代表質問 質問答弁全文 平成15年第1回定例会


1 教育と治安の所見について   

 戦後の目覚ましい発展を遂げた我が国を取り巻く現在の状況を見てみますと,経済,社会の激しい変化の中で,出口の見えない混迷の中に入り込んだ感があります。この難局を乗り越え,日本の再生を実現させるためには,数々の見直しや改革が必要であることは言うまでもありません。
 迷ったときには原点に返るということで,私は,ある意味で,近代日本をつくる原動力,日本人の精神のバックボーンとなった2冊の本を改めて読み直しました。一冊は,幕臣中村正直の『西国立志編』,もう一冊は,福沢諭吉の『学問のすすめ』であります。
 『西国立志編』は,「天はみずから助くる者を助く」という,自主自立,自助の精神を説いた本であり,『学問のすすめ』は,「天は人の上に人をつくらず,人の下に人をつくらず」という国民平等や自主独立の精神を説いた本でありまして,いずれも,みずからの努力の大切さを説き,その努力が報われる社会の構築を図り,もって国家の発展を目指したものであります。
 明治初期に出版されたこの2冊の本は,人口が3,500万人であった当時,ともに100万部を超えるベストセラーであり,日本人の精神形成に大きな影響があったと言われております。
 福沢は,知恵によって立つこと,中村は,徳によって立つことの大切さをそれぞれ教え,近代化を進める明治期の政府と人々の目指すべき方向に大きな示唆を与えました。
 日本の成長,発展とともに,二人の説く,勤勉,正直,礼儀,質素倹約,他人への心遣いなどが,日本人の心,精神の核としてはぐくまれ,醸成されていったのではないでしょうか。
 第二次大戦後の疲弊した経済の驚異的な復興,社会の立て直しは,まさにこの精神によってなし遂げられたものであり,二人の思想は,日本が成長,発展する上で大きな力となったと言えます。
 西欧社会へのキャッチアップを目指し,経済的な豊かさを追い求めた結果,私たちは確かに生活水準の向上など多くのものを得ました。しかし,余りの効率一辺倒の陰で,他人への思いやりや信頼,企業としてのモラル,地域社会の結びつきなどが軽んじられ,今や風前のともしびとなっております。
 物があふれた豊かな社会の中で,自分を見失わず,心の豊かさを取り戻すためには,いま一度,日本人の精神をつくった原点に立ち返ることが大切ではないかと痛感しております。
 こうした私なりの思いを念頭に置いて,教育行政,警察行政について質問を進めてまいります。
 初めに,教育と治安の所見について,知事にお伺いをいたします。
 人をつくる教育,そして,地域を守る治安は,社会の安定を生み出す県民共有の財産であり,基盤であります。地域を再生,発展させるためには,家庭や学校,地域の持つ教育する力,社会の安定をつくり出す力を再認識し,これを充実する必要があると考えます。
 そこで,まず初めに,県政運営のリーダーとして,知事は,社会の再生と発展を図る上で,教育,そして,治安の果たす役割についてどのような考えを持っておられるのか,御所見をお伺いするものであります。

 橋本知事

 教育と治安の果たす役割についてのお尋ねでございますが,私は,教育と治安は,国や社会の存立を支える極めて重要な要素であり,よい社会はよい教育によってつくられ,良好な治安なしには社会の発展もあり得ないものと考えております。
 しかるに,教育につきましては,現在,子供たちの学力低下や規範意識の低下,さらには,社会性や自律性の欠如などが大きな課題となっており,日本の将来を考えますと,大変由々しき状況にあると考えております。
 このため,本県におきましては,全国に先駆け,茨城方式の少人数教育により,学力の向上や社会性の涵養に努めますとともに,学校や家庭,地域において,お手伝い,社会体験,自然体験,道徳,読書等を奨励し,郷土を愛し,社会の一員として生きる,心豊かな,元気でたくましい子供たちの育成に努めているところでございます。
 豊かな社会を築いて次世代に引き継いでいくことは我々の責務であり,今後,より一層,学校・家庭・地域社会がおのおのの教育力を高めるとともに,相互に連携し,社会全体で教育に取り組み,茨城のさらなる発展を図っていくことが大切であると考えております。
 また,治安につきましては,犯罪が多発し,刑法犯の認知件数が8年連続で過去最高を更新するなど,極めて憂慮すべき状況にあります。
 犯罪多発の要因としてはさまざまなものが挙げられますが,特に社会環境が大きく変わり,かつて我が国の地域社会が有していた連帯感や公序良俗が失われ,その結果,犯罪抑止機能が低下したことなどが大きく影響しているものと考えられます。
 このため,警察官の増員や装備機材の充実を図るほか,犯罪の抑制に向けた各種の施策を推進しているところでございます。
 しかしながら,治安の回復には良好な地域社会の再生が極めて重要であり,また,犯罪抑止のための警察活動にとっても,地域住民の協力は必要不可欠なものと考えております。
 こうしたことから,県民,行政,事業者,関係団体等が一体となった安全なまちづくりを総合的に推進するため,茨城県安全なまちづくり条例を本定例会に提案し,犯罪のない,安心して暮らせる地域社会の実現に努めてまいる所存でございます。
 私は,社会の再生と発展を図る上で,教育や治安の果たす役割は極めて大きいものと考えております。


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