「建築の著作物」の「複製」
「『シノブ設計』建築設計図事件」
平成3年04月09日福島地方裁判所(平成2(ヨ)105)
【ポイント・論点】
・建築設計図は、「著作物」(図形著作物)に当たるか。
・著作権法2条1項15号ロの意義。
【判決文】
(注) 下線がある場合、それは筆者によるものです。
第三 当裁判所の判断
一 建築設計図は、一般に、学術的性質を有する図面にあたり、そして建築家がその知識と技術を駆使して作成したものでそこに創作性が認められる限り、著作権法10条1項6号の著作物性を肯定し得ると解され、かかる観点から本件設計図も前記6号の著作物に該当するものと考えられる。
二 ところで著作権法10条1項6号の著作物の複製は、同項5号の「建築の著作物」の場合と異なり2条1項15号の本文の有形的な再製に限られ、したがって建築設計図に従って建物を建築した場合でも、その建築行為は建築設計図の「複製」とはならない。
それで本件建物が本件設計図に従って建築された場合であっても、右6号の関係では複製とはいえない。
三 しかして、設計図に従って建物を建築することが「複製」となるのは、「建築の著作物」(同法10条1項5号)についてである。
すなわち「建築の著作物」とは(現に存在する建築物又は)設計図に表現されている観念的な建物自体をいうのであり、そしてそれは単に建築物であるばかりでなく、いわゆる建築芸術と見られるものでなければならない。
四 債権者は、本件設計図が図面の著作物(6号)に該当することから、直ちに本件建物の建築行為が、「複製」権の侵害となるとするものであるが、上述来説示のように、本件設計図に表現されている観念的な建物が「建築の著作物」に該当しないかぎり本件建物の建築行為は「複製」権の侵害とはならない。
そこで、本件設計図に表現されている観念的な建物は「建築の著作物」に該当するか否か検討するにここで「建築芸術」と言えるか否かを判断するにあたっては、使い勝手のよさ等の実用性、機能性などではなく、もっぱら、その文化的精神性の表現としての建物の外観を中心に検討すべきところ、前顕疎乙第二号証、同第四号証の一、二、甲第四号証によれば、右観念的な建物は一般人をして、設計者の文化的精神性を感得せしめるような芸術性を備えたものとは認められず、いまだ一般住宅の域を出ず、建築芸術に高められているものとは評価できない。
そうすると、本件設計図に表現されている観念的な建物が「建築の著作物」に該当しないので、本件債務者らの建築行為は「複製」権の侵害とはならない。
五 のみならず、疎乙第二号証、同第四号証の一、二、同第三号証、同第五号証の一、二によれば、本件設計図と債務者会社の設計図との間には、その外観、内部の間取り等において、債務者ら主張(別紙第三の第三)のような相違点が見られるので、両設計図間には類似性をも認めることができない。
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