著作権重要判例要旨[トップに戻る]







カラオケリース業者の注意義務
「カラオケ装置リース業者事件(ビデオメイツ事件)」
平成130302日最高裁判所第二小法廷判決平成12()222 

 被上告人(管理人注:業務用カラオケ装置のリース及び販売業務を行っている有限会社)は,Dとの間で,Eについて平成3930日,Fについて同年1227日,それぞれカラオケ装置のリース契約を締結し(以下「本件リース契約」という。),同人にレーザーディスク用カラオケ装置各一式を引き渡した。本件リース契約に係る書面には,「本物件を営業目的で使用する場合には,借主は上告人から著作物使用許諾契約を締結するよう求められます。当該契約の締結については,借主の責任で対処するようにして下さい。」との記載があり,被上告人は,本件リース契約締結時に,Dに対し,口頭でもその旨説明したが,上記カラオケ装置の引渡しに際し,Dが著作物使用許諾契約の締結又は申込みをしたことを確認しなかったDらは,本件各店舗において,本件各リース契約締結の日から平成768日まで,上告人の許諾を受けることなく,被上告人からリースを受けた上記カラオケ装置を操作してレーザーディスクを再生することにより,本件管理著作物である歌詞及び楽曲を上映し,客や従業員に歌唱させ,もって店の雰囲気作りをして営業上の利益の増大を図った。
 
被上告人は,平成769日以降,Dが上告人申立てに係るカラオケ装置の使用禁止等の仮処分命令の執行を受けたことを知り,初めてDらが上告人と著作物使用許諾契約を締結していなかったことを認識するに至った。しかし,Dが責任を持って解決し被上告人には迷惑を掛けない旨誓約したため,同年99日,新たに同人との間で,本件各店舗につき,それぞれカラオケ装置のリース契約を締結し,同人に通信カラオケ用カラオケ装置各一式を引き渡したDらは,Eにおいて平成81220日まで,Fにおいて平成71020日まで,上告人の許諾を受けることなく,被上告人からリースを受けた上記カラオケ装置を操作して,本件管理著作物である楽曲を再生し,客や従業員に歌唱させ,もって店の雰囲気作りをして営業上の利益の増大を図った。
 
(略)
 
本件は,上告人が,被上告人の行為はDらの著作権侵害行為と共同不法行為を構成すると主張して,被上告人に対し,使用料相当損害金の賠償を請求した事案である。
 
原審は,平成79月以降の期間における被上告人の過失を認めて上告人の損害賠償請求を認容したが,次のとおり判示して,同年68日までの期間における被上告人の過失を否定した。
 
カラオケ装置のリース業者は,カラオケ装置が著作権侵害の道具として使用されないよう配慮すべき一般的な注意義務を負うが,リース契約締結時に契約の相手方に対し,口頭又は書面により,著作物使用許諾契約を締結すべき法的義務のある旨を指導すれば,通常の場合上記注意義務を果たしたものというべきである。そして,カラオケ装置のリース業者は,契約の相手方が著作物使用許諾契約を締結しない可能性が相当程度予見できるような場合や,リース契約締結後も著作物使用許諾契約を締結していない可能性を疑わせるような特段の事情がある場合には,上記契約締結を確認するまでカラオケ装置を引き渡さないようにし,引渡し後であればこれを引き揚げるなど,著作権侵害を生じさせない措置を講じなければならないが,一般的にリース契約の締結後カラオケ装置の引渡しに先立って,相手方が上告人に対し著作物使用許諾契約締結の申込みをしたことを確認すべき注意義務や,カラオケ装置を引き渡した後においても,随時上記契約締結の有無を確認すべき注意義務を負うものではない。
 
本件リース契約に係る書面には上告人と著作物使用許諾契約を締結するよう注意書きが記載され,被上告人はDにその旨口頭でも説明し,本件リース契約締結当時同人が著作物使用許諾契約を締結する意思のないことや,本件リース契約締結後も著作物使用許諾契約を締結していない可能性を疑わせるような特段の事情を認めるに足りないから,平成768日までの期間の注意義務違反はない。
 
しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 飲食店等の経営者が,音楽著作物である歌詞及び楽曲の上映機能を有するレーザーディスク用カラオケ装置又は音楽著作物である歌詞の上映及び楽曲の再生機能を有する通信カラオケ用カラオケ装置(以下「カラオケ装置」という。)を備え置き,客に歌唱を勧め,客の選択した曲目につきカラオケ装置により音楽著作物である歌詞及び楽曲を上映又は再生して,同楽曲を伴奏として客や従業員に歌唱させるなど,音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるためにカラオケ装置を使用し,もって店の雰囲気作りをし,客の来集を図って利益をあげることを意図しているときは,上記経営者は,当該音楽著作物の著作権者の許諾を得ない限り,客や従業員による歌唱,カラオケ装置による歌詞及び楽曲の上映又は再生につき演奏権ないし上映権侵害による不法行為責任を免れない(最高裁昭和6333月15日第三小法廷判決参照)。
 カラオケ装置のリース業者は,カラオケ装置のリース契約を締結した場合において,当該装置が専ら音楽著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるために使用されるものであるときは,リース契約の相手方に対し,当該音楽著作物の著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結すべきことを告知するだけでなく,上記相手方が当該著作権者との間で著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことを確認した上でカラオケ装置を引き渡すべき条理上の注意義務を負うものと解するのが相当である。けだし,(1)カラオケ装置により上映又は演奏される音楽著作物の大部分が著作権の対象であることに鑑みれば,カラオケ装置は,当該音楽著作物の著作権者の許諾がない限り一般的にカラオケ装置利用店の経営者による前記の著作権侵害を生じさせる蓋然性の高い装置ということができること,(2)著作権侵害は刑罰法規にも触れる犯罪行為であること(著作権法119条以下),(3)カラオケ装置のリース業者は,このように著作権侵害の蓋然性の高いカラオケ装置を賃貸に供することによって営業上の利益を得ているものであること,(4)一般にカラオケ装置利用店の経営者が著作物使用許諾契約を締結する率が必ずしも高くないことは公知の事実であって,カラオケ装置のリース業者としては,リース契約の相手方が著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたことが確認できない限り,著作権侵害が行われる蓋然性を予見すべきものであること,(5)カラオケ装置のリース業者は,著作物使用許諾契約を締結し又は申込みをしたか否かを容易に確認することができ,これによって著作権侵害回避のための措置を講ずることが可能であることを併せ考えれば,上記注意義務を肯定すべきだからである。
 これを本件についてみるに,Aが本件管理著作物を上映し又は演奏して公衆に直接見せ又は聞かせるためにカラオケ装置を使用するものであることは明らかであるから,被上告人は,本件リース契約に基づきカラオケ装置を引き渡すに際し,著作物使用許諾契約の締結又は申込みをしたことを確認する措置を講じてAらによる著作権侵害が行われることを未然に防止すべき注意義務を負っていたにもかかわらず,被上告人は,Aに対し,上告人との間で著作物使用許諾契約を締結するよう告知したのみで,著作物使用許諾契約の締結又は申込みをしたことを確認することなく,漫然と同人にカラオケ装置を引き渡したものであって,前記条理上の注意義務に違反したものである。それによりAらの著作権侵害が行なわれたものであるから,被上告人の上記注意義務の懈怠とAらの著作権侵害による上告人の損害との間には相当因果関係があるものといわざるを得ない。











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