俺の尻尾! ハゲたらどーすんだっ!」
 悲痛なティルの叫びが聞こえてきたが、そもそも元人間のお前さんには不要の長物じゃないかとどーでもいーような感想を漏らす。
 それより。
 どうして俺達はこの女に襲われた? 否、襲われなければならない? 自分達はただ、この森の中で迷っていただけだぞ……?
 ……迷っていた、森?
昨日、ノースが言っていた、古代魔法の、宝珠。
 もし。
 もし、それが本当なら。
「ティル! 受け取れ!」
「おっちゃん! もーちょい右ぃ!」
 ヘタクソォ! と叫びながらもケインの投げた矢筒を何とか受け止めたティルを確認し、ケインは走り出していた。最初に女が現れた方向――すなわち、自分達が向かっていた北を目指して。
「くぉらクソ親父! てめー一人で逃げる気かよぉ!」
 森の緑に映える白衣が森の奥へと走り去る姿を目の端に捉え、ティルは叫んだ。自分も後を追おうとするも、目の前の女に阻まれてそちらへ回る事さえ出来ない。
 ――分かったよ。
「あー、分かったよっ!」
 自棄になりながら、ティルは矢筒から一本の矢を取り出し、精神集中を始める。動きながら集中するのは難しいのだが、そこまでは何とか成功した。一言短かな呪文を唱えると、矢はふわりと空中に浮き上がる。
 伊達にこの魔法ばかり練習してきたわけじゃないと無意味に胸を張りつつ、それを解き放つ瞬間を待つ。動きながらなので狙いが定めにくいが、身体の何処かには当たってくれるだろうとアバウトな予想をし、女が大鎌を振り被る瞬間を待った。
 その時には、両腕が振り上げられるから、身体の正面はがら空きになる。もちろん、振り下ろすスピードも速いのだから勝機は一瞬しかないけれど、身体の小さなティルならその僅かな隙に女の懐に入り込んでしまう事も不可能では無いはずだ。そんな至近距離から射れば、流石に当たるだろう。
 ……と。
 場違いな声が響き渡った。
「わはははははは! 待たせたな犬っころ! 残念だがお前に古代魔法の宝珠は渡さねぇぞ!」
 聞き覚えのある、だが一番聞きたくない声が森中に反響している。そちらを見るまでも無く、相手の方がわざわざティルの視界に飛び込んで来た。
 落ち着いたモスグリーンの髪と灰色の瞳はともかく、何だってその色合いを活かせないのか不思議なぐらい派手な黄色いバンダナを巻き、これでもかというぐらい真っ赤な服を纏った男だ。顔だけ見るなら昨日一緒だったノース=フリップその人であるが、どう見てもアカラサマに別人だ。同じだと言われた方が否定したくなるほど、雰囲気や言葉遣いが違い過ぎる。
 ティルは極力、そんなノース(仮)の方を見ないようにしながら何とか狙いを定めた。幾らなんでも、今はあいつの事を気にしている余裕なんて何処にも無い。
 だが、それが災いした。
 女は一気に間合いを詰め、大鎌を振り被る。それこそ、ティルが待っていた瞬間だった。
 ティルが女の肩辺りに狙いを付け、矢を放とうとした、その時。
「……っつ!」
 左の二の腕に鋭い痛みを感じ、確りと狙いを定める事無く矢はティルのコントロールを外れ、飛んで行ってしまった。しまったと思いながら、次に来るはずの女の攻撃に備えて大きく後ろに跳ぶ。ちらりと痛みを感じた部分に目をやると、少し切れて血が滲んでいた。どうせシトゥルーが吹き矢でも飛ばしたんだろうとどーでもいー結論を出す。あいつは本当に人の邪魔をするのが好きなようだから、この状況でもそれぐらいするだろう。
 その所為で二の腕に巻いていた布が切れ、そこに隠してある紋章が露になっていた。ケイン曰く、それこそがティルの呪いの証であるという、小さな円を中心に、円を取り囲むようにして伸びる二本の曲線からなる血のように赤い色をした、それだけと言ってしまえばそれだけの、簡単な図形。あまりにも簡単すぎて、一体何を表しているものなのかすら、分からない。
「……え?」
 彼がそれを確認していたのは、ほんの一瞬の事である。
 ほんの、刹那の、隙間の時間。
