出版権


解説

 「出版権」とは、頒布の目的をもって、著作物を原作のまま機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する排他的権利をいいます。この点、著作権法では、次のように規定しています。

 「出版権者は、設定行為で定めるところにより、頒布の目的をもって、その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利を専有する」(80条1項)。

1.出版権の基本的な内容

 出版権の基本的な内容は、以下のとおりです。

@ 出版権は、「頒布の目的をもって」著作物を複製する権利です。
 ここで「頒布の目的をもって」とは、有償・無償を問わず、著作物の複製物を公衆に譲渡し、又は貸与することを目的として、という意味です(2条1項19号参照)。従って、出版権者は、設定行為で定められた範囲内で、著作物を「複製」するだけでなく、当然にその複製物を公衆に販売・配布することもできます。

A 出版権は、著作物を「原作のまま」複製する権利です。
 ここで「原作のまま」とは、著作物をそのまま再現複製することをいい、翻訳・編曲・翻案による二次的著作物として複製することを含めない趣旨です。

B 出版権は、著作物を「印刷その他の機械的又は化学的方法により」複製する権利です。
 従って、著作物を「手書きによって」複製したり、「電子的・磁気的方法により」複製することは、一般的には、これに含まれないと解されます。

C 出版権は、著作物を「文書又は図画として」複製する権利です。
 「文書又は図画として」とは、典型的には雑誌・書籍・画集・図鑑・写真集・音譜集等として複製することをいい、出版権の目的となっている著作物をCD-ROMやビデオテープ等に録音物や録画物として複製することを含めない趣旨です。従って、小説等のいわゆる「電子出版」は、出版権の対象とはなり得ないと解されます(反対説あり)。

D 出版権の具体的な内容は、「設定行為で定めるところにより」定められます。
 出版権は、複製権者と著作物を出版することを引き受ける者との間の「出版権設定契約」によって、その具体的な内容が取り決められます。

2.出版権設定の効果

@ 上述しましたように、出版権は設定行為で定められた範囲内で著作物を出版する「排他独占的権利」ですから、出版権者は、当該出版権の内容と抵触する第三者の無断出版行為に対して自らの有する出版権に基づいて発行差止めや損害賠償を請求することができます。さらに、当該出版権の内容と抵触する複製権者の出版行為に対しても権利を行使することができます。さらに、設定された出版権の範囲内で複製権は制限を受けることになるため、複製権者は、他の出版者に対し、当該出版権の内容と抵触する出版許諾を与えることもできません。

A 出版権が設定されると、以上のように、その範囲内で複製権は制限を受けるため、複製権者といえども、当該出版権の目的となっている著作物をその著作者の全集などに出版権者に無断で収録することは許されないのが原則です。しかし、「出版権の存続期間中に当該著作物の著作者が死亡したとき」は、複製権者は、当該出版権の目的となっているその著作物を「全集その他の編集物(その著作者の著作物のみを編集したものに限る。)」に収録して複製することができるとされています(80条2項)。また、設定行為に別段の定めがある場合を除いて、「出版権の設定後最初の出版があった日から3年を経過したとき」は、複製権者は、同様の行為をすることができます(同項)。

B 出版権者は、他人に対し、出版権の目的である著作物の複製を許諾することができない、とされています(80条3項)。本規定については、これを文字通り読んで、出版権者が他人に対し複製の許諾を与えることは一切できない(そのような許諾は無効である)旨を定めたものである(本規定は強行法規である)と解する見解もありますが、一方で、複製権者の許諾があれば、出版権者のかかる許諾行為を無効と解すべきではないとする反対説もあります。

3.出版権の存続期間について

 出版権の存続期間については、出版権設定契約において当事者間で任意に定めることができます(83条1項)。そのような任意の定めがないときは、出版業界の慣行も考慮し、出版権の設定後「最初の出版があった日から3年を経過した日」において消滅するものとされています(同条2項)。
 ただ、当事者間で任意に出版権の存続期間を定める場合、「無期限」の存続期間を定めたり、「複製権の存続期間と同じ期間」といった極めて長期にわたる存続期間を定めますと無効と解され、結局、任意の定めがないものとして83条2項が適用されるおそれがありますので、注意してください(但し、こちらも反対説あり)。
 なお、「最初の出版があった日」とは、出版物(著作物の複製物)の第一回(初版)の発売配布があった日(取次店に引き渡されて流通過程におかれた日)をいいます。


関連項目

>> キーワード:出版権の設定と登録

>> キーワード:出版権者の義務等

>> 重要判例:出版権関係