共同制作における「依拠」性の判断
「『妻たちはガラスの靴を脱ぐ/見覚め』事件(2)」
平成8年04月16日東京高等裁判所(平成5(ネ)3610)
【判決文】
(注) 下線がある場合、それは筆者によるものです。
五 翻案権及び放送権侵害の成否について
1(一) ある作品について著作権侵害が成立するためには、当該作品が原著作物に依拠して作成されたものであることが必要であるところ、前記三1に認定のとおり、本件テレビドラマは原告著作物を素材の一部として使用すること等の打合せを経て完成された脚本に基づいて制作されたものであって、控訴人IVS及び控訴人【A】が原告著作物の存在及び内容を知っていたことは明らかである。
(二) ところで、ある作品の制作者において原著作物に接する機会がなく、その存在及び内容を知らなかった場合には、これを知らなかったことについて過失があると否とにかかわらず、原著作物に依拠して当該作品を制作したものということはできず、その者に著作権侵害の責任を問うことはできないものと解される(最高裁昭和五三年九月七日判決、民集三二巻六号一一四五頁参照)。
右のように、対象となる作品が原著作物に依拠して作成されたものであるか否かは、当該作品の制作者につき判断されるべき事項であるから、対象となる作品が共同制作にかかるものである場合には、共同制作者のそれぞれにつき依拠の要件を充足しているか否かを判断する必要があるが、共同制作者の全員が原著作物に接していなければならないというものでは必ずしもなく、自らは原著作物に接する機会がない場合であっても、当該作品を制作するについて他の共同制作者が原著作物に接していて、これに依拠していることを知っているような場合には、原著作物に接する機会のない者についても、同様に依拠の要件を充足しているものと認めるのが相当である。
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