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ホーム リスト << 重要判例要旨 最終更新 '08/5/28

編集物の素材の採録行為と「引用」


「『ラストメッセージin最終号』事件」

平成71218日東京地方裁判所(平成6()9532


【ポイント・論点】
・編集物の素材として他人の著作物を採録する行為(121項参照)は、「引用」(321項)に該当するか。


【判決文】

(注) 下線がある場合、それは筆者によるものです。


二 本件記事の著作物性について

1 ある著作が著作物と認められるためには、それが思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要であり(著作権法211号)、誰が著作しても同様の表現となるようなありふれた表現のものは、創作性を欠き著作物とは認められない。

本件記事は、いずれも、休刊又は廃刊となった雑誌の最終号において、休廃刊に際し出版元等の会社やその編集部、編集長等から読者宛に書かれたいわば挨拶文であるから、このような性格からすれば、少なくとも当該雑誌は今号限りで休刊又は廃刊となる旨の告知、読者等に対する感謝の念あるいはお詫びの表明、休刊又は廃刊となるのは残念である旨の感情の表明が本件記事の内容となることは常識上当然であり、また、当該雑誌のこれまでの編集方針の骨子、休廃刊後の再発行や新雑誌発行等の予定の説明をすること、同社の関連雑誌を引き続き愛読してほしい旨要望することも営業上当然のことであるから、これら五つの内容をありふれた表現で記述しているにすぎないものは、創作性を欠くものとして著作物であると認めることはできない。

2 右観点からすると、本件記事4、8、21、22、32、35及び42(別紙目録(二)の1―4、2―3、4―2、4―3、6―5、7―2及び10―1)は、いずれも短い文で構成され、その内容も休廃刊の告知に加え、読者に対する感謝(4、8、21、32、35及び42の記事)、再発行予定の表明(4、21、22及び35の記事)あるいは、同社の関連雑誌を引き続き愛読してほしい旨の要望(4の記事)にすぎず、その表現は、日頃よく用いられる表現、ありふれた言い回しにとどまっているものと認められ、これらの記事に創作性を認めることはできない。

3 他方、右七点を除くその他の本件記事については、執筆者の個性がそれなりに反映された表現として大なり小なり創作性を備えているものと解され、著作物であると認められる。


―略―


六 引用による利用の抗弁について

1 著作権法321項所定の引用とは、紹介、参照、論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録することをいうものであり、また、引用に該当するためには、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められることを要するものと解される。

そして、編集物の素材として他人の著作物を採録する行為は、引用に該当する余地はないものと解するのが相当である。即ち、著作権法321項の第一文は、「公表された著作物は、引用して利用することができる。」と定めているから、引用した側の著作物の複製等の利用の際に必然的に生ずる引用された著作物の利用に、その引用された著作物の著作権は及ばないことは明らかである。

これに対し、同法12条は、1項において、データベースに該当するものを除く編集物でその素材の選択又は配列によって創作性を有するものは、著作物として保護する旨を定めた上、2項において、「前項の規定は、同項の編集物の部分を構成する著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。」と定めているから、1項の要件を充足し著作物として保護されるいわゆる編集著作物の複製等の利用の際に必然的に生ずる編集物の部分を構成している素材の利用に、その素材の著作物の著作権が及ぶことを意味することも明らかである。してみると、編集物の素材として他人の著作物を採録する行為を引用にあたるものとして、編集物の複製等の利用の際の素材の著作物の利用に、その著作権が及ばないものとする余地はないものというべきである。

2 被告書籍は、昭和61年から平成5年までの間に休刊又は廃刊となった各雑誌の最終号の表紙、休廃刊に際し出版元等の会社やその編集部、編集長等から読者宛に書かれた記事あるいはイラスト等を集めた書籍であって、被告は、右各雑誌の表紙、記事、イラスト等を電子複写機器により機械的に複製した上で休廃刊の年毎にまとめ、写真製版の方法により印刷したものであり、被告書籍は、冒頭の目次部分と末尾のあとがき部分の外は全て右複製により構成されていることは、前記のとおり争いがない。

―以下、略

3 右事実によれば、被告書籍は、休刊又は廃刊された雑誌の最終号の表紙、出版元等や編集長等から読者宛の記事、イラスト等の素材を編集した編集物であるところ、編集物の素材として他人の著作物を採録する行為は引用に該当する余地はないから、被告書籍中に本件記事を採録複製したことをもって引用であるとして、被告書籍の発行の際の本件記事の複製利用は原告らの著作権の侵害にあたらないとの被告の主張は採用できない

―以下、略