著作権重要判例要旨[トップに戻る]







「公衆送信」の意義
集合住宅向けサーバー『選撮見録』テレビ番組送信可能化等事件」平成190614日大阪高等裁判所(平成17()3258等) 

【コメント】本件は、テレビ放送事業者である被控訴人らが、控訴人が販売する商品(「控訴人商品」=「選撮見録」)が、被控訴人らがテレビ番組の著作者として有する著作権(複製権、公衆送信権、送信可能化権)及び被控訴人らが放送事業者として有する著作隣接権(複製権、送信可能化権)の侵害に専ら用いられるものであり、その販売等により上記各権利を侵害され、又は侵害されるおそれがあると主張して、控訴人に対し、その商品の販売の差止め等を請求した事案の控訴審です。

 本件で問題となった「控訴人商品」(「選撮見録」)の主要な構成は、概ね次のとおりです。

控訴人商品は、集合住宅向けハードディスクビデオレコーダーシステムとして、テレビ放送受信用チューナーと放送番組録画用ハードディスクを備えたサーバー並びに各利用者用のビューワー及びこれを操作するコントローラーからなる
サーバーは、集合住宅の共用部分(管理人室等)に設置されて多数のビューワーに接続され、また、チューナー部がテレビ放送受信用アンテナに接続される構造となっている。各使用者用のビューワー及びそのコントローラーは、集合住宅の居室に各戸1台ずつ設置され、各ビューワーとサーバーとの間が有線回線で電気的に接続される。また,ビューワーにはテレビ受像機が接続されることを予定している。
放送番組の録画は、ビューワーからの録画予約指示によって自動的にされる。録画予約モードには、「個別予約モード」と「全局予約モード」があり、各ビューワー毎に設定することができる。「個別予約モード」においては、各利用者において、ビューワーを用いて、録画すべき番組を個別に予約することとなるが、「全局予約モード」に設定された場合は、1週間分5局分の番組すべてを録画するようなっている。ただし、サーバーに接続された複数のビューワーから、同一の番組について複数の録画予約(「全局予約モード」の設定による予約も含む。)がされていても、1つの放送番組は、1サーバーにおいては、1か所にしか録画されない(したがって、1つの放送番組についての音及び影像の情報は、1サーバーにおいて1つしか記録されない。)。
録画された放送番組の再生は、ビューワーからの再生指示によって自動的にされる。 


 前記のとおり,控訴人商品は,個々の利用者が「全局予約モード」に設定しているか「個別予約モード」に設定しているかに関係なく,サーバー毎に,これに接続されたビューワーのいずれかから録画予約された番組(「全局予約モード」に設定しているビューワーがある場合は全番組)について,そのサーバーのハードディスク上の1か所にのみその音及び影像の信号が記録され,録画の起因となった予約をしているビューワーに限らず,当該番組の予約(全局予約を含む。)をしたビューワーから,録画より1週間の保存期間内に番組再生の要求があった場合には,自動的に,録画した番組の音及び影像の情報を再生要求のあった当該ビューワーにのみ送信するものである。そして,控訴人商品は,サーバーとビューワーが有線回線によって電気的に接続され,サーバーは集合住宅の共用部分に,ビューワーは個々の居室に設置されている。
 まず,公衆送信権(法217号の223条)について検討する。
 控訴人商品においては,入居者の番組再生の要求に基づき,録画した番組の音及び影像の情報信号が有線回線を介して当該ビューワーに送信されるのであるから,受信者によって直接受信されることを目的として有線電気通信の送信が行われるものであることは明らかである。
 (略)
 また,控訴人は,控訴人商品が設置される集合住宅の共用部分は入居者の共有に属し,各入居者は共用部分を「占有」しているから,当該共用部分に設置されたサーバーから各居宅のビューワーへの情報の伝達は「同一の者の占有に属する区域内」での伝達にすぎず,「公衆送信」に該当しない旨主張するが,上記共同占有部分と上記単独占有部分とで一部重複があることにすぎず,上記両占有部分が法217号の2所定の同一の者の占有に属するとはいえないから,その送信は「その構内が二以上の者の占有に属している場合における同一の者の占有に属する区域内」での送信には該当しないと解され,上記控訴人の主張は採用できない。
 (略)
 ところで,信号の受信者,すなわち各居室の入居者をもって「公衆」といえるか否かの点について,控訴人は,あらかじめ録画予約の指示をしたビューワーの利用者のみが番組の送信の要求をして番組を受信することができるのであるから,送信を要求し,これを受信する者をもって「公衆」ということはできない,控訴人商品では1サーバーに接続されるビューワー数は50個程度を上限としているから,その数に照らして使用者を「公衆」ということはできない旨主張している。
 しかしながら,前記のとおり,控訴人商品においては,番組の録画は,録画予約をしたビューワーの数にかかわらず,サーバーのハードディスク上の1か所にのみ1組のみの音及び影像の情報が記録され,あらかじめ録画予約の指示をしたビューワーすべてに対し,その要求に応じて,記録された単一の信号として送信されるものであるから,人数の点を別とすれば,控訴人商品の使用者は,「公衆」であることを妨げる要素を含んでいるものではない
 そして,控訴人商品においては,ビューワーは,集合住宅の各戸に設置されることが予定されているから,1サーバーに接続されるビューワー数は,設置場所によって異なるとしても,集合住宅向けに販売される以上,少なくとも前記認定の24戸以上の入居者が使用者となることに照らせば,控訴人商品の利用者の数は,公衆送信の定義に関して「公衆」といい得る程度に多数であるというべきである(ちなみに,控訴人商品を利用すれば,一つの集合住宅内であっても,サーバーを増設することにより大人数の使用が可能となる。)。
 以上によれば,控訴人商品においては,法217号の2にいう「公衆送信」が行われるものである。











相談してみる

ホームに戻る