ばたばたと、争っているような音が聞こえる。
 未だに胸にチクチクと居座る嫌な予感。
 まさか、それが的中したのではと焦りを覚えながら、コハクはオズがいるブリッジのドアを乱暴に引き開けた。
「オズさん……ッ!」
「うわッ!一体何処に隠れてたんだよ!」
「……オズ、さん……?」
 ばさばさと、風を切る音。笑い顔を浮かべて、黒い鳥を追い掛け回している少年の姿を見、コハクは「アレ?」という表情で顔を一杯にして固まってしまう。
 興奮して纏わり付いてくる黒い鳥を何とか宥めた後。少年は、彼がそこにいるのに初めて気がついた、とでも言うように小首を傾げ、きょとんとした顔をして問う。
「どうか、した?」
「……いえ……。叫び声が聞こえたもので、何かあったんじゃないかと」
 ほっとするやら気落ちするやらで、ぼそっと言ったコハクの言葉に対し。
「ああ。ドロシーが乗ってるなんて思わなかったから。コイツ、一体いつの間に潜り込んでたんだろう」
 右腕に止まったカラスを見、人差し指で喉の辺りを撫でながら言う。カラスはされるがままで、気持ち良さそうに目を閉じていた。


 ……ったく。
 ヒマ人ばっかじゃねぇか。
 わいわいと飛行船盗難事件のビラを手に取ろうと集まる人々を冷めた視線で見つめながら、フェリルは心の中で呟いた。
 最新鋭の飛行船、『アークウィンド』を盗むとはね。
 思ったよりも、無茶するんじゃねぇか。
「……ま。俺にゃ関係の無い事だけどな」
 口に出して呟くと、彼女はくるりと人の輪に背を向け、早足で歩き出した。そもそも、人が沢山いる場所というのはあまり長居したいと思うような場所では無い。
 かと言って、ケインやエリザがいる宿にもすぐに帰る気が起きず、一体どうやって時間を潰したものかとフェリルは空を仰いだ。立ち止まり、見上げた空はどんよりと曇っていて、それがまた一段と彼女の心を重たい気持ちにさせる。
 この空の何処かを、アイツラは飛んでるんだろうな。
 ふとそんな事を考える。

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