著作権重要判例要旨[トップに戻る]







パブリックドメインにある錦絵にパブリシティ権は認められるか
「錦絵『東京開化』事件」
平成160928日大阪地方裁判所(平成16()6772 

 原告は、原告所蔵の「東京開化」のパブリシティ権が侵害された旨主張する。
 
…によれば、原告所蔵の「東京開化」は明治7年の作品であり、また、現行著作権法の下では美術の著作物(著作権法1014号)に該当し得るものであることが認められる。
 それ自体有体物であるが、同時に無体物でもある美術の著作物の原作品については、その所有者は、有体物の面に対する排他的支配権能を有するにとどまり、無体物である美術の著作物自体を直接排他的に支配する権能はないから、第三者が有体物としての面に対する所有者の排他的支配権能を侵すことなく、顧客吸引力など無体物としての面における経済的価値を利用したとしても、その利用行為は所有権を侵害するものではないと解すべきである(最高裁昭和59120日第二小法廷判決参照)。
 
また、美術の著作物において、顧客吸引力など、物の無体物としての面における経済的価値については、著作権法が一定の範囲の者に対し、一定の要件の下に排他的な使用権を付与し、その権利の保護を図っているが、その反面として、その使用権の付与が国民の経済活動や文化的活動の自由を過度に制約することのないようにするため、当該権利の発生原因、内容、範囲、消滅原因等を定め、その排他的な使用権の及ぶ範囲、限界を明確にしているところである(最高裁平成16213日第二小法廷判決参照)。そして、保護期間満了後等著作権法による保護を受け得ない美術の著作物については、公有に帰したものとして、自由にこれを利用し得るものと解されている。
 
以上のような所有権の排他的支配権能の及ぶ範囲及び著作権法の趣旨、目的に鑑みれば、原告所蔵の「東京開化」が顧客吸引力を有しているとしても、有体物としての面に対する所有権者の排他的支配権能が侵害されることなく、また著作権が消滅した後にまで、所有権者であるにすぎない原告に、法令上の根拠のない排他的使用権を認めることはできず、また、そのような解釈は国民の経済活動や文化的活動の自由を過度に制約することとなりかねない
 
したがって、本件においてパブリシティ権の存在を肯定することができないから、原告の主張は失当である。
 なるほど、保護期間満了後の美術の著作物であっても、原作品の所有者に対価を支払って原作品の利用の許諾を求める例は幾多もあり、また原告のように、利用に関する特約として再利用の場合でもその都度更に対価を徴収する例があることは十分考えられるところ、原作品を複製したものを更に複製等した行為に対して対価を徴収できないとすれば、原作品の所有権者はそれだけ原作品によって収益を上げる機会を奪われ、経済上の不利益を被るということはできよう。
 
しかし、これは第三者が著作物を自由に利用することができることによる事実上の結果にすぎないから、第三者が正当な権限なく利得したということはできない。原作品の所有権者が、著作権保護期間内は著作権等に基づき複製等を許諾する権利を有し、原告の主張するように同期間経過後は所有権者がパブリシティ権に基づき同権利を有するとするならば、著作権法が著作物の保護期間を定めた意義は全く没却されることになる。











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