著作権重要判例要旨[トップに戻る]







パチンコゲームソフトの侵害性が問題となった事例
「パチンコゲームソフト制作二重契約事件」
平成140725日東京地方裁判所(平成11()18934 

 実践パチンココンストラクションによる必殺パチンココンストラクションの著作権侵害の成否について
 
サン電子とジー・エー・エムの間の本件契約@の契約書には,第1条において,「甲は乙に対し,本商品のプログラム,グラフィック及びサウンドの作成に関し,業務を乙に委託する。」(なお,甲はサン電子を,乙はジー・エー・エムをそれぞれ指す。以下同じ。)とされ,第2条において,「本商品の本委託業務から生じるすべての著作権は甲が有する。」(同条2項),「本商品の販売権,製造権,工業所有権及びその他の諸権利は甲が有する。」(同条3項)とされている。そして,第44項においては,「本委託業務にて発生する,ソースファイル,グラフィックデータ,サウンドデータ等は,甲の検収合格後1カ月以内に,甲の指定する媒体により,乙は甲に提出するものとする。」とされ,第54項においては,「本委託業務に対して,甲が開発,販売した『必殺パチンココレクション Windows95版』のソースファイル等を開発参考用として,乙に提供する。」とされている。
 
上記のような契約書の条項によれば,本件契約@によってサン電子に帰属するのは,新たな商品(必殺パチンココンストラクション)の作成業務によって生じた著作物についての権利である。本件においては,当該商品(必殺パチンココンストラクション)はコンピュータプログラムであって,既存のプログラムに新たな創作的要素を付与して作成されるものであるが,この場合,当該商品についての著作権の内容となるのは既存の著作物に新たに付与された部分に対応する範囲となるから,本件契約@によりサン電子に帰属するのも,当該範囲について生ずる著作権ということになる。本件では,前記「前提となる事実関係」に記載したとおり,ジー・エー・エムは,昭和60年ころ,必殺パチンココンストラクションと同様にユーザーが画面上の好きなところに釘等を配置して,自分でパチンコ台を自由に構成した上で実際のパチンコ台(実機)と同様に遊べるPC9800NEC)対応ゲームソフト「パチンココンストラクション」を開発していたものであるから,必殺パチンココンストラクションにおいて既存の著作物であるパチンココンストラクションにおいて既に用いられているのと共通する点があれば,その範囲については,サン電子との間の契約に基づく作成業務によって新たに付与された創作的要素に当たらず,当該範囲についての著作権がサン電子に移転することもない(この場合,パチンココンストラクションはPC9800NEC)対応ゲームであり,必殺パチンココンストラクションはWindows95対応ゲームソフトであるが,単にPC9800対応のプログラムを同一の内容のWindows95対応のプログラムに転換しただけでは,創作的要素が付加されたということはできない。したがって,本件契約@に基づいてサン電子に移転する著作権は,必殺パチンココンストラクションにおいて,対応OSの違いを超えて,従来のものとは異なる創作性のある画面上の動作・ 効果等を生み出している点に対応する部分に限られるというべきである。)。上記のとおり,本件契約@によりサン電子に移転する著作権が,必殺パチンココンストラクションの作成業務を通じて付与された新たな創作的要素に対応する範囲であって,それ以前から各当事者が既存の著作物について保有していた権利に及ぶものではないが,このことは,本件契約@においてジー・エー・エムに支払われる報酬額が590万円という比較的低額であることからも裏付けられるところである。
 
以上を前提に,実践パチンココンストラクションが,サン電子が必殺パチンココンストラクションについて有する著作権を侵害するものかどうかについて検討する。
 
サン電子は,サン電子が以前開発した必殺パチンココレクション2のソースプログラムを利用するよう指示した上で,同プログラムをジー・エー・エムに手渡したものであり,必殺パチンココレクション2においては,パチンコ実機であるCRモンスターハウスの製造者である訴外Fから許諾を受けて使用したCRモンスターハウスの盤面が画面上に表れるところ,実践パチンココンストラクションの画面に表示されているパチンコ台はこれに類似しており,その他の画面表示についても必殺パチンココンストラクションと実践パチンココンストラクションは類似していること,両者のフローチャートが類似していること,両者の実行ファイルには名称が一致するものがあることなどを挙げて,実践パチンココンストラクションは必殺パチンココンストラクションの著作権を侵害するものであると主張する。
 
サン電子の主張するところは,必ずしも明確ではないが,必殺パチンココンストラクションについての,画面上に表示される画像(美術の著作物)の著作権又はプログラムの著作物の著作権の侵害をいうものと理解することができる。
 
そこで,まず,画面上に表示される画像(美術の著作物)の著作権について検討する。
 
必殺パチンココンストラクションにおける画面上の表示と実践パチンココンストラクションにおける画面上の表示とを比較すると,双方とも,実機のパチンコ台を模した画像が表示されるが,前者(必殺パチンココンストラクション)においては,実機であるCRモンスターハウスの台を盤面の絵(模様)を含めて忠実に再現したものであるのに対して,後者(実践パチンココンストラクション)のパチンコ台の盤面の絵(模様)はこれと異なるものであり,パチンコ台の枠の部分にいくらかの類似性が認められるにすぎない。
 
そもそも,実機のパチンコ台が工業的に大量生産される実用品であることに照らせば,そのデザイン形態は盤面の絵(模様)の部分を含めて美術の著作物に属するものとはいえず,加えて,本件では,パチンコ台においてもっとも人目を引く部分である盤面の絵が異なるというのであるから,両者が類似するものと評価することもできない
 
