むかし だーれも知らない森の奥に
月のしずくが ポタリ・・・ とおちてきました。

そして そこから小さな小さな芽がでてきました。

小さな芽は 月の光をあびて 少しづつ 少しづつ大きくなっていきました。

森の動物たちは 花が咲くのを
いまか いまかと待っていました。

でも花は なかなか咲きませんでした。


いつしか動物たちは 自分の子供たちに

「月の花が咲くのをみたい。月の花が咲くのをみておくれ。」

と 言い伝えていくようになりました。

何年も 何十年も 何百年もたちました。


やがて
緑深く美しかった森も
人間たちが増え
自然の開発が進むと
昔のような姿でいることが 難しくなってきました。

森の動物たちの悲しみは
深くなっていきました。

いつものように
月の花の周りにみんなが集まって
嘆いていたときのことです。

満月がひときわ美しく輝きだすと 
月の光は 小さな花に
降りそそぎはじめました。

あたり一面が光につつまれ

ちいさな花は
しずかに しずかに 一枚 一枚の花びらを
ひらきはじめたのです。

その美しさは この世のものとは思えませんでした。

動物たちは なにも言えず
ただ美しい花をみつめていました。


そのとき うさぎのおかあさんがいいました。

「この森の平和が いつまでもつづきますように・・・・」


うさぎの子供もいいました。

「いつまでも みんなが仲良くいられますように!」


願いをきいた月の花は
いっそう美しく輝きだしました。

光が辺りをつつみはじめると
みんなは
明るく幸せな気持ちになりました。


月の花は
今でも枯れることなく咲いています。

そうして
静かに優しく輝き続けているのです。

もちろん
森の動物たちは
仲良く幸せに暮らしていますよ。




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