著作権重要判例要旨[トップに戻る]







訓読文の二次的著作物性
「『将門記』訓読文事件」
昭和570308日東京地方裁判所(昭和51()8446 

【コメント】本件で引用されている「将門記」は、およそ10世紀中ごろに成立したと推定される、平将門の事績を和臭の変体漢文で記した作者不詳の戦記文学で、その原本の存在は明らかでなく、現在では、二種の写本が現存するといわれています。その一つは、真福寺が蔵する写本でいわゆる「真福寺本」と称せられるもの、他の一つは、いわゆる「片倉本」と称されるものです。 

 原告は、前記「真福寺本」を底本に「片倉本」を対校本として選定し、前記群書類従本以下の抄本を参考本とし、従前発表されている諸学者の校本を参照して校合作業を行いこれにより確定した校合文を読み下して、本件訓読文を完成させた。…
 右のように和臭の変体漢文を訓読するについては、原典が成立した年代、その時代の用語、文法、当時の政治的、経済的、社会的背景、原著作者の地位身分、写本成立の年次、その伝来の系統、写本作成者の学殖等原典の文意を解釈するについての諸条件を考究し、この研究の結果から訓読者が解釈した原典の文意を、あるいは原典の成立した時代の読み方に近付けて書き表わし、あるいは現代人に理解できる文章に書き改めることが必要であるが、この作業の各々について、訓読者各自の諸般にわたる学識、文章理解力、表現力の差異等により、訓読者各自の個性の表現ともいうべき異なつた結果が生じるものであり、本件訓読文は、これに先立つて公表されている「将門記」についての他の訓読文と比較すれば、幾多の点で相違し、原告の学識経験に基づく独自の訓読文として完成されている
 以上の事実が認められ、これを覆えすに足る証拠はない。
 
右認定の事実によれば、本件訓読文は、「真福寺本」による「将門記」を原著作物とし、その内面形式を維持しつつ、原告の創意に基づきこれに新たな具体的表現を与えたものであつて、著作権法第2条第1項第11号の規定にいう著作物を翻案することにより創作した著作物に該当すると解して何の差支えもない。











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