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ホーム リスト << 重要判例要旨 最終更新 '08/6/6

機械設計図の複製

「丸棒矯正機設計図事件」

平成40430日大阪地方裁判所(昭和61()4752


【ポイント・論点】

・機械の設計図は「著作物」(図形著作物)に当たるか。

設計図に基づいて機械を製作することは、当該設計図の「複製」に当たるか。


【判決文】

(注) 下線がある場合、それは筆者によるものです。


3 設計図に基づいて機械を製作することが設計図の複製になるか。

(原告の主張)

製作行為を当然に予定する機械設計図の場合、それを複製した設計図に基づいて機械を製作することが設計図の複製に該当しないとすると、複製設計図に基づいて機械を製作、販売して不当な利益を得ることが設計図の著作権の侵害とならないことになるが、それでは、製作行為を当然に予定する図面に対する保護としては著しく脆弱なものになってしまい、著作権の保護を全うすることができない。したがって、製作行為を当然に予定する機械設計図についての著作権法にいう「複製」には、単に図面を複製する行為にとどまらず、設計図に基づいて機械を製作する行為も含まれると解すべきであり、少なくとも、一般に公表されていないものについては、そのように解すべきである。

建築の著作物について、建築に関する図面に従って建築物を完成することも複製に含む旨規定する著作権法2115号ロの規定は、少なくとも製作行為が予定されている設計図にも類推適用すべきである。

―略―

第三 争点に対する判断
一 争点1(原告本件設計図の著作物性)等について

1 原告本件設計図は、原告の設計担当の従業員らが研究開発の過程で得た技術的な知見を反映したもので、機械工学上の技術思想を表現した面を有し、かつその表現内容(描かれた形状及び寸法)には創作性があると認められる(甲1の1〜5、証人【A】、鑑定)。したがって、原告本件設計図はそれぞれ丸棒矯正機に関する機械工学上の技術思想を創作的に表現した学術的な性質を有する図面(著作権法1016号)たる著作物にあたるというべきである。但し、・・・(筆者注:略)という技術的思想そのものは、要件を満たした場合に特許法ないし実用新案法により保護されるべき性質のものであり(その意匠が意匠法により保護される場合もある)、著作物として保護されるのは、その表現(図示された形状や寸法)であると解される。


―略―


三 争点3(設計図に基づく機械の製作が設計図の複製になるか)及び争点4について
 著作権法において、「複製」とは、印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製することをいう(著作権法2115号)のであり、設計図に従って機械を製作する行為が「複製」になると解すべき根拠は見出し難い。原告は、それに基づいて製作することが予定されている設計図については、複製に建築に関する図面に従って建築物を完成することを含む旨規定する著作権法2115号ロを類推適用すべきである旨主張する。しかしながら、右規定は、思想又は感情を創作的に表現したものであって学術又は美術の範囲に属するものであれば、建築物はそれ自体が著作物と認められる(著作権法1015号)から、それと同一性のある建築物を建設した場合はその複製になる関係上、その建築に関する図面に従って建築物を完成した場合には、その図面によって表現されている建築の著作物の複製と認めることにするものであるが、これに対して、原告矯正機の如き実用の機械は、建築の著作物とは異なり、それ自体は著作物としての保護を受けるものではない(それと同一性のある機械を製作しても複製にはならない)から、原告の右主張は採用できない。
 また、別紙図面1ないし3に赤色及び黄色で示した部分の形状、寸法において一致する丸棒矯正機の製造を差止めることが、前記二で認定した被告侵害行為(設計図の複製)の停止又は予防に必要な措置と認めることもできない。

したがって、請求の趣旨第二項の請求は理由がない。