また,サン電子は,パチンコ台盤面が表示された画面の右側枠内において,絵飾りを伴って長方形枠内に表示された「OPEN」の文字や,周囲に絵飾りを配した楕円形枠内に表示された「START」の文字のデザイン,色調等がいずれも類似することのほか,上記盤面右側枠内に,「台盤面」,「風車」,「チューリップ」,「入賞口」,「液晶」,「始動口」,「大賞口」及び「釘」の文字表示が同じ配置で並んでおり,各機能ボタンの表示や配置が類似することを指摘する。しかしながら,ユーザー自らがパチンコ台を自由に構成した上でパチンコプレイをするというゲームソフトを作成する場合には,パチンコ台盤面のほか,上記の各機能のためのボタン等のアイコンを配置することが必要であるところ,画面の限られたスペースのなかにパチンコ台と共にこれらのアイコンを配置するためにはその位置を選択する余地は極めて小さいものとなるし,また,各機能のためのアイコンにしても機能を文字で表示することを含めてデザインの選択の余地は極めて小さい。このような点を考えると,サン電子が挙げる画面表示に著作物性を認めることはできないから,その主張するような類似性が存在したとしても著作権侵害が問題となるものではない。
 
また,サン電子は,必殺パチンココンストラクションにおいては,ゲーム起動画面からモード選択画面が表れ,画面に表示された「工房モード」,「プレイモード」及び「終了」の文字情報に従っていずれかのモードを選ぶものであり,「プレイモード」を選んだ場合には台を選択した上でパチンコプレイに入り,「工房モード」を選んだ場合には自分の好みの台を作成する画面に転換するという構成が採用されているのに対し,実践パチンココンストラクションにおいても,やはりゲーム起動画面からモード選択画面が表れ,画面に表示された「釘師」,「店舗巡り」及び「終了」の文字情報に従っていずれかのモードを選び,「店舗巡り」を選んだ場合には台を選択した上でパチンコプレイに入り,「釘師」を選んだ場合には,自分の好みの台を作成する画面に転換するという構成が採用されているという点を指摘する。しかしながら,起動画面に続いてモード選択画面が現れるという構成自体は,コンピュータゲーム一般に広く見られるものである上,自分の好みの位置に釘を配置するなどしてパチンコ台を構成した上でプレイするというゲーム構成を採る場合には,選択の対象となる画面の内容や画面が現れる順番等はある程度似たものとならざるを得ないものであるから,サン電子が挙げる画面の内容やそれが現れる順番等について著作物性を認めることはできない
 
上記のような点に照らせば,必殺パチンココンストラクションにおいて画面上に表示される画像やその順番については,著作権法による保護の対象となるものとは到底認められないというべきである。
 
そこで,次に,プログラム著作物の著作権について検討する。
 
必殺パチンココンストラクションにおける画面表示と実践パチンココンストラクションにおける画面表示との間には,上記に記載したとおり,ある程度の類似性は認められるものであるが,そのような画面を表示するためのプログラム上,必殺パチンココンストラクションにおいて従来のコンピュータソフトに見られないような独自の創作性が存在する旨の主張立証は何らされていないから,表示画面の類似性を理由として,プログラム著作物としての必殺パチンココンストラクションの著作権を実践パチンココンストラクションが侵害しているということはできない。また,サン電子は,必殺パチンココンストラクションと実践パチンココンストラクションとの間では同じファイル名のファイルが存在することを指摘した上で,同じ機能内容のファイルでもファイル名は任意に変えられるところ,それにもかかわらず,同じファイル名が存在するのは,実践パチンココンストラクションが必殺パチンココンストラクションα版のファイルを流用したことの証左であり,著作権侵害の事実が認められると主張する。しかしながら,実行ファイル名の一部が共通していることは依拠の点を推認させる事実ではあり得ても,そのことから直ちにプログラム著作権の侵害を認めることはできない。すなわち,共通する実行ファイルが存在したとしても,当該ファイルが従来のコンピュータソフトに使用されていなかったものであり,当該ファイルの組み合わせに従来のプログラムにない創作性が認められるのでなければ,プログラム著作権の侵害ということはできない。本件においては,必殺パチンココンストラクションα版及び実践パチンココンストラクションの各プログラムを制作したのは,同じジー・エー・エムの開発スタッフであるから,実行ファイル名に同じものがあっても,そのことから直ちに依拠性を認めることもできないところ,加えて,共通する名称のファイルの組み合わせが,ジー・エー・エムによる既存の同種ゲームソフトであるパチンココンストラクションにおいて用いられていなかった独自の創作性のあるプログラムであることの主張立証もされていないのであるから,サン電子の挙げる点をもって,プログラム著作権の侵害を認めることはできない。
 
上記のような点に照らせば,実践パチンココンストラクションが必殺パチンココンストラクションにおけるプログラム著作権を侵害するということもできない。
 
上記によれば,実践パチンココンストラクションが必殺パチンココンストラクションについてサン電子の有する著作権を侵害したということはできない。そうすると,本件通知書の記載のうち,「貴社が右商品の販売を行うと,著作権…侵害に当たると思われます。」との部分については,事実に反する虚偽の記載といわざるを得ない。そして,サン電子は,本件通知書を発送するに先立って,必殺パチンココンストラクションと実践パチンココンストラクションとの間の類似部分等について事実を認識していたものであるから,サン電子において著作権侵害の有無についての法的判断に誤りがあったとしても,少なくとも過失の存在が認められるというべきである。











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