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Article 112(差止請求権)
1 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物、侵害の行為によつて作成された物又は専ら侵害の行為に供された機械若しくは器具の廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置を請求することができる。 |
最終内容確認日2010/09/20
本条は、著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権による保護を実効性のあるのものにするために、これらの権利に対する救済措置として、「差止請求権」(侵害停止請求権又は侵害予防請求権)又はこれら(侵害の停止又は予防)に必要な措置を請求する権利を定めたものです。
ここで、「侵害停止請求権」とは、「(権利を)侵害する者」に対する「侵害の停止を請求する権利」を、「侵害予防請求権」とは、「(権利を)侵害するおそれがある者」に対する「侵害の予防を請求する権利」を意味します(1項参照)。
著作権等の侵害行為に対する対抗手段(民事上の救済措置)としては、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)が考えられますが、これは、過去の侵害行為に対する救済措置です。これに対し、本条による差止請求権は、現在及び将来における侵害行為から権利者を救済するための措置です。
「著作権法112条1項において,著作権者等は,その権利を『侵害する者や侵害するおそれのある者』に対して,『その侵害の停止又は予防を請求することができる』定められ,同規定は,著作権侵害が発覚した後の事後の損害賠償だけでは適切な法益の保護を図ることが困難であると認められる場合に限り,相手方が善意・無過失であっても,侵害の停止や予防を請求することができることを規定したものであり,さらに,同条1項のみでは著作権あるいは著作者人格権が保護されない場合があることにかんがみて,同条2項において,侵害行為の停止や予防を請求する際に,侵害の行為によって作成された物等の廃棄,その他侵害の停止・予防に必要な措置を講ずることができる旨定められているものである。」(「元総領事の写真無断放送事件」)
差止請求権の対象となる「侵害」行為には、法113条所定の「侵害とみなされる行為」を含みます。
侵害停止請求権は、著作権等を「侵害する者」に対し、その「侵害の停止」を請求できる権利です。
侵害行為が発生した時に直ちに発生し、当該侵害行為が止んだ時点で消滅します。すなわち、「現に侵害者の行為によって著作権が侵害されている」事実を要し、既に侵害行為が終了している場合には、もはや請求できなくなります。もっとも、現に侵害の事実があれば足り、侵害者の善意・悪意や故意・過失の有無はいずれも問いません。侵害行為者が善意・無過失であっても請求できます。
侵害予防請求権は、著作権等を「侵害するおそれがある者」に対し、その「侵害の予防」を請求できる権利です。
侵害行為が未だ存在していないが、過去における侵害行為の反復の度合い、侵害者の現在の態度、侵害の準備段階の程度などの諸要素から総合的に判断して、「近い将来において侵害行為が行われる可能性が客観的に高い」と認められる場合に、その予防を求めることを内容とする権利です。いわば、侵害行為を将来に向かって停止させる権利といえます。侵害のおそれが客観的に認められれば足り、侵害者の善意・悪意や故意・過失の有無はいずれも問いません。侵害行為者が善意・無過失であっても請求できます。
差止請求の相手方となる者(「侵害する者又は侵害するおそれがある者」)の侵害主体性について
「著作権法112条1項は,著作権者は,その著作権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し,その侵害の停止又は予防を請求することができる旨を規定する。同条は,著作権の行使を完全ならしめるために,権利の円満な支配状態が現に侵害され,あるいは侵害されようとする場合において,侵害者に対し侵害の停止又は予防に必要な一定の行為を請求し得ることを定めたものであって,いわゆる物権的な権利である著作権について,物権的請求権に相当する権利を定めたものであるが,同条に規定する差止請求の相手方は,現に侵害行為を行う主体となっているか,あるいは侵害行為を主体として行うおそれのある者に限られると解するのが相当である。けだし,民法上,所有権に基づく妨害排除請求権は,現に権利侵害を生じさせている事実をその支配内に収めている者を相手方として行使し得るものと解されているものであり,このことからすれば,著作権に基づく差止請求権についても,現に侵害行為を行う主体となっているか,あるいは侵害行為を主体として行うおそれのある者のみを相手方として,行使し得るものと解すべきだからである。この点,同様に物権的な権利と解されている特許権,商標権等についても,権利侵害を教唆,幇助し,あるいはその手段を提供する行為に対して一般的に差止請求権を行使し得るものと解することができないことから,特許法,商標法等は,権利侵害を幇助する行為のうち,一定の類型の行為を限定して権利侵害とみなす行為と定めて,差止請求権の対象としているものである(特許法101条,商標法37条等参照)。著作権について,このような規定を要するまでもなく,権利侵害を教唆,幇助し,あるいはその手段を提供する行為に対して,一般的に差止請求権を行使し得るものと解することは,不法行為を理由とする差止請求が一般的に許されていないことと矛盾するだけでなく,差止請求の相手方が無制限に広がっていくおそれもあり,ひいては,自由な表現活動を脅かす結果を招きかねないものであって,到底,採用できないものである。」(「『2ちゃんねる』対談記事無断書き込み事件」)
「著作権法113条が,直接的に著作権等の侵害行為を構成するものではない幇助行為のうちの一定のものに限って著作権等侵害とみなすとしていることからしても,同条に該当しない著作権等侵害の幇助者にすぎない者の行為について,同法112条に基づく著作権等侵害による差止等請求を認めることは,明文で同法113条が規定されたことと整合せず,法的安定性を害するものであるから,直接的な著作権等の侵害行為や同条に該当する行為を行っておらず,これを行うおそれがあるとは認められない被控訴人らに対する差止等請求を認めることはできない。」(「違法二次的著作物図書館所蔵事件」)
侵害専用品に対する差止の可否が問題となった事例として、「集合住宅向けサーバー『選撮見録』テレビ番組送信可能化等事件」も参照。
著作権者等は、差止請求権(侵害停止請求権又は侵害予防請求権)を行使するに際し、「侵害の停止又は予防に必要な措置」をあわせて請求することができます(2項)。
「侵害の停止又は予防に必要な措置」とは、「侵害行為を組成した物」や「侵害行為によって作成された物」、「専ら侵害行為に供された機械・器具」といった物の「廃棄」その他の措置をいいます。
