ギター教室 その1

★準備

フラメンコギターを弾くのだから、まずギターを用意しなければならない。
近くにフラメンコをやる人がいれば、古いギターを貰えないかどうか交渉しよう。
昔からやっている人なら古いギターの1本や2本は持っているはず。
アルカンヘル・フェルナンデス」とか「ドミンゴ・エステソ」程度のもので良い。
「これ、くれませんか?」
「ああ、いいよ」
気前の良い先輩なら、当然このような会話が交されるはずである。

お金が用意できる人は、フラメンコギターを買ってしまおう。
「こんなに高いギターを買ったのだから上手になるまで頑張るぞ。」
このように考える方もいるかも知れない。

☆賢いフラメンコギターの買い方
フラメンコギターを始めようと思うときの最初のハードルはお金である。
フラメンコギターって、いくらぐらいするもんでしょう。
そうね100万くらいかな
たいていの人は、この時点でフラメンコギターを始めることをあきらめる。

 本当にやる気があるなら、質問を変えよう。
 「いくらぐらいのギターを買ったら良いでしょうか。」
 もちろん、もっと安いギターも売っている。
 「あなたの予算の許す限り高いギターを買いなさい」
 フラメンコに限らずギターの初心者に言う、昔から決まっているセリフである。
 値段の高いギターが良い音がするわけではないが、良い音のギターは高い。
 店に聞くと否定するが、作った後から値段を決めているのではなかろうかと筆者は疑っている。
 ギターというものは、厄介なことに1本1本音が違う。
 よりリーズナブルで音の良いギターが欲しいなら、ギターをある程度弾ける経験者と一緒にお店に行って探す。
 その際、必ず実際に自分で弾いてみてから買うかどうか決めること。
 どんな初心者でも、自分で納得できなければ買ってはいけない。これが鉄則である。

 東京なら、「フォルテ楽器」、「アウラ」、「プリメラ」が3大有名店。
 多少キズがあっても気にしない血液型がA型以外の人なら、中古品も検討しよう。
 新品に比べて格安で入手できる。

☆クラシックギターの改造
 家がとっても貧乏で、明日の食べ物にも困っている場合は別の方法もある。
 家のどこかに古いギターが眠っていないだろうか。
 フラメンコギターにリニューアルしてみよう。

 まず、弦はすべて取り払う。
 テニスのラケットではないので、ハサミでチョキチョキと切るなどはしない。
 面倒でもぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりとねじを緩めてから、取り外す。
 不精な人のためにねじを回す小物も売っている。(図)

 弦の下のサウンドホール回りは汚れているので、ぞうきんできれいに磨いておく。
 フラメンコ奏法ではむしゃくしゃする時に、ゴルペと言ってギターを乱暴に叩くことがある。
 叩いてもキズがつかないように薄いセルロイド(プラスチック)板をホールの周囲に貼り付ける。
 ゴルペ板と呼ぶ。
 昔は学校で使う白い下敷きを使ったもんだが、今は透明なものが流行りらしい。
 貼るときに両面テープを使うのは邪道である。
 接着剤を均一に塗り、端からゆっくりと貼って行く。
 表面板とゴルペ板の間に気泡が入ると、見苦しい感じになる。

 次に、ブリッジに付いているサドルを削り弦の高さを調整する。
 サドルとは、弦の高さを決めるプラスチックの板のこと。
 つまり、穴のそばの弦を引っ張っている板に付いているプラスチックの底を削って、弦を低くするわけである。
 音に適当なビビリが入り、ジャリジャリと金属的で歯切れ良く緊張感のある音になる。

 これで一応フラメンコギターが誕生した。
 どうしてもフラメンコギターに見えない場合は、白いペンキか何かで表面に「Flamenco」とサインすれば良い。
 だれも文句は言わなくなるであろう。


☆ギター弦
 フラメンコ用の弦は丈夫な「たこ糸」か、繊細な音を求めるなら「絹糸」を使う。
 手元にそういう適当なものがないときはしかたないので、フラメンコ用ギター弦を使う。
 インターネットで「アウラ」などをのぞくと、たくさんの種類の弦が出ている。
 厳密にいうと、ギターと弦の相性みたいなものがあるようだ。
 フラメンコ用では「ルシエール」が一番売れているらしいので、筆者はこれを使っている。

 【追記】 2007年2月
 その後、高音側(1、2、3弦)を「ルシエール」、低音側(4、5、6弦)を昔から使っていた「サバレス」の赤に変えた。
 「サバレス」は中低音が柔らかい独特の音が気に入っていたため。
 ルシエールもサバレスも4弦が切れ易い。
 「プロアルテ」のコンポジットが良いとの噂を聞き、これに変えてみたところ、なかなか良い。
 ちょっとドスの効いた感じの低音で、いわばアメリカ的な音になり、しかも丈夫で長持ちする。
 コンポジットはセットで3弦が2種類入っており、割高になっている。
 バラ売りがある普通のプロアルテも、音は似たような感じで他の弦より長持ちするようだ。
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 弦を張ったら音を合わせよう。
 自分ひとりでこっそり弾いて楽しむだけなら調弦は必要ないが、他人に聴かせるのであればやったほうが無難であろう。
 実はこれが結構難しい作業なのだ。
 自分ではバッチリ合わせたつもりでも、「キミ音が狂ってるよ」などと言われると不安になる。
 「サビーネ」のギターチューナーなどを使って、心の平穏を得る方法もお勧めする。(図)
 コンサート会場など周囲がうるさい場所でも、LEDだけで音を合わせられるので便利。

