著作物の定義
>> 著作権法2条1項1号
著作権法上、「著作物」とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」をいいます(2条1項1号)。
この定義規定から、著作権法上の「著作物」に該当するためには、次の@〜Cの要件をすべて満たすものでなければなりません。
@ 「著作物」は、「思想又は感情」を表現したものでなければなりません。
「思想又は感情」とは、要は、人間の精神活動全般をさします。
単なる事実やデータを羅列したに過ぎないものは、「思想又は感情」を表現したものとは言い難いため、著作権法上の「著作物」には該当しません。例えば、商品名をただ並べただけのカタログ、50音順に配列しただけの電話帳などは、「著作物」に該当しません。
なお、著作権法では、「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」は著作物(言語著作物)に該当しない、と明記しています(10条2項)。
A 「著作物」は、思想又は感情を「創作的に」表現したものでなければなりません。
他人の作品を模倣盗用したものには何ら創作性はなく、従って、「著作物」に該当しません。
もっとも、結果的にたまたま類似又は全く同じ創作物ができた場合でも、それぞれの創作過程に模倣盗用の事実がなければ、それぞれ別個の著作物となりえます。
「創作的に」とは、思想又は感情の外部的な具体的表現に著作者の個性が何らかの形で現われていれば足り、高い芸術性や学術性があるとか、他に類例がないといったことを要求しているわけではありません。
B 「著作物」は、思想又は感情を「表現した」ものでなければなりません。
著作物は、何らかの表現形式(文字・記号・音・色など)を用いて外部に具体的に表現されたものでなければならない、ということを意味しています。従って、人の内心にとどまっているアイディアや、アイディア・理論それ自体は、いかにそれが独創的で斬新なものであったとしても、それ自体では「著作物」には該当しません。
なお、外部への表現手段(方法)については、映画著作物を除き、必ずしも有形的な物(例えば、原稿用紙、カンバス、テープ、CDなど)に「固定」する必要はありません。原稿なしでする講演や即興演奏のように無形的に表現するものであっても「著作物」となりえます。
C 「著作物」は、「文芸、学術、美術又は音楽の範囲」に属するものでなければなりません。
純粋に「産業」の分野に属するような発明品(工業製品)は著作権法では保護しないことを意味します。
もっとも、産業上量産可能な「実用品」であっても著作物に該当するものはありえます(例えば、地図、ポスターなど)。
「文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とは、知的・文化的精神活動の所産全般を指す、とする裁判例があります。著作物は、必ず厳密な意味での「文芸」「学術」「美術」「音楽」のいずれかに属していなければならないというわけではないと解されます。
なお、著作物性の要件として、法律上「倫理性」・「道徳性」といったものは特に求められていません。
従って、不道徳ないし違法な内容を有するものであっても、道義上・刑法上はともかくとして、以上の@〜Cの要件を満たせば、「著作物」に該当し、著作権法上の保護を受けうることになります。
参考までに、WIPO著作権条約2条では、著作権による保護は、「表現されたもの」に及び、アイディアや手順、操作方法、数学的概念といった抽象的なものには及ばないことが明記されています。このことからも、「著作物」=「表現物」であり、「著作権法」=「表現保護法」であるという図式が国際的にも認知されていることがわかります。
>> 著作物の具体例
>> 権利の目的とならない著作物
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