 彼が女に視線を戻した時目にしたものは、ティルのその左腕を凝視している女と、彼女の身体を貫こうとしているティルが飛ばした矢だった。その矢は正確に彼女の身体のど真ん中を貫く。ティルが信じられない気分で見つめている中で、女はゆっくりと膝をついた。
 それを見て、ティルはおっかなびっくり近寄った。確かにさっきまでは何が何だか分からぬうちに攻撃をされていたから応戦しただけであって、最初からこの女を殺してしまうつもりなんて毛頭無い。矢を放ったのだっていわば牽制のようなもので、真逆当たってしまうとは夢にも思っていなかったのである。
 近寄ったは良いものの、一体どうしたものかとおろおろしているティルに向かって、女は初めて口を開いた。
 冷たい無表情を崩さないこの女だからこそ似合う、機械的な無機質な、声。
「……失礼致しました。貴方は、古代魔法の継承者様……でいらっしゃいますね」
「……は?」
 目をまん丸にして、女を見つめる。
 彼女は、一体何を言っているんだろう。
 疑問には思ったが、間違ってもその疑問は口には出さない。勘違いでも何でも良いから、この状況だともう襲われる事は無いと踏んだのだ。
「私は、イリーズと、申します。宝珠の守護者を任されている者。継承者が再び現れるまで、闇の宝珠を守るように先代から仰せつかっておりました。先程までのご無礼、お詫び致します……」
「……は、はぁ……」
 どうにも、こんなに下から話をされると、背中が痒くなって困る。一体誰と勘違いしているのかは知らないが、襲われた理由が分かっただけでも良しとするか、とティルはひっそりと胸を撫で下ろした。
「……あの。継承者継承者って、俺にはさっぱり何の事だか分かんないんだけど……」
 思い切って、その質問をぶつけてみる。その問いに対し、イリーズと名乗った女はあくまでも無機質な無表情を崩さないまま、機械的に答える。
「貴方のその腕の紋章こそが、継承者である証。……そう、私は聞かされています」
「そ、そうなの?」
 聞いていた話とまるで違う、ケインが嘘を吐いているとも思えなかったが、それを言うならイリーズが出会ったばかりの自分に嘘を吐く理由も無い。
「……あの、俺には一体、何が何だか――」
 分からない、と続けようとした。
 だが、その言葉は真に真を突いているものだと気がつき、もう一度飲み込まざるを得なった。
 自分の記憶は、曖昧なのである。
 自分の正体が思い出せない彼としては、イリーズの言っている事を荒唐無稽と頭から否定する事は出来なかった。
 もしかしたら。
 もしかしたら、彼女の言っている事は本当に本当で、その為に記憶を失ったのだと、そういう事もあり得るかもしれないと思ってしまっている彼が何処かにいるのである。
 古代魔法である、闇の宝珠の継承者。呪いを掛けられるに相応しいほどの理由であるように思える。少なくとも、ただの一般市民が呪いなんてそうそう掛けられるものではないだろうとは今のティルでも容易に想像が出来た。
 ――嗚呼。
 自分の事すら確信出来ないというのは、何ともどかしいのだろう。
 口篭ったティルを無表情に見つめながら、イリーズはふと、見づらいものでも見るかのように目を細めた。先程、ティルが放った矢を身体に突き刺したまま。
「あの……大丈夫……?」
 自分でも、間抜けな質問だったと思う。だけど、身体に矢を刺したまま平然とされている方が気になってしょうがないのも事実である。普通の人間だったなら、身体の半分辺りまでは突き刺さっているであろう。
「これぐらいは何ともありません。そもそも私は、少々の事ではダメージを受けないようにプログラムされています」
 一本調子でいとも簡単に答えを返され、俺のクリティカルな当たりも、少々に含まれるわけね、と森に入ってから何度目か分からないため息を漏らした。
「……ぷろぐらむ?」
 聞き慣れない言葉だ。
「はい。私を構成し、私に命令を下すもの」
「はぁ……」
「私の事などより、貴方に掛けられている封印の方が気になりますが」
