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掲載日 2009/03/09
はじめに
いわるゆ「フランチャイズ・システム」を活用した事業形態は、近年、コンビニ業界やファーストフード、外食産業にとどまらず、各種のサービス業まで広範な分野において活用されはじめています。
フランチャイズ・システムを活用した事業形態では、「フランチャイザー」(実務では、「本部」又は単に「ザー」という称呼も使われています。)と「フランチャイジー」(実務では、「加盟者」又は単に「ジー」という称呼も使われています。)という2者のプレイヤーが登場しますが、このフランチャイズ・システムは、本部にとっては、他人の資本・人材等を活用して比較的短期間での迅速な事業展開が可能になるというメリットがあり、一方、加盟者にとっては、本部が提供する統一されたブランド・ノウハウ等を活用することにより、独立・開業が比較的容易となり、また、市場における競争力を強化できるというメリットがあります。そのため、今後ますます、広範な分野での、フランチャイズ・システムを有効活用した新ビジネスの展開と、それに伴う多くの事業者の新規参入が予想されています。また、当該市場における競争の活性化も期待されるところです。
しかしながら、その一方で、フランチャイズ・システムを用いた事業活動の増加に伴い、従来から、本部と加盟者との契約関係において様々な問題が発生しており、とりわけ独占禁止法上の問題が指摘されることも少なくありません【注】。「コンプライアンス(遵法)経営」とか「企業の社会的責任」などと言われて久しいですが、どのようなビジネスであっても、それを遂行する上での「ルール」があり、その「ルール」を守ることは最低限のモラル(倫理観)の問題です。フランチャイズビジネスを展開する上でも、一般的なビジネスのルールの他に、「特有のルール」があります。
【注】そのため、公正取引委員会では、本部と加盟者との取引において、どのような行為が独占禁止法上問題となりうるかについて具体的に明らかにすることにより、本部の独占禁止法違反行為の未然防止とその適切な事業活動の展開に役立てるために、『フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について』を策定・公表しています。本コラムの記述も、かかる『フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について』を参考にしています。
本コラムでは、このフランチャイズビジネスに特有のルールを紹介しながら、「フランチャイズ契約書」の作成にあたっての若干の留意点についても触れていきます。
フランチャイズビジネスにおけるルール
フランチャイズ・システムにおいては、本部と加盟者とがいわゆる「フランチャイズ契約書」を締結し、この契約に基づいて、両者の基本的な取引関係が形成されます。
ここで「フランチャイズ・システム」とは、一般的には、「本部が加盟者に対して、特定の商標、商号等を使用する権利を与えるとともに、加盟者の物品販売、サービス提供その他の事業・経営について、統一的な方法で統制、指導、援助を行い、これらの対価として加盟者が本部に金銭を支払う事業形態である」とされています【注1】。
概ね、次の特徴を備える事業形態がこれに該当します【注2】。
① 加盟者が本部の商標、商号等を使用し営業することの許諾に関するもの。
② 営業に対する第三者の統一的イメージを確保し、加盟者の営業を維持するための加盟者の統制、指導等に関するもの。
③上記に関連した対価の支払に関するもの。
④ フランチャイズ契約の終了に関するもの。
【注1】そのため「フランチャイズ契約」とは、フランチャイザーがフランチャイジーに対して、特定のブランド(商標や商号)等を使用する権利を与えるとともに、フランチャイジーの物品販売、サービス提供その他の事業・経営について、統一的な方法でそのノウハウを提供し、これらの対価として、フランチャイジーがフランチャイザーに一定の金銭を支払うことを約する契約をいう、と定義できます。
【注2】フランチャイズ契約書においても、この①~④の事項が、その中心的内容となります。
