著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作者人格権侵害と著作権侵害との関係(4)
「インド人参薬理学的研究論文事件」
平成161104日大阪地方裁判所(平成15()6252/平成170428日大阪高等裁判所(平成16()3684 

【コメント】本件は、原告が、被告外数名がその名義で発表した論文が、原告が作成した論文に依拠するものでありながら、執筆者として原告の氏名が表示されておらず、また、論文中で原告が作成した論文の成果を前提としたものであることも指摘しなかったと主張し、このような論文を発表したことが、著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)の侵害にあたるとして、損害の賠償等を請求した事案です。 

【原審】

 著作者人格権侵害か否かを判断するに当たっての原被告論文の比較方法
 前記のとおり、著作権法によって保護されるのは、思想又は感情の創作的な表現であり、思想でもアイデアでも事実でもない。したがって、学術研究における実験の結果やそこから得られた知見といった、学術研究の成果そのものは、著作権法による保護の対象とはならないものである(勿論、学術研究の成果を他者が盗用し、自らのものとして発表するような行為は、それ自体、一般の不法行為となり得る場合もあるであろうけれども、著作権法が保護するのは表現自体であるから、表現そのものを盗用しない限り、著作権法上の権利を侵害するものとはならない。)。
 したがって、被告が被告論文を作成し、発表したことが、原告論文についての原告の著作者人格権としての氏名表示権及び同一性保持権を侵害したものであるか否かを判断するためには、原告論文と被告論文の表現を比較すべきものであって、そこに記載されている研究の過程や成果についての内容を比較すべきものではない
 (略)
 以上のとおりであるから、被告論文が原告論文を複製しているとも、翻案しているとも認めることはできない
 したがって、被告による、原告論文についての原告の著作者人格権侵害はこれを認めることができない

【控訴審】

 そうすると,被告論文に,原告論文に記載されているのと同一の自然科学上の知見が記載されているとしても,自然科学上の知見は表現それ自体ではないから,このことをもって直ちに被告論文が原告論文の複製又は翻案であるとはいえず,原告の著作者人格権が侵害されたということもできない。被告が被告論文を作成し,発表したことが,原告論文についての原告の著作者人格権としての氏名表示権ないし同一性保持権を侵害したものであるか否かを判断するためには,原告論文の表現と被告論文の表現とを対比するのが相当であって,両論文に記載されている自然科学上の知見,すなわち研究の過程や成果についての内容を対比すべきものではない
 原告論文及び被告論文は,いずれも英文の論文であり,対比すべきは上記のとおり両論文の記載内容ではなく表現それ自体であるから,その対比は,原文である英文同士で行うのが相当である。
 これに対し,原告は,実験分野の論文では,何よりもその表現によって裏付けられている論理の過程そのものがより重要な要素であるから,表現上の相違があるからといって著作者人格権を侵害していないとはいえないなどと主張するが,上記主張は前記説示に照らして採用することができない。











相談してみる

ホームに戻る