「封印?」
 呪いの次は封印と来たもんだ。一体自分にはどれだけの特殊な魔法が掛けられているのかと一寸げっそりとしたティルだった。そんな気持ちが現れたのか、彼の嫌っている茶色い犬耳が心なしか垂れているように見える。
「……封印、では無いのでしょうか。少なくとも、私にはそう見えます。……それを解き放つ手段までは知りえませんが……少しでも、手助けするぐらいなら出来るかもしれません」
「封印って言われても、何が何だか」
「このままの状態では、例え宝珠を受け取ったとしてもその力を制御する事が出来ず、暴走させてしまうでしょう。何故、そんな封印を掛けられたのか――貴方の過去を視る事によって、少しは分かるかもしれません」
 貴方自身がそれを望まないのなら、無理強いはしませんが、と守護者は続けた。
 ティルにとっては、そんな宝珠なんて正直どうでも良かったし、大体自分に封印が掛けられているなんて信じ難い事だった。多分、この女が言っているのは、自分やケインが呪いと呼んでいるものと同意だろうと思っていたのである。ただ、その見方言い方を変えただけで、根本的なものは一緒なんじゃないだろうかと。
 だから、そんなものに拘る気は毛頭無かったし、はっきり言って興味も無かった。だが、イリーズの言葉には、聞き流すには勿体無い魅力を持った単語が含まれていた。
 ――過去を、視る。
 その一言に、ティルの心は魅せられていたと言ってもいいだろう。
「……過去を、視る? そんな事が、可能なの?」
「はい。貴方が、そう望めば」
「……どうすれば、良い?」
「こちらへ来て、目を閉じて下さい。後は、私が力を貸します」
 言われるままに彼女へ近寄り、目を閉じる。すると、イリーズの、あんな大鎌を振り回していたとは到底思えない華奢な手がティルの額に触れたのが感じられた。
「過去って一体、いつぐらいの事を?」
 ふと、浮かんだ疑問を口にする。
「貴方が望めば、いつの事でも」
 柔らかいその言葉を最後に、ティルの意識は暗転した。


 ――浮遊感。
 そんな感覚を感じ、ティルは閉じていた目を開く。いや、今自分は目を閉じたままで、いわばこれは夢を見ているようなものだと何処かで認識はしていたのだが、確かに彼は目を開いた、と感じたのだ。
 そこには、ただひたすらな闇だけがあった。見渡す限りの闇、闇、また、闇。これ以上無いというぐらいの真っ暗な世界に彼は一人、ぽつんと存在していた。
 その闇の中に、一点の光が咲いた。彼は何の躊躇いも無くその光に向かって進んで行く。そちらへ行ったら何があるのか、そちらに進んで良いものか、そんな事は分からない。ただ、何となく。それが、今の彼の行動の唯一にして最大の理由だった。上も下も分からない闇の中を進んで行くティルの周りに、ぼんやりとした映像が映っては消え、映っては消えを繰り返して行く。一体どんな映像が映っているのかはっきり確認も出来ないまま消えていくその様を見て、ティルはここが何処なのか、ようやく理解する事が出来た。それならば、自分がそれらの映像をはっきり見る事が出来ない事も、嫌と言うほど納得出来る。今までにだって、何度も何度も、経験している事なのだから。
 ここは、ティルの過去の記憶の中なのだ。
 彼の、心の奥底に鍵を掛けて仕舞われたまま、鍵を無くしてしまった、彼の深層意識の中。何とか開けようと引っ掻き続けこねくり回していた、心の箱の中。
 ふいに、目の前が明るくなった。だが、まだ先程の光には到達していない。それはまだまだ先にあるのだと、ティルは何処かで把握していた。例えるなら、第六感としか言いようが無いような、漠然とした感覚で。
 眼前に広がる光景は、少しセピア色掛かっていた。さも昔の思い出だと主張でもしているように、何もかもが色褪せている。自分自身は忘れてしまっているのに、とティルは少し皮肉に思う。主が思い出せない思い出でも、こんな風に見えるものなのか、と。
 彼がいるのは、何処か洞窟のようだった。
