手紙の著作物性
「三島由紀夫手紙事件」
平成11年10月18日東京地方裁判所(平成10(ワ)8761著作物発行差止等請求事件)
【ポイント・論点】
・「手紙」は、著作権法上保護される「著作物」に該当するか。
【判決文】
(注) 下線がある場合、それは筆者によるものです。
第二 事案の概要
原告らは、亡F(筆名 G、以下「G」という。)の相続人であるが、Gが書いた未公表の手紙を掲載して、書籍を発行した被告らの行為が、@原告らが相続したGの右手紙に係る複製権を侵害する行為であり、また、AGが生存していたならばその公表権の侵害となるべき行為であると主張して、右書籍の出版等の差止め、右書籍等の廃棄、損害賠償の支払及び謝罪広告を請求した。
―略―
二 争点
1 本件各手紙は著作物か。
(原告らの主張)
本件各手紙は、いずれも、Gの思想、感情を創作的に表現したものであり、著作物である。
(被告らの反論)
本件各手紙は、いずれも純然たる実用文であって、内容及び文体に照らして、誰にでも書けるような文章であり、創作性、創造性が認められず、文芸の範囲には属さない。よって、本件各手紙は、著作物とはいえない。
―略―
第三 争点に対する判断
一 争点1(本件各手紙の著作物性)について
1 (略)
2 著作権法上保護の対象となる著作物とは、思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものであることを要し、これをもって足りる。
本件各手紙は、いずれも、被告Eとの往復書簡であり、特定の者に宛てられ、特定の者を読み手として書かれたものであって、不特定多数の読者を想定した文芸作品とは性格を異にする。しかし、本件各手紙には、単に時候の挨拶、返事、謝礼、依頼、指示などの事務的な内容のみが記載されているのではなく、Gの自己の作品に対する感慨、抱負、被告Eの作品に対する感想、意見、折々の心情、人生観、世界観等が、文芸作品とは異なり、飾らない言葉を用いて述べられている。本件各手紙は、いずれも、Gの思想又は感情を、個性的に表現したものであることは明らかである。以上のとおり、本件各手紙には著作物性がある。
よって、Gは、本件各手紙の著作者として、本件各手紙に係る公表権及び複製権を有していた。
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