フランチャイズ契約においては、実際のところ、その基本的・継続的取引関係が、本部サイドがあらかじめ作成した定型的な約款(契約書)に基づいて形成されることが多く、加盟者は、本部の確立した営業戦略、統一的な指導体制といった包括的なシステムに組み込まれることになります。そのため、加盟希望者の当該システムへの加盟に当たって、加盟希望者の主体的な判断が適正に行われることがとりわけ重要になります。そこで、加盟者の募集に際しては、本部は、加盟希望者に対して、十分な情報を開示することが望ましいといえます。また、フランチャイズ契約は、「継続的な」取引関係を念頭に入れて締結されるものですから、契約締結後の本部と加盟者との取引においても、加盟者に一方的に不利益を与えたり、加盟者のみを不当に拘束するものであってはならない点に留意する必要があります。
本部の加盟者募集に関するルール
独占禁止法違反行為の未然防止の観点からも、加盟希望者の適正な判断に資するよう、本部は、加盟者の募集に当たり、次のような事項について情報を的確に開示することが望ましいとされています。この際、本部は、加盟希望者が契約締結について十分な検討を行うために必要な期間を設けると同時に、次の重要事項について、これを書面化して相手方に交付し、説明することがより望ましいといえるでしょう【注1・2】。
加盟後の商品等の供給条件に関する事項(仕入先の推奨制度等)
加盟者に対する事業活動上の指導の内容、方法、回数、費用負担に関する事項
加盟に際して徴収する金銭の性質、金額、その返還の有無及び返還の条件
加盟後、本部の商標、商号等の使用、経営指導等の対価として加盟者が本部に定期的に支払う金銭(いわゆる「ロイヤルティ」)の額、算定方法、徴収の時期、徴収の方法
本部と加盟者の間の決済方法の仕組み・条件、本部による加盟者への融資の利率等に関する事項
事業活動上の損失に対する補償の有無及びその内容並びに経営不振となった場合の本部による経営支援の有無及びその内容
契約の期間並びに契約の更新、解除及び中途解約の条件・手続に関する事項【注3】
加盟後、加盟者の店舗の周辺の地域に、同一又はそれに類似した業種を営む店舗を本部が自ら営業すること又は他の加盟者に営業させることができるか否かに関する契約上の条項の有無及びその内容並びにこのような営業が実施される計画の有無及びその内容
【注1】現在、中小小売商業におけるフランチャイズ契約については、「中小小売商業振興法」という法律により、同法の対象となる本部に対して、契約締結前に一定の事項を記載した書面を交付し、説明することが義務付けられています(同法11条参照)。
【注2】この ~ の事項は、契約書に盛り込まれる事項にもなります。
【注3】フランチャイズ契約において、中途解約の条件が不明確である場合、加盟に際しての加盟希望者の適正な判断に支障が生じるだけでなく、加盟後においても、加盟者はどの程度違約金を負担すれば中途解約できるのか不明であるために解約が事実上困難となるケースもあることから、本部は中途解約の条件を契約書中に明記するとともに、契約締結前の加盟者募集時においてもこの点を十分に説明することが望ましいとされています。
なお、加盟者の募集に際して、予想売上げや予想収益を提示する本部もありますが、これらの額を提示する場合には、当該提示額の合理性を示す客観的な根拠(例えば、類似した環境にある既存店舗の実績等)及びその算定方法も同時に示すことが妥当であるといえます。
本部が、加盟者の募集に当たり、上述したような重要事項について、十分な開示を行わず、又は虚偽若しくは誇大な開示を行い、これにより、実際の事業内容よりも著しく優良又は有利であると加盟希望者に誤認させ、もって、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引する場合には、「不公正な取引方法」の一般指定の第8項(ぎまん的顧客誘引)に該当します。
この一般指定の第8項(ぎまん的顧客誘引)に該当する否かは、例えば、次のような事項を総合的に勘案して、加盟者募集に係る本部の取引方法が、実際のものよりも著しく優良又は有利であると誤認させ、競争者の顧客を不当に誘引するものであるかどうかによって判断されます。
✔予想売上げ又は予想収益の額を提示する場合、その額の算定根拠又は算定方法が合理性を欠くものでないか。また、実際には達成できない額又は達成困難である額を予想額として示していないか。
