ストーリー原作者と作画者との関係@
「『キャンディ・キャンディ』事件@」
平成11年02月25日東京地方裁判所(平成9(ワ)19444)
【ポイント・論点】
・ある連載漫画が、当該連載の各回ごとに、Aがストーリーを創作し、小説形式にした原稿を作成してこれをBに渡し、Bが当該原稿に基づいて漫画を作成するという手順で制作された等の事情がある場合に、当該連載漫画が、A及びBの「共同著作物」になるか、それとも、Aの創作にかかる原作原稿を原著作物とする「二次的著作物」に該当するか。
【判決文】
(注) 下線がある場合、それは筆者によるものです。
3(一) 以上のとおり、本件連載漫画は、当初から原告が作成した原作原稿を被告Bが漫画化するものとして「なかよし」編集部によって企画され、実際にも連載の各回ごとに原告が小説の形式で原作原稿を作成し、これを被告Bが漫画化するという手順で制作が行われたものであり、本件連載漫画とこれに対応する右原作原稿の各内容を対比してみても、前記のとおり、本件連載漫画はおおむね原作原稿の記載内容に沿って具体的なストーリーが展開され、登場人物の吹き出しの台詞や思考・心情の記述もその多くが原作原稿中の記載に基づくものと認められる。また、出版物における著者の表示や二次的利用の際の権利関係の処理においても、原告は、終始、本件連載漫画につき原作者としての権利を有するものとして処遇され、被告Bもこれを容認してきたものである。
これらの事情を総合すれば、本件連載漫画は、連載の各回ごとに、原告の創作に係る小説形式の原作原稿という言語の著作物(右原作原稿が、思想又は感情を言語によって創作的に表現したものであって著作物性を有することは、連載の一部の回に係る原告原稿である甲第四〇号証、第四二号証、第四八号証、第五〇号証、乙第一〇号証、第一二号証、第一三号証、第一九号証及び第二〇号証から明らかである。)の存在を前提とし、これに依拠して、そこに表現された思想・感情の基本的部分を維持しつつ、表現の形式を言語から漫画に変えることによって、新たな著作物として成立したものといえるのであり、したがって、本件連載漫画は、原告の創作に係る原作原稿という著作物を翻案することによって創作された二次的著作物に当たると認められる。
―略―
5 被告らは、本件連載漫画における登場人物の絵が専ら被告Bの独創によるものであり、そこには原告の創造性が全く介入していないとして、原告には、本件連載漫画の登場人物につき被告Bが新たに書き下ろす絵については、その作成等を差し止める権利はない旨を主張する。
被告らの右主張の趣旨は、要するに、本件連載漫画における絵の部分は専ら被告Bが創作したのであるから、本件連載漫画を絵という表現形式においてのみ利用することは、被告Bの専権に属するというにある。しかしながら、前記認定のとおり、本件連載漫画は、原告の創作に係る原作という言語の著作物を、被告Bが漫画という別の表現形式に翻案することによって、新たな著作物として成立したものであり、右翻案に当たっては、漫画家である被告Bによる創作性が加えられ、特に絵については専ら被告Bの創作によって成立したことは当然のことというべきであるが、このようにして成立した本件連載漫画は、絵のみならず、ストーリー展開、人物の台詞や心理描写、コマの構成などの諸要素が不可分一体となった一つの著作物というべきなのであるから、本件連載漫画中の絵という表現の要素のみを取り上げて、それが専ら被告Bの創作によるからその部分のみの利用は被告Bの専権に属するということはできない。そして、前記のとおり、本件連載漫画が原告作成の原作との関係において、その二次的著作物であると認められる以上、原告は、絵という要素も含めた不可分一体の著作物である本件連載漫画に関し、原著作物の著作者として、本件連載漫画の著作者である被告Bと同様の権利を有することになるのであり、他方、本件原画のような本件連載漫画の登場人物を描いた絵は本件連載漫画における当該登場人物の絵の複製と認められるのであるから、これを作成、複製、又は配布する被告らの行為が、原告の有する複製権を侵害することになるのは当然である。
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