 どうやら自分は上から見下ろしているようで、浮遊感が感じられたのはどうもこの所為であるらしい。自分の精神世界を覗いているわけであるから、重力なんて厄介なものは無いわけで、好きな場所から好きな角度で見る事が出来る、というわけだ、と以外と冷静にこの状況を分析している自分がいる事に気がつく。そしてどうやら、この場所が自分にとって、ここで起きた事を全て見る事が出来るベストポジションだと判断したのだろう、とおまけのように付け加えた。
 今、彼の目には二人の人物が映っていた。洞窟の最後なのか行き止まりなのか、洞窟の奥には壁らしきものが見え、続きがあるという雰囲気では無い。
 だが。
 ティルにとって、そんな事はどうでも良かった。
 視線が泳ぎ、二人の人物に釘付けになる。
 一人は、これでもかと派手な色をしたチェックス。そしてもう一人は、褐色の肌をした、まだ少年と言える範疇に収まるぐらいの歳格好をした人間だ。生き生きと輝く赤と紫のオッドアイが珍しい。
 チェックスの方は思い出せないが、この少年の方はおそらく昔の自分だろう、とティルは漠然と思っていた。いや、悟っていた、と言った方が良いかもしれない。
「ホラ、ティル、お宝はもうわいらのモンやっ!」
 そのチェックスの、種族特有の訛りのある声が響く。
 ……この、光景……。
 ふと、疑問が頭を掠めて行く。
 ……確か、何処かで……?
「そうだね、もう誰もいないし」
 少年は、そう答える。
 ……いつも通りに。
 −―いつも?
 いつもって、一体いつの事だっけ……?
 チェックスは少年に背を向け、さっさと一人で洞窟の奥へと向かう。少年もワンテンポ遅れて負けじとチェックスの後を追う。
 ――見たく、無い。
 唐突に。
 だが、痛切に、そう思った。
 ……この続きは……!
 ……この、後は……ッ!
 何かが、視界の隅で動いたように感じた。
 少年が、チェックスに向かって何かを叫ぶ。
 その言葉に、チェックスは振り返ろうとし――。
 ――トスッ。
 言葉で表すと、そんな軽い音。
 あまりにも軽いのに、あまりにも響く、音。
 少年が瞬間硬直し、チェックスの元へと駆け寄る。
 先程と同じ言葉を叫び続けながら。
 多分彼は、チェックスの名前を呼んでいたのだろうと、ティルは思った。そう、頭の何処かで、理解していた。
 チェックスの鳥特有の分厚い胸には。
 一本の矢が、突き立っていた。
 ――致命傷。
 誰が見たってそう思うほど正確に、そして深くその矢は突き刺さっている。チェックスでなければ貫通していたかもしれないぐらい、その傷は深い。
 ……これは。
 これは、いつもの夢の、続きだ。
 ぼんやりと二人を見下ろしながら、ティルはそう結論を出していた。
 ……これが、俺が望んだ場面なのか?
 ――どうして?
 少年はチェックスを床に寝かせ、矢の飛んで来た方向を睨み付ける。左手には今し方抜き放ったナイフを構え、右手は変わった形をしたロザリオに触れている。薄い紫色の蛇が巻きついた、黒い十字架に。
 また、視界の隅で何かが動く。
 ――あれは。
 それは、少年の後ろから飛んで来た。
 ひゅっという風を切る音に反応し、振り向き様左手のナイフで矢を弾き落とす。カラン、という軽い音と共に転がったそれには、肝心の矢尻が付いていなかった。
 それに気付いたのだろう、少年が一瞬不思議そうな表情を浮かべ、その注意が矢にそれたその瞬間。
 もう一本の矢が、背後から飛んで来たのだ。少年が気が付いた時はもう、矢はすぐそこまで迫っていた。条件反射だろう、それに気付いた少年は振り返ろうとし、その勢いでロザリオが大きく揺れる。
 予想に反して、金属と金属が触れ合ったような、パキーンという甲高い音だった。
 次の瞬間、辺りが真っ白な光に包まれる。
 最後にティルが確認出来たのは、驚愕の表情を浮かべた少年と、視界の隅ではためいた、白衣の裾だけだった。

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