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Article 91(録音権及び録画権)

1 実演家は、その実演を録音し、又は録画する権利を専有する。

2 
前項の規定は、同項に規定する権利を有する者の許諾を得て映画の著作物において録音され、又は録画された実演については、これを録音物(音を専ら影像とともに再生することを目的とするものを除く。)に録音する場合を除き、適用しない。 

最終内容確認日2010/07/05

解説 

 本条は、実演家(214)が、その実演を録音又は録画することに関して、一定の場合を除いて、「録音権」又は「録画権」という排他独占的権利を有することを規定したものです。
 
「録音権」・「録画権」は、実演家の財産的利益を保護するために創設された「著作隣接権」の1つです(891項・6)。

 実演家は、その実演(213)を録音し、又は録画する排他独占的権利を有します(1項)。
 
ここで、「録音」とは、「音を物に固定し、又はその固定物を増製すること」をいい(2113)、「録画」とは、「映像を連続して物に固定し、又はその固定物を増製すること」をいいます(2114)。つまり、「録音」・「録画」には、最初の録音・録画だけでなく、それを固定した物(録音物・録画物)を増製することを含みます。従って、例えば、歌手の歌を原盤レコードやオリジナルテープに吹き込む場合のほか、その吹き込まれたレコードやテープを増製する場合にも録音権が及ぶため、その増製に関しても当該歌手の許諾を得なければなりません。
 
なお、著作権法上「録音」・「録画」は「複製」に含まれる概念ですが(2115参照)、実演家には「複製権」という概括的な権利は認められておらず、従って、例えば自己の実演を「写真撮影」や「スケッチ」等によって有形的に再製する者に対して本権利を行使することはできません。もっとも、その写真やスケッチの利用の仕方によってはパブリシティ権や肖像権等の侵害問題が生じる余地はありますので注意してください。

 実演に関する録音権・録画権は、実演家が行った当該実演そのものを録音・録画することにのみ及び、当該実演と「類似」した実演(例えば、モノマネ)を録音・録画することに権利が及ぶことはありません

 実演に関する録音権・録画権は、当該権利を有する者から許諾を得て映画の著作物において録音・録画された実演については、原則として及ばないとされています(912項)。
 
こういうことです。ある実演家(例えば、歌手や俳優)が自己の実演を映画の著作物に録音・録画することを許諾した場合には、その許諾を受けた者が行う当該映画の著作物の増製については当該実演家の録音権・録画権は及ばず、従って、その増製についてあらためて当該実演家の許諾を得る必要はないということです。これは、映像に関する実演については、「映画の著作物への最初の固定(録音・録画)にのみ権利が及び、その後の利用については実演家の権利が及ばない」とする考え方(「ワンチャンス主義」)を採用したものです。ワンチャンス主義は、映画の著作物の製作には多くの実演家が関与していることから、その利用(録音、録画、放送、有線放送、送信可能化、譲渡)に関して画一的に処理し、後の映画の著作物の円滑な利用を確保しようとするものです。なお、ワンチャンス主義に関しては、ローマ条約19条(下記「関連条約」)を参照。
 
もっとも、例えば、その映画のサウンドトラックに固定されている音だけを取り出していわゆるサントラ盤レコード(CD)をつくる場合のように、その映画のなかの実演を、「音を専ら映像とともに再生することを目的とするもの」ではない録音物に録音する場合には本権利(録音権)が及び、あらためて実演家の許諾が必要になります。

 実演家には「放送権」と「有線放送権」が認められていますが(921)、実演家が自己の実演の(有線)放送について事業者に許諾を与えた場合でも、契約に別段の定めがない限り、当該実演の「録音」・「録画」の許諾まで与えたことにはなりません(103条準用634)。従って、一般的に、実演家がテレビ放送用の番組に「出演」を承諾したというだけでは、そのテレビ放送用の番組を固定物(ビデオテープやDVDなど)に「録音」・「録画」することまで許諾したことにはなりません。そのため、(有線)放送事業者がそのような固定物を作製し又は増製する場合には、あらためて実演家の許諾を得る必要があります。もっとも、実演の放送について実演家の許諾を得た放送事業者は、原則として、その実演を「放送のために」録音し又は録画することは可能です(931項本文)。