ここで、「侵害行為を組成した物」とは、ある物の利用行為が著作権等の侵害を構成する場合の当該物をいい、例えば、無断で頒布された映画フィルム、無断で展示されたイラスト、無断で作成され輸入された海賊版などが該当します。
「侵害行為によって作成された物」とは、著作権等を侵害することによって作成された著作物等の複製物をいいます。例えば、無断で作成された小説の複製物、実演家・レコード製作者に無断で作成された音楽CDの増製物などが該当します。
「専ら侵害行為に供された機械・器具」とは、その使用が、主として、著作権等を侵害する物の作成又は著作権等を侵害する手段としての使用に供された機械類・器具類をいい、例えば、無断複製を行うために常時使用されていた型(金型、型紙、版木等)や印刷機械、無断演奏に継続的に使用されていたカラオケ機器などがこれに該当します。
「侵害の停止又は予防に必要な措置」としては、以上のような物の「廃棄」の他に、例えば、担保の提供や機械・器具の使用禁止などが考えられます。具体的にいかなる「措置」が必要となるかは、侵害の態様や程度等の諸事情が総合的に勘案されたうえで裁判所がケースバイケースで判断することになります。
なお、廃棄等の請求は、差止請求(1項)と同時にしなければならない(廃棄等の請求のみを単独で請求することはできない)とするのが通説です。
差止請求権(侵害組成物の廃棄請求等を含む。)を行使することができる者は、原則として、現に著作権等が侵害されているか、又は侵害されるおそれがある当該著作権等の著作権者等自身です(1項・2項)。
一方、共同著作物の著作者人格権・著作権侵害の場合、共有に係る著作権侵害の場合、共有に係る著作隣接権侵害の場合には、各権利者が、他の者の同意を得ないで、各自単独で差止請求をすることができます(117条1項・2項)。
なお、「無名著作物」又は「変名著作物」の侵害の場合には、著作者又は著作権者が実名を明らかにすることなく自己の権利の保全を容易にするため、当該著作物の発行者が、当該著作者又は著作権者のために、自己の名をもって、差止請求権を行使することができます(118条1項本文)。ただし、著作者の変名がその者のものとして周知のものである場合、及び実名の登録(75条1項)があつた場合は、この限りではありません(同項但書)。
著作権に基づく侵害差止請求権の代位行使の可否
「ところで,著作権者から著作物の独占的使用許諾を得ている使用権者については,著作権者に代位して当該著作物の著作権に基づく侵害差止請求権を行使することができるという見解が存在する。これは,特許権における独占的通常実施権者が特許権者に代位して特許権に基づく侵害差止請求権を行使することができるとの見解にならって提唱されているものと解されるが,著作物の独占的使用許諾を得ている使用権者であれば,特許権における独占的通常実施権者と同様に,当該著作物の模倣品の販売等の侵害行為により直接自己の営業上の利益を害されることから,独占的使用権に基づく自らの利益を守るために,著作権者に代位して侵害者に対して著作権に基づく差止請求権を行使することを認める余地がないとはいえない。」(「フィンランド‘トントゥ’人形ぬいぐるみ事件」)
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◆ベルヌ条約5条(2)
Article 5
(2) The enjoyment and the exercise of these rights
shall not be subject to any formality; such enjoyment and such exercise shall
be independent of the existence of protection in the country of origin of the
work. Consequently, apart from the provisions of this Convention, the extent of
protection, as well as the means of redress afforded to the author to protect
his rights, shall be governed exclusively by the laws of the country where
protection is claimed.
(2) これらの((1)の)権利の享有及び行使には、いかなる方式(の履行)も条件とされない。かかる享有及び行使は、当該著作物の本国における保護の存在とは独立したものとする。それ故に、この条約に規定するものを除き、保護の範囲及び権利保護[保全]のために著作者に与えられる法的救済の手段については、専ら、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。
◆ベルヌ条約6条の2(3)
Article 6bis
(3) The means of redress for safeguarding the rights
granted by this Article shall be governed by the legislation of the country
where protection is claimed.
(3) 本条によって認められる権利を保護[保全]するための法的救済の手段については、保護が要求される同盟国の法令の定めるところによる。
◆ベルヌ条約16条(侵害複製品)
Article 16(Infringing Copies)
(1) Infringing copies of a work shall be
liable to seizure in any country of the Union where the work enjoys legal
protection.
(1) 著作物の侵害複製品は、当該著作物が法的保護を享受する同盟国において差し押さえられる。
(2) The provisions of the preceding paragraph
shall also apply to reproductions coming from a country where the work is not
protected, or has ceased to be protected.
(2) 前項の規定は、当該著作物が保護を受けない、あるいは保護を受けなくなった国から持ち込まれる[輸入される]複製物に対しても適用される。
(3) The seizure shall take place in
accordance with the legislation of each country.
(3) 差押えは、各同盟国の法令に従って行われるものとする。
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