著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作者の「推定」を覆した事例
「ジョン万次郎銅像事件」
平成180227日知的財産高等裁判所(平成17()10100等) 

 著作物とは,「思想又は感情を創作的に表現したものであって,文芸,学術,美術又は音楽の範囲に属するもの」をいい(著作権法211号),著作者とは,「著作物を創作する者をいう」のであるから(同項2号),美術品である本件各銅像については,本件各銅像を創作した者をその著作者と認めるべきである。そして本件各銅像のようなブロンズ像は,塑像の作成,石膏取り,鋳造という3つの工程を経て制作されるものであるが,その表現が確定するのは塑像の段階であるから,塑像を制作した者,すなわち,塑像における創作的表現を行った者が当該銅像の著作者というべきである。そこで,以上の見解に立って,以下の検討を進める。
 [制作への複数の関与者が存在する場合と著作権法14条との関係]
 一審被告は,創作的表現を行ったと主張するものが複数関与する場合であって,その一方当事者につき著作権法14条による推定が働いている場合にあっては,推定を受けない他方当事者が自らの単独著作を主張するためには,双方とも著作者である可能性がある以上,当該著作物が自らの著作物であることを主張・立証することに加え,当該著作物が推定を受けている者の著作物ではないことまでを主張・立証する必要がある,と主張する。
 著作権法14条は,「著作物の原作品に,又は著作物の公衆への提供若しくは提示の際に,その氏名若しくは名称(以下「実名」という。)又はその雅号,筆名,略称その他実名に代えて用いられるもの(以下「変名」という。)として周知のものが著作者名として通常の方法により表示されている者は,その著作物の著作者と推定する。」と規定しているところ,ジョン万次郎像においては一審被告の通称である「X」と,P像においては「X」と,それぞれ記入されているから,一審被告は,上記規定により,本件各銅像の著作者であるとの推定を受けることになる。
 ところで,上記規定は,著作者として権利行使しようとする者の立証の負担を軽減するため,自らが創作したことの立証に代えて,著作物に実名等の表示があれば著作者と推定するというものであるが,同規定の文言からして「推定する」というものにすぎず,推定の効果を争う者が反対事実の証明に成功すれば,推定とは逆の認定をして差し支えないことになる。この理は,創作的表現を行ったと主張するものが複数関与する場合であっても異なるところはないというべきであって,一審被告の上記主張は,独自の見解というほかなく,採用することができない。
 そして,原裁判及び後に述べる説示のとおり,原審及び当審における各証拠を精査すれば,本件各銅像の塑像制作について創作的表現を行なった者は一審原告のみであって,一審被告は塑像の制作工程において一審原告の助手として準備をしたり粘土付け等に関与しただけであると認めることができるのであるから,一審原告はいわば反対事実の証明に成功したのであった,同規定にかかわらず,一審被告に対し自らが著作者であることを主張できることになる。











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