キャラクター商品化権


解説

 世の中には、実にさまざまな「キャラクター」があふれています。「キャラクター」を利用した商品は、例を挙げればきりがないほどです:ぬいぐるみに玩具、文房具類や衣類、食器類やスポーツ用品にも・・・。これら「キャラクター」を利用した商品群は、日本経済のなかですでに一定の確立した市場を形成しています。
 
 このように、一定の商品に「キャラクター」を利用することに関する一種の財産的な権利を「(キャラクター)商品化権」(マーチャンダイジング・ライツ:Merchandising Rights)といいます。そして、この商品化権に基づき、商品化権者(ライセンサー)が、一定の商品の販売や役務の提供の促進、企業イメージの向上を欲する第三者(ライセンシー)に対し、「キャラクター」の一定の利用を許諾する契約が「キャラクター商品化権ライセンス契約」です。

 もっとも、現行著作権を含めてわが国の法制上、「商品化権」を明確に規定している法律はありません。ただ、著作権法の分野では、これまで、漫画キャラクターの著作権法による保護を認める判例―例えば、「サザエさん事件」・「ライダーマン事件」・「スヌーピー事件」・「ポパイ事件」など―が数多く出ていることから、現状では、著作権法が「商品化権」の中心的な保護法制であるといえます。ただし、実務上は、その利用方法・態様、利用条件等に応じて、著作権法、商標法、意匠法、不正競争防止法などの規定や民法の不法行為理論などを考慮に入れる必要があります。
 ライセンサーが一定の商品についてライセンシーにキャラクターの利用許諾をする場合、著作権が「権利の束」(bundle of rights)であることから、通常、契約においては、著作権のなかのどの「支分権」に基づいてライセンスを供与するかが一応問題となりますが、実務上は、「複製権」(21条)又は「変形権・翻案権」(27条)に基づいてライセンス供与が行われる場合が多いです。「複製権」に関しては、対象商品の種類等に応じて、さらにこれを細分化して許諾を与えるケースも多く見られます。

漫画キャラクターについて

 これまでの判例の一般的立場として、漫画キャラクター自体の著作物性を否定していますが、そのキャラクターの元になっている原画の「複製」ないし「変形・翻案」と考えられる利用態様には当該漫画(原画)の著作権が及び、よって、「キャラクター」は、著作権法によって原画を通して間接的に保護されるとしています。この点、次の最高裁判決が参考になります(最高裁平成9年7月17日判決「ポパイのキャラクター著作権侵害事件」)。
 著作権法上保護される「著作物」は、「表現されたもの」、すなわち「現実になされた具体的表現」でなければなりません。したがって、「キャラクター」を「漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念」と定義するなら、その著作物性を認めることは、著作権法の根本に抵触することになるでしょう。ただ、結果として「キャラクター」を著作権法で保護しうることに変わりはなく、「キャラクター」の持つマーケットでのグッドウィル(顧客吸引力)・経済価値を保護するという実際的な要請との整合性を図っているように思えます。

キャラクター商品化権ライセンス契約に当たっての留意事項

 キャラクター商品化権ライセンス契約は、実際的には、キャラクターを所有し・管理するライセンサーがあらかじめ契約書の雛形を作成しておき、利用態様や対象商品等に応じてその都度若干の修正を加えた上で、ライセンシー希望者に当該契約書を提示して、その同意を得て契約を締結することが多いのが実情です。実務上、このような附合契約的な性質から、ライセンサーの取引上・契約交渉上の力が強く、ライセンシー側からは、契約条件ついてほとんど交渉の余地がないのが一般的です。そのため、ライセンシー側としては、提示される契約条項を十分に理解し、納得した上で契約書に署名することが求められます。一方、ライセンサーとしては、自社の有用な資産である「キャラクター」のイメージを損なうことのないよう、将来的な戦略も踏まえて、どのような契約条項を設けておくべきかを研究する必要があります。

 以下、契約条項についての一般的な留意事項・検討項目を列挙しておきます。

□契約当事者は特定されているか
□商品化権の対象となる「キャラクター」が特定されているか
□いかなる利用態様を許諾するか、その範囲が特定されているか
□対象商品の範囲は妥当か、その範囲が特定されているか
□テリトリー(許諾地域)をどうするか、その範囲が特定されているか
□契約期間(許諾の有効期間)をどうするか
□ロイヤリティーの率、その算定方法・支払方法をどうするか、これらを担保する手段が講じられているか
□著作権表示をどうするか
□キャラクターのイメージを損なう行為を禁止する手段が講じられているか
□商標法・意匠法の規定を考慮する必要があるかどうか
□秘密保持についてどう規定するか
□その他(契約の解除、契約の変更、完全合意、紛争処理、準拠法など)


関連項目

>> キーワード:著作物の利用許諾(ライセンス供与)

>> 重要判例:漫画キャラクターの著作物性