
ある日、おばあちゃんが言いました。
「自分ちのお風呂に入ろうかねえ~」
え!!
お風呂屋さんでなくていいの?
具合でも悪いの?
などなど周りの憶測は飛び交います。
なんといってもおばあちゃんは、何十年ものお風呂屋さん通い。
お風呂仲間とのなが~い歴史があるんですから・・
それを急にやめるなんて誰も信じられませんでした。
でもおばあちゃんは、すっきり決めたらしく
なにも言いません。
では、ということで
ガス器具の工事から始まり・・
お風呂の準備は進みます。
おばあちゃん、こだわりの懐かしい木の椅子も探しました。
準備OK!!
すべてOK!
後は入るだけっと!
張り切ってお風呂を沸かしたけれど
なぜかおばあちゃんは入ってくれません。
服を途中までは、脱いだけど・・・
湯船の前に立ち・・
ジーッと立ち尽くし・・
「ん~・・まぁ、いいや・・」と・・・
脱いだ服を、ゆっくり着て部屋に戻ってしまいました。
いろいろ聞いたけど、
なんにも教えてくれないし・・
やっぱり銭湯がいいのかな~・・
そのまま話はうやむやに・・
ところが!!!!
忘れたころに、おばあちゃんが言いました。
「お風呂に入ろうかねえ~」
え~!!???
どうしたの~?おばあちゃん?
ただ、驚いただけで
だ~れもおばあちゃんの心に気がつきもせず・・
気がつこうともせずに・・
ある日
おばあちゃんが
ヘルパーさんに言ったそうです。
足元が危ないから
今まで空のお風呂に、木の椅子を置き
またいで湯船に入る練習をしていたんですよ。
そうだったの~おばあちゃん!!
誰もそんなことは、思いもしない・・
おばあちゃんの気ままなのか・・?
な~んて、みんな納得していたのに・・
なんと一ヶ月近く練習をしていたなんて!
私たちは、無意識に
手をかして支えて
お風呂に入ればいいと思っていたんですね。
おばあちゃんは、人に頼らない心がけ
ごめんね~~おばあちゃん。
気がつかなかった。
やっぱり、おばあちゃん!
さすが明治の女!
昭和の私たちは、足元にも及びませんよ~~
一同、心から・・
参りました。

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