† 生きる、この瞬間に †

指を少し、動かしてみる。
痛みを感じない。
何か動かしてみたかっただけ。
エリーナは小さく、溜め息をつく。
不規則な動きをする自分の臓腑の音しか聞こえない。

妙に生温い、嫌な夢でも見たのかと思った。
しかし、何時見ても自分の『それ』はただ気味悪く動く。
死にたくても、死なない。
死にたくても、死なせてはくれない。
昔のように、みんなと笑っては過ごせない。
今の自分の体は、もう人間の体では無いのだから。

こんな体になって、もう何日になるだろう。
彼女は太陽の動きも見えない部屋で、ずっと思っていた。
自分の大切な妹、ニーナは、父親は、人々は・・・。
クレイは大丈夫かしら、と彼女は思う。
心配してくれるのか、心配していないのか。
助けに来てくれるのか、来てくれないのか。
エリーナは小さく笑うと、また自分の下半身の方に目をやる。

こんな体で、もう生きたくない。


「・・・・・成長、しましたね。」
紫色の耳を持つユンナが、エリーナを見て笑う。
彼女は彼を刺激しない用に、睨んでみる。
ユンナは何事もなかったように、また妖しく笑った。
「貴方に報告しておきましょうか。」
エリーナを『人』として見ていないユンナ。
彼女の体を変えたのも、彼。
彼は子供に物語を聞かせる様な顔で、エリーナを見る。
「貴方を助けようとして、どこぞのネズミが入り込んだんですよ。」
ユンナはエリーナを見下しながら、話す。
「もう、ここから出して帰したんですが。青い髪に不思議な瞳をした男、鎧を被った種族も性別も分からない者。」
エリーナの知り合いの中で、当てはまる者は居なかった。
彼女は誰だろう、と考えてみる。
そんな事をお構いなしに、ユンナは話を続ける。
「そして、貴方に似た飛翼族の少女。」
エリーナの顔は驚きの顔に変わる。
ニーナが、自分のためにここまで来てくれたのだろうか。
彼女は少し涙目になる。
「最後に。フーレン族の族長さんもいましたよ。」
クレイ。
彼女の口から、小さく声が漏れた。
クレイが、私のために。
「貴方の姿を見て、彼は驚くでしょうね・・・・。」
『彼』は複数形ではない。
ユンナはわざと、『彼』=クレイという事を言わなかった。
エリーナもすぐに現実に戻り、ユンナを睨む。
ユンナの言葉の『彼』が誰をさしているのか、彼女自身聞きたくなかった。
その言葉の意味を、キチンと理解していたから。
ユンナは少し笑うと、どこかに消えてしまった。


エリーナは、目を瞑る。
今までの悪夢が全て昨日のように感じる。
彼女は目を開け、クレイを見た。
目の前には、自分の体を見て驚いているクレイだけ。

クレイにはキチンと自分から知らせておこうを思っていた。
自分の、これからの事も。
けれど、ユンナが勝手に彼女の体について話してしまった。
話した後・・・結局ユンナはどこかに消え、最初のように二人だけになった。

「クレイ・・・。」
エリーナには、クレイが泣いているように見えた。
彼女は、そんな彼に強がって笑って見せる。
クレイは彼女の傍に行く。
片手には、美しく光り、神を斬る剣を持って。
「エリーナ・・・なんで・・・。」
自分の想いをまだ、キチンと伝えていない。
まだ、相手の想いもキチンと聞いていない。
それは、クレイもエリーナも同じ。
「クレイ・・・」
彼女は目に涙を溜めて、自分の好きな人の為に笑う。
「これからも・・・ニーナを宜しくね。」
彼女の手は、彼の頬を優しく、包む。
「さようなら。クレイの気持ち、きっと無駄にしないから。」
そんな彼女の顔を見て、クレイは切なくなって。
1つ、1つ。彼の目から涙が落ちる。
「私も、クレイが好きよ。」
彼女はそう言うと、彼の唇と自分の唇を重ねた。
優しく、そして長く。

クレイが目を開けると、エリーナはもう静かに笑っていた。
彼女の、自分の決心はついた。
クレイは、泣きながらも彼女のために、彼女の願いを叶えるために剣を強く握る。

彼女は、ただ目を瞑っていた。
目を開けたら、自分の大切な人の心の悲しみを見てしまうから。
流れる涙を、もう見たくないから。

痛みなんて、きっと感じない。
次に目を開くときは、光りの中。

クレイが強く握っている剣の刃は、一瞬2人を包むように、優しく淡く光った。
次にはその剣は鈍く、赤い色の光りに変わる。


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クレイ×エリーナ。
泣けるかな?この小説。
友達に行ったら結構しんみりになってしまったけど・・・。
この2人、大好き。
これから、ずっと、幸せになってほしかった。
安らかに眠って。エリーナ。


バックミュージック
〜  シークレット オブ マイ ハート 〜(作者様より)