現像済みフィルム等の引渡しと黙示の利用許諾
「『別冊FMfan』広告写真事件」
平成1年06月30日東京地方裁判所(昭和62(ワ)5183)
【ポイント・論点】
・現像済みのフイルム及びこれを焼き付けた紙焼写真の引渡しの事実があった場合に、当事者の職業及び契約の目的を参酌し、黙示の利用許諾を認定した事例。
【判決文】
(注) 下線がある場合、それは筆者によるものです。
第二 当事者の主張
一 請求の原因
1 主位的請求
(一) 原告は、日本広告写真家協会に所属するカメラマンであるところ、昭和61年2月10日、別紙目録(1)ないし(6)記載の写真四カツト六枚(以下「本件写真(1)ないし(6)」といい、これらを総称して「本件写真」という。)を撮影した。
(二) 被告は、広告代理業を営む会杜であるところ、本件写真(4)を、同年4月4日発行の雑誌「別冊FMfan」四九号に掲載させた。
(三) 被告の右(二)の行為は、原告が本件写真(4)について有する複製権を侵害するものであり、しかも、まだ公表されていない同写真を初めて公衆に提示したものであるから、原告が同写真について有する公表権を侵害するものである。
(四) 被告は、故意又は過失により、右著作権侵害及び著作者人格権侵害の行為をしたものである。
―略―
三 抗弁
1 請求の原因1(主位的請求)に対する抗弁
原告と被告は、前記請求の原因2(一)記載のとおり(ただし、弁済期については、前記請求の原因に対する認否2(一)記載のとおり。)の契約を締結したところ、被告は、同2(二)記載のとおり、原告から本件写真の現像済みのフイルム及びこれを焼き付けた紙焼写真の引渡しを受けたのであるから、これによって本件写真の著作権を譲り受けたか、又は使用の許諾を得たものである。また、これと同時に、原告は、被告に対し、本件写真を公衆に提示することについて許諾をしたか、又は同意したものと推定される。
―略―
理 由
一 主位的請求について
1 原告本人尋問の結果によれば、原告は、日本広告写真家協会に所属するカメラマンであることが認められ、その余の請求の原因1(一)の事実及び同(二)の事実は、当事者間に争いがない。
2 同1(三)のうち、同1(二)の行為によって、本件写真(4)を初めて公衆に提示したものであることは、当事者間に争いがない。
3 そこで、以上の点に関する抗弁1について判断するに、原告と被告は、昭和61年2月10日、請求の原因2(一)(1)及び(2)記載のとおり、原告は被告の注文により商品広告用写真の撮影を代金13万円で請負う旨約したこと、原告は、同2(二)のとおり、本件写真を撮影したうえ、同月13日、被告の事務所において、【A】に対し、本件写真の現像済みのフイルム及びこれを焼き付けた紙焼写真を引渡しのために提供したことは、当事者間に争いがなく、そして、成立に争いのない甲第一号証及び原告本人尋問の結果によれば、原告は、右契約の際、代金の支払時期については、被告会杜の一般的な取決めに従うつもりであって、少なくとも本件写真の引渡しの後になると考えていたこと、原告は、本件写真を持参した際、本件写真が歪んでいるか否かをめぐって【A】と言争いをしたが、結局、【A】に対し、本件写真を置いていくから料金は支払ってくれるようにと言って【A】の許を辞したこと、原告は、被告に対し、その後何度か口頭で右撮影代金13万円を支払うよう催告した後、更に、同62年1月24日発送の内容証明郵便をもって、右撮影代金の支払いを催告したことが認められる。以上の事実によれば、カメラマンである原告は、広告代理店である被告の注文により商品広告用写真の撮影を、代金は後日支払うとの約定で請負う旨契約し、これに基づき写真を撮影したうえ、被告に対し、その現像済フイルム及びこれを焼き付けた紙焼写真を引き渡したものであつて、右事実、殊に、原、被告の職業及び契約の目的に照らし、原告は、右の引渡しによって、被告に対し、本件写真を商品広告に使用し、かつ、これによって本件写真を公表することを許諾したものと認められる。したがって、抗弁1は、理由がある。そして、再抗弁1の事実を認めるに足りる証拠はない。
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