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ホーム リスト << 重要判例要旨 最終更新 '08/6/18

「フェア・ユース」の法理(2)

「『THE WALL STREET JOURNAL』抄訳事件」

平成50830日東京地方裁判所(平成3()6310

「『THE WALL STREET JOURNAL』抄訳事件(2)」

平成61027日東京高等裁判所(平成5()3528


【判決文(原審)】

(注) 下線がある場合、それは筆者によるものです。


  債務者は、債務者文書の作成・頒布は公正利用の法理により許容される旨主張する。

  一般的に公正利用の法理が認められるかどうかはともかく、本件は、債務者において債権者新聞を無断利用して債務者文書を作成し、これを1か月3万円余の会費、又は100字当たり1000円の料金等の商業ベースで、多数の会員に頒布しているものであり、新聞の個性を形づくる重要な編集著作権を侵害する債務者のこのような行為が公正利用として許容されることは、到底ありえないものであって、債務者の主張は理由がない。


【判決文(控訴審)】

(注) 下線がある場合、それは筆者によるものです。


6 控訴人は、控訴人の主張8記載の理由により、控訴人文書は公正利用に当たる旨主張する。

  著作権法1条は、著作権法の目的につき、「これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作権者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。」と定め、同法30条以下には、それぞれの立法趣旨に基づく、著作権の制限に関する規定が設けられているところ、これらの規定から直ちに、わが国においても、一般的に公正利用(フェアユース)の法理が認められるとするのは相当でなく、著作権に対する公正利用の制限は、著作権者の利益と公共の必要性という、対立する利害の調整の上に成立するものであるから、これが適用されるためには、その要件が明確に規定されていることが必要であると解するのが相当であって、かかる規定の存しないわが国の法制下においては、一般的な公正利用の法理を認めることはできない

  なお、念のため付言するに、フェアユースに基づく著作権の制限を規定しているアメリカ合衆国著作権法107条は、著作物の使用がフェアユースとなるかどうかを判断するについて、(1)使用の目的及び性格(使用が商業性を有するか非営利の教育的な目的であるかという点を含む)、(2)著作権のある著作物の性質、(3)著作物全体の関係における使用された部分の量及び重要性、(4)著作物の潜在的市場又は価値に対する使用の及ぼす影響、という要素を考慮すべきであると規定しているところ(疎乙第一二八号証の一)、控訴人は、右のような判断指針の適用を前提として、本件につき公正利用の法理が認められるべきであるとするのであるが、右のような指針に基づいて判断したとしても、控訴人文書の被控訴人新聞の利用が営利を目的とするものであることは否定できないこと、控訴人文書は被控訴人新聞に比べると量的には非常に少ないものとなっているが、控訴人文書の各記述は被控訴人新聞の記事等により伝達しようとしている情報の核心的事項を表現しているものであって、単に被控訴人新聞の報道するニュースへのアクセスを可能にするといった程度のものではなく、控訴人文書によれば、特定の日付けの被控訴人新聞がどのような出来事を取り上げているかの概要を知ることができること、控訴人は、前記一項に認定のとおり、控訴人文書を講読すれば、わざわざ被控訴人新聞を講読しなくとも同新聞の掲載記事の内容が把握できるとも受け取れる宣伝広告をしていること、控訴人が、今後も引き続き控訴人文書を作成・頒布することにより、被控訴人新聞の購読者が控訴人文書の講読に切り替えたり、あるいは、被控訴人新聞の潜在的講読予定者が控訴人文書を講読したりすることが考えられることなどからすると、被控訴人新聞がニュース報道を主目的とした新聞であること、控訴人文書にもそれなりの有用性があることを考慮しても、控訴人文書が公正利用に当たるものということはできない