著作権の譲渡
>> 著作権法61条
著作権は、その全部又は一部を譲渡することができます(61条1項)。つまり、著作権は、その全体を又はその一部分を売り買いしたり、贈与したりすることができます。著作権が財産権である以上当然のことです。
著作権の譲渡(売買や贈与等)は、著作権者と譲受人との間の契約(売買契約や贈与契約等)によって行われます。売買を例に取ると、著作権を誰かに売ろうとする場合、「売ろう」−「買おう」という当事者の意思表示の合致があれば、原則として(特約や特別の事情がない限り)、直ちに(その意思の合致の時に)買主に当該著作権が移転する(その著作権が買主のものになる)ことになります(民法176条)。但し、その著作権の譲渡を第三者に対して主張するためには、著作権の移転の登録をしておかなければなりません(77条1号)。
著作権は、それを構成しているすべての権利を一括して譲渡(これを、「全部譲渡」と呼んでいます。)できるほか、次のように範囲を限定して譲渡(このような譲渡を、「一部譲渡」と呼んでいます。)することもできます。
@ 支分権ごとの譲渡
著作権は、それを構成する各種の「支分権」(複製権、上演権、上映権、公衆送信権、翻案権など、著作権の中に含まれる各種の権利のことです。)をそれぞれ分離して個別的に譲渡することができます。
一個の支分権をさらに分割して譲渡することも可能です。例えば、「公衆送信権」を「放送権」・「有線放送権」・「自動公衆送信権」に三分割し、さらには、「放送権」を「ラジオ放送権」と「テレビ放送権」に分割して譲渡することもできます。「複製権」を「出版を内容とする権利」・「録音権」・「録画権」等に分割して譲渡することもできますし、「翻訳権」をある特定の国語への翻訳(英語版・独語版・仏語版など)に限定して譲渡することも可能です。ただ、これらをさらに細分化するような権利(例えば、「ハードカバー本として出版する権利」)の譲渡に関しては、これを否定的に解する立場が多いようです。
A 地域限定の譲渡
著作権は、地域的・場所的な限定を付して譲渡することができます。例えば、演奏権を日本国内のみ又はアメリカ国内のみに限定して譲渡することが可能です。
なお、文化庁の登録実務上、1つの国を更に細分化すること(例えば、「東京都における」著作権の譲渡、「関西地方における」著作権の譲渡など)については、原則として認めていないようです。
B 期間限定の譲渡
著作権は、時間的な限定を付して譲渡することができます。例えば、「3年間」という限定を付して譲渡することが可能です。この場合、3年の期間が経過すれば、当該著作権は譲渡人(もとの権利者)に復帰することになります。
二次的著作物に対する原著作権者の権利(27条、28条)に関する注意点
著作権の譲渡契約において二次的著作物に対する原著作者の権利(27条、28条)が譲渡の目的として「特掲」されていないときは、これらの権利は譲渡人(著作権者)に留保されたものと推定されます(61条2項)。
こういうことです。著作権の譲渡が直ちに著作権の全部譲渡を意味するものとすると著作権者の保護に欠けるおそれがあり、また、将来どのような付加価値を生み出すか予想のつかない二次的著作物の創作及びその経済的利用に関する権利について、譲渡時に譲渡人(著作権者)の側に、そのすべてを相手方に譲渡するという明白な譲渡意思があるものとは通常いい難いことから、二次的著作物に対する原著作権者の権利(27条、28条)については、これを譲渡する旨の「特掲」(明確な特約)がない限り譲渡人に留保されている、つまり、当該権利は相手方に「譲渡されていない」と推定されます。例えば、「小説Aにかかる著作権は、これをBに譲渡する」という譲渡契約がなされた場合であっても、Bは小説Aを印刷・出版等することはできますが、小説Aを「映画化」したり、「翻訳」しようとするときは、当該契約において「映画化権」・「翻訳権」(ともに27条の権利)が「特掲」されていないため、別途著作権者からこれらの権利の許諾を得るか、当該権利を別に譲り受けるかする必要があります。
ここで、「特掲」されたと言えるためには、単に「すべての著作権を譲渡する」とか、「一切の権利を譲渡する」という表現では足りない、と解されるおそれがあります。少なくとも「著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む。)を譲渡する」といった程度の文言を用いて、契約書に明記する必要があるでしょう。実務上しばしば問題となるところですので、十分注意してください。
なお、この「特掲」に関して、地裁レベルですが、次のような裁判例があります:「法61条2項は,通常著作権を譲渡する場合,著作物を原作のままの形態において利用することは予定されていても,どのような付加価値を生み出すか予想のつかない二次的著作物の創作及び利用は,譲渡時に予定されていない利用態様であって,著作権者に明白な譲渡意思があったとはいい難いために規定されたものである。そうすると,単に「将来取得スルコトアルベキ総テノ著作権」という文言によって,法27条の権利や二次的著作物に関する法28条の権利が譲渡の目的として特掲されているものと解することはできない。この点につき,法28条の権利が結果的には法21条ないし法27条の権利を内容とするものであるとして,単なる「著作権」という文言に含まれると解釈することは,法61条2項が法28条の権利についても法27条の権利と同様に「特掲」を求めている趣旨に反する。」(「『どこまでも行こう』・『記念樹』/JASRAC事件」)
著作権の譲渡と独占的利用許諾の違い
著作権を譲渡することと、その著作権の目的である著作物について独占的な利用許諾を設定することは、区別して考えなければなりません。前者は、権利自体の移転であり、ひとたび適法に著作権が移転されると、著作者(もともとの著作権者)はもはや当該著作権の権利者ではなくなります。一方、後者の場合、独占的ではあっても、あくまでライセンス(利用権・使用権)を認めるだけの話ですから、著作権は著作者に帰属したままであり、ただ、著作(権)者は、ライセンシーに対して著作物を独占的に利用させるべき債権債務上の義務があるだけです。
また、「著作権」という「無体」財産権の譲渡と、その著作権が化体している作品(有体物)の譲渡とは区別して考えなければなりません。「絵画」(原作品である有体物)を売っても、通常、その絵画の「著作権」まで売ったことにはなりません(「顔真卿自書告身帳事件」参照)。
>> 著作権移転登録
>> 著作権〜二次的著作物に関する権利〜
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