✔ロイヤルティの算定方法に関し、必要な説明を行わないことにより、ロイヤルティが実際よりも低い金額であるかのように開示していないか。
例えば、売上総利益には廃棄した商品や陳列中紛失等した商品の原価(「廃棄ロス原価」)が含まれると定義した上で、当該売上総利益に一定率を乗じた額をロイヤルティとする場合、売上総利益の定義について十分な開示を行っているか、又は定義と異なる説明をしていないか【注】。
【注】コンビニエンスストアのフランチャイズ契約においては、売上総利益をロイヤルティの算定の基準としていることが多く、その大半は、廃棄ロス原価を売上原価に算入せず、その結果、廃棄ロス原価が売上総利益に含まれる方式を採用しています。この方式の下では、加盟者が商品を廃棄する場合には、加盟者は、廃棄ロス原価を負担するほか、廃棄ロス原価を含む売上総利益に基づくロイヤルティも負担することとなり、廃棄ロス原価が売上原価に算入され、売上総利益に含まれない方式に比べて、不利益が大きくなりやすいといえます。
✔自らのフランチャイズ・システムの内容と他本部のシステムの内容を、客観的でない基準により比較することにより、自らのシステムが競争者に比べて優良又は有利であるかのように開示をしていないか。
例えば、実質的に本部が加盟者から徴収する金額は同水準であるにもかかわらず、比較対象本部のロイヤルティの算定方法との差異について説明をせず、比較対象本部よりも自己のロイヤルティの率が低いことを強調していないか。
✔フランチャイズ契約を中途解約する場合、実際には高額な違約金を本部に徴収されることについて十分な開示を行っているか、又はそのような違約金は徴収されないかのように開示していないか。
契約締結後の本部と加盟者との取引についてのルール
フランチャイズ契約においては、本部が加盟者に対し、商品や原材料、包装資材、使用設備、機械器具等の注文先や、店舗の清掃、内外装工事等の依頼先について特定の業者を指定したり、販売方法や営業時間、営業地域、販売価格などに関し各種の制限を課すことが多々あります。フランチャイズ契約におけるこれらの条項は、本部が加盟者に対して開示した営業秘密を維持し、当該フランチャイズ・システム全体が第三者(消費者や関係業者)に対し統一したイメージを確保するために必要なものであれば、当該フランチャイズ・システムによる営業を的確に実施する限度において、違法なものとは解されません(直ちに独占禁止法上問題となるものではありません)。しかしながら、フランチャイズ契約の個々の条項又は本部の具体的な行為が、当該フランチャイズ・システムによる営業を的確に実施する限度を超え、加盟者に対して正常な商慣習に照らして不当に不利益を与え、また、加盟者を不当に拘束するような場合には、「不公正な取引方法」(一般指定の第14項(優越的地位の濫用)、第10項(抱き合わせ販売等)、第13項(拘束条件付取引)など)に該当することがありますので、契約締結後においても、常にコンプライアンス(法令順守)の意識を銘記しておくことが重要になります【注】。
【注】若干の具体例をあげると、取引上優越した地位にある本部が加盟者に対して、フランチャイズ・システムによる営業を的確に実施するために必要な限度を超えて、例えば、次のような行為により、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合には、本部の取引方法が一般指定の第14項(優越的地位の濫用)に該当すると考えられます。
✔本部が加盟者に対して、加盟者の販売する商品又は使用する原材料について、返品が認められないにもかかわらず、実際の販売に必要な範囲を超えて、本部が仕入数量を指示し、当該数量を仕入れることを余儀なくさせること。
✔廃棄ロス原価を含む売上総利益がロイヤルティの算定の基準となる場合において、本部が加盟者に対して、正当な理由がないのに、品質が急速に低下する商品等の見切り販売を制限し、売れ残りとして廃棄することを余儀なくさせること。
✔本部が加盟者に対して、特定地域で成立している本部の商権の維持、本部が加盟者に対して供与したノウハウの保護等に必要な範囲を超えるような地域、期間又は内容の競業禁止義務を課すこと。

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