 放送について実演家の許諾を得た放送事業者が当該実演を適法に録音・録画できる場合として、いわゆる自己の放送のための技術的手段としての一時的固定(1021項準用441)の制度があります。


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関連条約 

◆ローマ条約71(b)(c)

Article 7
1. The protection provided for performers by this Convention shall include the possibility of preventing:
(a) -
(b) the fixation, without their consent, of their unfixed performance;
(c) the reproduction, without their consent, of a fixation of their performance:
 (i) if the original fixation itself was made without their consent;
 
(ii) if the reproduction is made for purposes different from those for which the performers gave their consent;
 
(iii) if the original fixation was made in accordance with the provisions of Article 15, and the reproduction is made for purposes different from those referred to in those provisions.

1. この条約によって実演家のために付与される保護は、次の利用行為を防止する可能性[実現性]を含むものでなければならない。
(a) -
(b) 実演家の同意を得ないで、その固定されていない実演を固定すること;
(c) 次に掲げる場合に、実演家の同意を得ないで、その実演の固定物を複製[増製]すること:
 
(i) 最初の固定自体が実演家の同意を得ないで行われた場合;
 
(ii) 実演家が同意を与えた目的とは異なる目的にために複製[増製]が行われる場合;
 
(iii) 最初の固定が第15条の規定に基づいて行われた場合において、同条に掲げる目的とは異なる目的のために複製[増製]が行われる場合。

◆ローマ条約19

Article 19
Notwithstanding anything in this Convention, once a performer has consented to the incorporation of his performance in a visual or audio–visual fixation, Article 7 shall have no further application.

この条約のいかなる規定にもかかわらず、実演家がひとたび自己の実演を視覚に係わる[映像の]固定物又は視聴覚に係わる[映像及び音声の]固定物に収録することに同意した場合には、第7条の規定は、それ以降適用されることはない。

◆TRIPS協定141

Article 14
1. In respect of a fixation of their performance on a phonogram, performers shall have the possibility of preventing the following acts when undertaken without their authorization: the fixation of their unfixed performance and the reproduction of such fixation. Performers shall also have the possibility of preventing the following acts when undertaken without their authorization: the broadcasting by wireless means and the communication to the public of their live performance.

1. レコードへの実演の固定に関し、実演家は、次の行為が実演家の許諾を得ないで行われる場合には、当該行為を防止することができるものとする:固定されていない実演を固定すること、及びそのような固定物を複製[増製]すること。実演家はまた、次の行為が実演家の許諾を得ないで行われる場合には、当該行為を防止することができるものとする:ライブの[現に行っている]実演を無線よって放送すること、及び当該実演を公衆に伝達すること。

◆WIPO実演及びレコード条約6条(固定されていない実演に関する実演家の経済的権利)

Article 6(Economic Rights of Performers in their Unfixed Performances)
Performers shall enjoy the exclusive right of authorizing, as regards their performances:
(i) the broadcasting and communication to the public of their unfixed performances except where the performance is already a broadcast performance; and
(ii) the fixation of their unfixed performances.

実演家は、自己の実演に関し、次の利用行為を許諾する排他独占的な権利を享受する。
(i) 固定されていない実演を放送し及び公衆に伝達すること(実演がすでに放送されたものである場合を除く。)、並びに
(ii) 固定されていない実演を固定すること。

◆WIPO実演及びレコード条約7条(複製権)

Article 7(Right of Reproduction)
Performers shall enjoy the exclusive right of authorizing the direct or indirect reproduction of their performances fixed in phonograms, in any manner or form.
Agreed statement concerning Articles 7, 11 and 16: The reproduction right, as set out in Articles 7 and 11, and the exceptions permitted thereunder through Article 16, fully apply in the digital environment, in particular to the use of performances and phonograms in digital form. It is understood that the storage of a protected performance or phonogram in digital form in an electronic medium constitutes a reproduction within the meaning of these Articles.

実演家は、レコードに固定された自己の実演に関し、いかなる態様又は形式であるかを問わず、直接に又は間接に当該実演を複製することを許諾する排他独占的権利を享受する。











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