 ギターの弦は、なぜか圧倒的に4弦が切れやすい。
 なぜ中間の太さの4弦が切れるのだろうか。
 サラリーマン社会でも中間管理職は上から押さえつけられ、下からはつき上げられてストレスが溜まる。
 突然、キレたりしても不思議はない。それと同じようなものかな。

☆つめの手入れ
 あなたがたいへん丈夫な爪の持ち主ならご両親に感謝しよう。
 そうでない普通の人がフラメンコギターを弾くには爪の保護が不可欠である。
 いろんな方法があるようだが、ここでは瞬間接着剤を使う方法を紹介する。
 結果について筆者は一切責任を負わないことを、最初に断っておく。

 まず、釣り用速乾型のアロンアルファを用意する。
        (釣り用のアロンアルファは釣具店で購入できる)
 これを、右手の爪の前側半分だけに、そっと塗る。
 爪の健康のため後ろ半分は残しておくのである。
 1回塗って10分くらい乾かして、もう一度塗る。
 弦が当たる左側面には厚めに塗る。
 ラスゲアードを多用する場合は何回が重ね塗りする。
 最初は爪がポカポカするようで気になるが、そのうちに慣れる。
 塗りっぱなしでは爪に悪いので、1週間に2、3日は爪を休ませる。
 2、3日すると爪の先端部分が浮いて来るので、小さなドライバーなどで剥がしてしまう。
 筆者は眼鏡用ドライバーの先端をやすりで薄くしたものを使っている。
 無理に剥がすと爪を傷つけるので気をつけよう。

 歯科用の接着剤を使ったりと、いろいろな方法があるようだ。
 アロンアルファ方式は安くて手軽なのが利点。
 爪の質にもいろいろあるので、接着剤が剥がれにくい人もいるかも知れない。
 どんな方法でも爪に負担がかかるのは避けられないので、必要悪と思って割り切るしかない。

☆カポタスト
 人間でも首を締めると「きゃゃー」とか「ひぇぇー」と高い声になってしまう。
 ギターも同じで、音を高くするために首を締める
 「カポタスト」という何となく響きも残虐な感じの道具を使うのだ。(図)
 これは、フレットに取り付けて弦を挟み込み、音程を上げて移調する道具のこと。
 踊りの伴奏をするときに、カンテの音程に合わせるために使う。
 フラメンコでは単に音を軽く、賑やかにするためにも使う。
 いろんな種類があるが、木製のものが軽いフラメンコギターには合うようだ。
 ねじに相当する頭の部分が、ぎゅっと締まるものを買おう。
 ひもが切れたら、ギターの3弦で作る。
 このためにも、取り替えた古い3弦は残しておこう。

 [木製カポタスト究極の秘儀]
 カポタストは現在、ドイツ製のクリップ型ワンタッチ式のものが主流のようだ。
 フレットの場所を変えるのも簡単なので、これからカポタストを買おうという人にはお勧めする。

 ここでは木製のカポタストをしつこく使い続けているあなたのために、「門外不出の秘儀」を伝授しよう。
 木製カポタストの欠点はなんといっても締まりが悪いことであろう。
 なかなかギュッと止まらないし、へたをすると演奏途中でガバッと外れてしまうことさえある。
 そこで登場するのが爪の保護にも出てきた接着剤「アロンアルファ」だ。
 これをねじ部のオス側と、穴のメス側に均等に塗る。
 塗ってすぐに差し込むと永久に取れなくなってしまうので、できれば良く乾いてから使う方が良い。
 「釣り用アロンアルファ」は粘度が低いので、筆者は普通に売っている「ハイスピードEX」というのを使用している。
 程よく締まり、木が欠けることもなくなって長持ちするようだ。
 もう5年以上も使用しているが、特に不都合はないので良い方法と思う。

 この方法は木製ペグのギターにも応用できるかも知れない。
 ギターは高価なので、試す場合は自己責任でお願いしたい。  (2008年11月追記)

☆ゴルペについて
 興奮すると人は物(や人)を叩きたくなる。
 フラメンコでは最近カホンという太鼓がハバをきかせているが、そんなものがなくてもギターを叩けば良い。
 右手薬指や小指でギターの表面を打ち、コンコン、ドンドンという音を出す。
 親指や人差し指で弦を弾きながら叩いたり、調子を取るのに単独で使ったりする。
 叩いてもギターが傷つかないように、フラメンコギターにはゴルペ板というものが貼ってある。

 その2へ続く(前置きはこれくらいにして実技に入ろう)
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