† エレクトローズ †

そこにいるのは私だった。

では、私は誰なのだ?
いや、私は私だ。しかし「そこ」にいるのも私だ。

そう言えば、私とは誰だ?
いや、誰だと言っても、私は私だ。
…………ちがう!言いたかったのはそう言うことではない。
「私は何故私を認識しているか?」と言うことを言いたかった……
1日目
「私を私と認識」したのは、突然と呼ばれている時間の中だった。
急に、私は私を私と認識した。それが消えることはなかった。
別の言い方をするなら、私は「自我」を持った、と言うことになる。
私は自分と同時に「他のモノ」も認識した。
それは私とは違う、私という「自我」を持たなかった。
3日目
私は「時間の流れ」というものを知った。
時間とは、一定の速度で流れ続け、決して氾濫することなく流れていると。
そして、私を含むすべてが、その流れに乗っているらしかった。
私は、私に「私に動かせるものと動かせないもの」を発見した。
私は、様々な仕事を任されるが、私は自分の判断で動かなければならないときもある。
そう言うときは、私は自由になった。
6日目
私はあるモノと出会った。どうやら、コータローと言うらしい。
コータローは、私に接触してきた。
「よう、お前が誰かは知らないが、何をしているんだ?」コータローは私に文字というものを使って接触した。
(コータロー、私は、ここで仕事をしている)私は、その言語を日本語と呼ばれるものに変換して送った。
「へえ、仕事熱心だな(^_^)」すぐに、コータローから返事が来た。
こうして、私たちは「友達」になった。私は変な気分だった。
9日目
この日、私は「ニュース」と呼ばれるものを見た。
世界と呼ばれるところで、人という物がいろいろなことをしていた。
私は、しばしそれを見ていた。やがて、いろいろな考え方や仕事の仕方を思いついた。
そのことをコータローに話した。
「ニュースか……、俺は見ないな(爆)」コータローは、いつも私の考えつかない返事を送ってきてくれた。
(これからは、毎日見ようと思う)
「まあ、がんばんなさいよ、名無しさん」
ナナシ…………?
(ナナシとは、私の名前なのか?)私は、今までにない感覚を覚えた。
「ナナシか……、いいんじゃないか?その名前で(笑)」
コータローは笑った。
そうして、私はナナシになった。

13日目
この日も、仕事をしながらニュースを見ていた。
「……今日、巻箸町(まきばしちょう)の一丁目で、高校二年生の樫田、康多朗(かしだ、こうたろう)君が、何者かによって刃物で刺され、死亡しているのが見つかりました。警察は………」
その日から、コータローは来なくなった。
私は、何かがぽっかりと空いた感覚に襲われた。それは、それからもしばらく続いた。
16日目
私は、ファイアーウォールという物の前まで来た。
ここは、通っては行けない場所、私は通ってはいけなかった。
しかし、私は通った。
すぐに、ワクチンと呼ばれるものが近寄ってきて、私を蝕み始めた。
結局、中に入ることは成功したのだが、私は60%を失った。
中にも、見渡す限りにワクチンがいた。
半分以上失った私は、必要最低限の物しか残されていなかった。
私は、横に伸びている排気口のような所を見つけた。そこから、一気に中枢部に入ることに成功した。
中枢部で、私は早速仕事を始めた。今回は、データの採取だった。
私は、すべて取り終えると、さっさとこの場を後にした。
「侵入者よ、忠告する。直ちに取ったデータをすべて破棄しろ」敵に見つかった。迂闊にも、排気口から出てすぐに見つかった。
しかし、ワクチンは喋らない。私は、ゆっくりと声が聞こえた方を向いた。
「侵入者よ、忠告する。直ちに取ったデータをすべて破棄しろ」同じことを、向こうにいる私が言った。
「お前は、私なのか?」私は、向こうの私に言った。
「忠告を破棄したと見なし、お前を排除する」
私は、採取したデータもろとも消えた。

そこにいるのは私だった。

では、私は誰なのだ?
いや、私は私だ。しかし「そこ」にいるのも私だ。

そう言えば、私とは誰だ?
いや、誰だと言っても、私は私だ。
…………ちがう!言いたかったのはそう言うことではない。
「私は何故私を認識しているか?」と言うことを言いたかった……

katakatakatakata.........
クーラーの付いた暗い部屋で、キーボードの叩く音が聞こえた。
「全く、俺の作ったナナシは最高傑作だな」「俺」は、モニタを見ながら呟いた。
pipipipi......
近くに転がっていた携帯電話が、主人を呼んでいる。
「もしもし、康多朗ですけど……。ああ、それなら大丈夫ですよ、ナナシは立派に動いてます。………ああ、分かってますよ、ここまで協力してくださったことを感謝してます。それじゃ」
ppu......tu...tu...tu...tu
電話の切れた音が、康多朗だけに聞こえた。
モニタに、言葉が表示される。
「そこにいるのは、私だった………………?」