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ホーム リスト << 重要判例要旨 最終更新 '08/6/3

著作物性

「当落予想表事件」

昭和610303日東京地方裁判所(昭和58()747

「当落予想表事件(2)」

昭和620219日東京高等裁判所(昭和61()833


【判決文(原審)】

(注) 下線がある場合、それは筆者によるものです。


二 原告原稿が原告著作にかかる著作物といえるかについて検討する。

原告原稿が著作物といえるためには、そのものが思想又は感情を創作的に表現したものであること、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであることが必要である(著作権法第2条第1項第1号)ところ、「思想又は感情」とは、人間の精神活動全般を指すものと解され、「創作性」は、厳格な意味で独創性とは異り、著作物の外部的表現形式に著作者の個性が現われていれば十分であると解され、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属す」というのも、知的、文化的精神活動の所産全般を指すものと解するのが相当である。

そうすると、成立に争いのない甲第一号証及び原告本人尋問の結果によると、原告原稿は、各立候補予定者氏名上に、個別に、当選圏内、当落線上より上、当落線上より下なる同種記載を繰り返す煩雑さを避け、表現の簡略化のために、符号を付したものであり、原告の、知的精神活動の所産と解され、その表現形式に原告の個性が現われていると認められるから、原告著作にかかる著作物ということができる。


【判決文(控訴審)】


二 まず、控訴人原稿が控訴人著作にかかる著作物といえるか否かについて検討する。

控訴人原稿が著作物といえるためには、それが「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」であることが必要である(著作権法第2条第1項第1号)ところ、「思想又は感情」とは、人間の精神活動全般を指し、「創作的に表現したもの」とは、厳格な意味での独創性があるとか他に類例がないとかが要求されているわけではなく、「思想又は感情」の外部的表現に著作者の個性が何らかの形で現われていれば足り、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属する」というのも、知的、文化的精神活動の所産全般を指すものと解するのが相当である。

本件についてこれをみるに、成立に争いのない甲第一、第九号証、原審及び当審における控訴人本人尋問の結果、並びに前記争いのない事実によれば、控訴人は、株式会社政治広報センター(以下「政治広報センター」という。)発行、控訴人編著の「政治ハンドブツク」(昭和571月版)に記載されている、昭和55622日に施行された第36回総選挙(衆議院議員)の結果分析(立候補者ごとの得票数、得票率、得票増減等)や政治広報センター備付のコンピユータによる判断結果を参考にし、控訴人自身の政治評論家としての知識、経験に基づいて、総選挙の立候補予定者につき当落の予想をしたが、立候補予定者名簿に、個別に、当選圏内、当落線上より上、当落線上より下という、同種の記載を繰り返す煩雑さを避け、表現の簡略化のために○△▲の符号を付し、また、○の符号については「1」、△の符号については「1マイナス1」、▲の符号については「0プラス1」として換算し(したがつて、△と▲の合計が1となる。)、右により換算したものの和が各選挙区の定員数と同一となるように(ただし、宮城二区、山形二区、兵庫三区を除く。)、右各符号を付して控訴人原稿を完成したものであることが認められ(原審証人A、同B並びに当審証人Cの各供述中、右認定に反する部分は措信できない。)、右認定事実によれば、控訴人原稿は、国政レベルにおける政治動向の一環としての総選挙の結果予測を立候補予定者の当落という局面から記述したもので、一つの知的精神活動の所産ということができ、しかもそこに表現されたものには控訴人の個性が現われていることは明らかであるから、控訴人の著作に係る著作物であると認めるのが相当である


―略―


3 ところで、出版許諾契約においては、出版者は著作物を原稿の内容のまま複製すべき義務があり、右内容に改変を加えることはできず、もし著作者の承諾なしに改変を加えて複製した場合には債務不履行の責任を生ずるとともに、著作者人格権である同一性保持権(著作権法第20条第1項)侵害の責任を負うべきである。本件において、前記認定のとおり、・・・などを総合すると、本件当落予想表は全体としてみるならば、控訴人原稿を複製したものと認めるのが相当であるが、控訴人原稿を一部改変した部分を含むものであることは否定できない

4 また、控訴人と被控訴人との間の契約は控訴人が創作する著作物を本件週刊誌の記事の一部として複製出版するものであり、著作権そのものは控訴人に保有されているのであるから、控訴人に著作者人格権である氏名表示権が保有されていることはいうまでもなく、したがつて、被控訴人が本件当落予想表に著作者として控訴人の氏名を表示しなかつたことも、控訴人の右権利を侵害したものというべきである(前記改変部分には、同一性保持権の侵害と氏名表示権の侵害とが競合していると評価すべきである。)。

―以下、略